第407話 アオイの初パーティー

 「どうじゃったのじゃ?聞けることは聞けたのじゃ?」


 「いや、正直聞きたいことの9割聞けなかった」


 「む?」


 鏡の中の『俺』は'とある契約'をするとそのまま鏡が割れ話すことが出来なくなった。


 「元々これをさせるために僕と話させたんでしょ?ルカ」


 「なんのことやらなのじゃ、もう一人のお主はワシ達を動かしてるボスなのじゃ、ワシ達が知るはずもない」


 ルカと話すのにもう不快感はなく、仮面をとっても何も感じない......と言うことは。


 「どうやら僕は契約したみたい」


 某アニメの魔法少女に誘惑する猫みたいな生物に会った訳ではないけど契約したみたいだ。

 

 「そうか、なのじゃ......ちょっと待っとくのじゃ」


 ルカは魔皮紙を取り出して誰かと連絡をとりに俺の家に入っていった。

 




 契約内容は俺の記憶にない。

 そこだけ記憶が抜けているのだ......その理由も抜けている。

 

 「だけど、契約しないとヤバイことになることは覚えてる」


 脅しとかではなく、自分の本意からした契約なのは確信があった。

 そして......


 「契約したことで僕の【勇者】としての力が封印された」


 近くの片手サイズの石を拾い上げて思いっきり力を込めて投げるが石は5メートル程先で力なく落ちた。

 

 「かと言って普通の女の子よりも低い筋力しかないのは今後困るんだけどなぁ」


 重いもの持てないのは何かと不便だ......と言うかそこらへんの市販の剣とか重すぎて持てねぇ。


 「後はルカがこれからを説明してくれるみたいなんだけど」


 そう言うとちょうどルカが家から出てきた......あ、ドアの立て付け悪いから苦戦してる。


 「壊さないでねー」


 やっとドアを閉じた後ルカがキリッとした顔で来た。

 

 「ご、ごほん......では、非力なったお主をお世話するパーティーを紹介するのじゃ」


 「なるほど、確かにお世話されることになりそう」


 なんか鼻につく言い方だけどお兄さんちょっとワクワクしてるよ、今まで固定パーティー作らなかったのは俺の中の『俺』のせいで迷惑かけるかもしれないからで今回の人達は事情を俺より『俺』を知ってる人なので問題はないはず。


 「まずは......あやつか」


 ルカが声をかけると1つの影が奥から此方に歩いてきている。


 その少女は、夜なのに綺麗に光る腰まで伸ばされた白髪の髪を揺らしながら歩いてきて俺の前で止まり......その綺麗な髪が地面で汚れるのもお構い無しでまさかの膝をついて下を向いた!?なんだ!?イエスマイロードとか言い出しそうなんだけど!


 「ち、ちょっと!」


 「『みや』とぃいます。ぁなた様のお付きとして命を捧げます」


 うわ!まじで言っちゃったよ!えぇ......てか!今名前なんつった!?なんかどっかで見たことあると思ったらこの子まさか!

 

 「リュウト君のパーティーの!?」


 「っ!」


 「そうだよね?あの時、通信魔皮紙に少し写ってた」


 「私の事はぃじょうです......」


 何?触れちゃいけない系の過去だったかな?


 「こら、みや。アオイが聞いてるのじゃ、答えるのじゃ」


 「っ!!!」


 「あ、いやそんな無理しなくても」


 「ごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃ」


 「うえぇ!?」


 みやちゃんはかなり震えた声で俺の目の前で地面に頭をつける程土下座をして謝りだした......何したのこの子に!

 待て、落ち着け......こう言うときは! 


 「えーと、落ち着いて頭をあげて?いや、あげなさい」


 「は......ぃ」


 うわ、この子目に涙を浮かべてこっち見てる。


 「いつか話したいときに話してくれれば良いからね?ほら。たって?綺麗な髪が汚れちゃうよ」


 「ぁりがとうございます......」


 「うんうん、ルカ、あんまり恐がらせないでね」


 「いや、ワシじゃなくどちらかと言うとお主の......もう一人来たのじゃ」


 「え?」


 そういってルカの視線は俺の後ろ上に向いたと思ったら。




 ドーーーーーーーン




 と上から降ってきた。


 「え!?なにごと!?」


 俺が振り返り見ると......スーパーヒーロー着地姿をしている漆黒の鎧を纏いし者【リン】こと『エス』が居た!うわ!


 「エス!!!エスエスエスエス!久しぶり!」


 「......アオイ、ひさしぶ......!!」


 俺はたまらずエスを抱きしめた。

 

 「いやー!なつかしい!元気してた?少し背が伸びた?いつ以来だっけ?もうそんなこといいか!久しぶり!というかここにきたって事は!」


 「あ、あぁ、俺もお前を護る」


 「まじかよ!頼もし!」


 うわぁ、なんだろ!懐かしいいぃ、知ってる人いるし良かったぁ......と言うかエスも俺の事情知ってたのか、それだとあの時ミクラルに居たのも都合がつく。


 「アオイ、久しぶりの再開も良いがそろそろ離してやるのじゃ、もう一人がそろそろ到着するみたいなのじゃ」


 「え?うん」


 俺はエスを解放する......もうここまで戦力揃ってるのにまだいる?てかこの人達を超える人とか現れないだろ、出る順番ミスったんじゃない?もはや知らない人が来たら逆に誰?ってなって雰囲気が..................










 おいおいおいおいおい!まじかよ!




 




 



 「紹介するのじゃコイツは」


 「アバレー王国代表騎士のムラサメさん!?」


 ルカの隣にはいつの間にか冒険者の憧れである謎の仮面の騎士事、アバレー代表騎士の姿があった!うそだろおい!いやいやいやいやいやいやいやいや!

 

 「な、なんであなたが」


 「なぜ?おかしなことを言うですぞ!」


 「お、おかしなこと?」


 「ここに来てると言うことはもうお分かりですぞ?つまり!わたくしはあなた様に命......いや、魂すら......いや!身体も全て捧げてお護り致しますですぞ!」


 「ええええぁええええ!?」


 目の前の俺より実力も身分も上の人が前ほどのみやちゃんと同じように忠誠を誓うポーズをとった。

 嘘でしょおおおお!?


 「一体『僕』はどんだけネットワーク繋げてるんだ」


 「そして、ワシなのじゃ」


 ルカはそういうとみんなムラサメさんの横並び膝をついて忠誠を誓うポーズをした......うわぁ、何これ、何この状況。


 「ワシらは全員これからお主を護るために全力を尽くしますのじゃ」


 「は、はは......よろしくね......」


 苦笑いしかでない、一体『俺』はどんな教育してたんだ。

 何と言うか、「僕が死ねと言ったら死ぬの?」って聞いたら迷わず肯定されそうな雰囲気の人達だ......てかみやちゃんに至ってはまじでもう死にそうなくらい恐がられてるし。


 「とりあえずみんな頭をあげて立って?」


 軍隊のようにみんな言うことを聞く......うわ、やりずらい!なんかこう、俺はこういうの苦手なんだよな。


 例えるならめちゃくちゃ怒鳴り散らす上司と思われるより普通にみんなから慕われて飲み会誘われるような上司になりたい。


 「ごほん、えー......っと」


 みんなこっちを見てくる。










 「とりあえず、今度飲み会しよっか」







 

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