第425話 魔王『ロビン』

 「ん、んーーーにゃ、よく寝た〜」


 今時間何時だろ?

 何だかんだこっちの世界ってゲームとか無いから冒険者の依頼こなしてない時とかやる事なくてすぐ寝ちゃうんだよね、んで、朝早く起きちゃうから……ってそうでもなかった。


 「10時か……」


 壁に掛かってる時計を見ると魔法の時計針は10時6分を指していた。

 単純に昨日21時に寝たとしたら13時間睡眠してることになるな!ヨシッ!


 「おはようございますですぞ我が君」


 「?…………って、ほんとに身体縛ってたんだ……」


 ベッドの上からだと見えない位置にムラサメさんは自分の手足を縛った状態でいた。

 なぜこうなったかと言うとムラサメさん曰く、紳士たる者、男女で同じ部屋で過ごすのなら絶対な安心を相手に与えるために手足を縛ると言うのだが……正直俺は男だからその理論に素直に首を縦に振れなかった。

 いや、身体は女だけど……まぁ、そんなこんなで「僕はどっちでもいいから好きにしててね」と例えるなら「自動販売機行くけど何かいる?」って聞いたら「なんでもいい」ってくらい卑怯な応え方して寝た。


 「当然ですぞ、ちなみにこれは自分では解けないので解いて欲しいのですぞ」


 「紳士だねぇ……えーっと、これがこうでこうやって……ほい」


 「ありがとうございますですぞ」


 ちなみに仮面で寝ていても魔法の力でそんなに窮屈じゃ無い、元の世界で例えるならマスクして寝ると息がしずらくなるがこの世界の仮面はそう言うのが全く無いのだ。

 

 「ところで、アイさんは呼びに来た?」


 「来てない様ですぞ、昨日、この部屋にはこっそりと侵入してくる愚か者が来たらすぐに解るようにあらゆる所に魔皮紙を貼っていたですぞが反応はなしですぞ」


 「ほぇー、じゃぁアイさんもそろそろ起きるのかな?」


 「可能性は低いかもしれないですぞな、アイという獣人は朝まであのキングという男と夜の営みをしていたですぞ、なのでまだ寝て間もないはずですぞ」


 「え?なんで解るの?」


 「この部屋も他の部屋も防音魔法がしっかりとしていたですぞが、この家の作り方はグリード王国の建物と似ていたのですぞ、ならばと思い盗聴魔皮紙を使ったら行けたってやつですぞ」


 「なるほど」


 アバレーの代表の騎士がそんなことして大丈夫か?って思うけどここは人間の法律は当てはまらないからセーフか?

 

 「と言うか、あの人妊娠してるって言ってたのにお盛んだね」


 「その事ですぞが、エス殿からの連絡で分かったことが一つあるのですぞ」


 「ん?」


 「どうやら、この村全体で行われてるみたいですぞ、一軒も残さず」


 それを聞くとやっぱり今回の魔族はサキュバスなんだなって納得する。

 

 「何かサキュバス族と関係がありそうだね」


 「ですぞ、私達は繁栄として見ているですぞが……」


 「繁栄……確かにそうだね」


 だけど片方の親がサキュバス族で片方が普通だとどうなるんだろ?

 今回で言うとキング偽物は確実にサキュバス族だ。

 しかし、話を聞く限りアイさんは普通にアバレーにいた獣人と思っている。

 そういや、なんでこの村に来たのか聞いてなかったな……今日くらいに上手く会話して聞き出そう。


 「しかし、ここで私達は疑問が出てきたのですぞ」


 「?」


 「繁栄するのは分かったですぞが、あまりに村が小さく、数も少なく感じるですぞ」


 「確かに……今までに比べたら何というか……拍子抜けするよね」


 今までの魔王の拠点、【スコーピオル】や【ライブラグス】に比べると1000分の1にも満たない人口だ。

 昨晩、料理を食べている時に他にも村があるか聞いたがどうやらここだけみたいだった。


 「ですぞ……仮にも今まで世界を牛耳っていた魔族、何かおかしいですぞ」


 「そうだね、それにサキュバスと言えば」


 「シッ……どうやら、来たようですぞ」


 ムラサメさんが口の前で人差し指をたて少しすると。


 「おはよう!よく眠れたか?ガッハッハ」


 キング偽物が元気よくノックもせずに入ってきた。

 

 「おはようございます、キングさん」


 「おう!今日は確か儀式に行くんだったな?まぁ説明するより行けば解る」


 「あれ?アイさんが連れて行ってくれるんじゃ……」


 「そのつもりだったが今回は……」


 キング偽物がそこまで言うと急に電池の抜けた人形のようになり……雰囲気が変わった。

 


 「!」


 「我が君!下がっていてくださいですぞ!」


 






 ムラサメさんは俺の前に立ちキング偽物に魔法陣を構える。

 キング偽物はそのまま口を開いたが







 「ようこそ【勇者】、私は魔王『ロビン』……邪魔者抜きで話をしましょう」







 外見はそのままだが、話してるのは別の人物だった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る