第405話 神の使者パーティー

 《クローバー村 キール家》


 「で?どうだった?キーくん」


 現在キールの小さな家のリビングにはキールの元パーティー3人と元魔王のアビ、そしてルダが集合しており、ぎゅうぎゅうになっていた。


 「ルコの言う通りだった、私は勇者の力との差を思い知らされたよ」


 その言葉を出すキールは少し悲しそうにしていたので、クロエが


 「けっ、まぁ大体あんだけ力持ってんのになんで俺達が導かなきゃいけねーんだまーじ殺してぇよな」


 と言ってクロエなりにキールを励ましている。


 アビは壁に寄りかかり手を組んで聞いていてルダは勝手にキールの棚から紅茶魔皮紙を取り出してつくっている。


 「まぁ解ってると思うけど魔王と戦うのは相性だからね、僕達は相性がいい魔王に影ながら導いてあげて勝てるようにするのが役目」


 「今回はルコの言う通りヒロユキ殿を導いていたらアオイさんも来たが、それも計画通りなのか?」


 「はは、流石キーくん良く気がついたね......本当のことを言うと僕に来た神からのお告げはヒロユキ君達の事だけでアオイちゃんが来るとは言ってなかったよ」


 「どういうことだルコ......」


 オリバルが静かにルコサに聞く。

 

 「前に話した通り今の【アオイ』は全く予想がつかないんだ、人間は産まれた瞬間から【神】の理に添って生きるんだけど、それを潜り抜けてくるんだ」


 「つまり、【アオイ』は......」


 「いや、断定はまだ出来ない、【アオイ』にはまだ神に匹敵する程の力がないからね、ま、それより......みんなも今回で解ったでしょ?【勇者】の力は遥かに上ってことを」

 

 ここに居る中でルダ以外は今まで強者側だった人間だ、それほどこの事実はみんなに重くのしかかる。


 だが、あえて'勇者に自分達は敵わないと言う事実を解らせる'事をルコサはみんなに証明する必要があった。


 何故ならルコサには解っていたのだ。

 みんな心の中で【勇者】に負けず劣らず力があると少し思っていることを。


 だが、今回はみんなと同じくらい力を持っているキールが魔王に対して手も足も出ていない事を【千里眼】を使ってみんな見ていた。

 もちろん、そのヒロユキが魔王に圧倒的力でねじ伏せる様も見ていたので判断する材料としては充分すぎるくらいだ。



 「これで、昔を思い出せるね」


 「「「?」」」


 「僕たちってさ、元々強くなかったでしょ?ずーっと四人で力を合わせて魔物を狩ってきた......そうでしょ?キーくん」


 「あぁ、そうだが」


 「その時に戻ってきただけだよ、僕達は中途半端に力を手に入れたから何でも一人で出来たんだ、だけどそれ以上の力を持った存在が来てから解らされた......じゃぁどうするか?」


 ルコサが魔皮紙から古いバッヂ取り出して机の上に転がす。


 「これは」


 「おいおいおいルコさん良くこんな古いもん持ってたな」


 「俺は持ってるけど......」


 そのバッヂを見てキール、クロエ、オリバルの3人はそれぞれ反応を示す......そのバッヂには左右に大きく翼を広げた燃え盛る鳥を、2本の黒剣で斜めにクロスさせているマークが刻まれている。


 「何さね?この安物バッヂは」


 何も知らないルダはそのバッヂを手にとって裏返したりして何かあるのかと思ってルコサに問う。


 「それは僕たちが若かった頃、当時の有名な最強パーティーが居て、「その座を奪ってやるくらいに強くなってやる」って意味を込めて作った僕達のパーティーシンボルだよ」  


 「なるほどさね、それでこのマークに釣り合わない感じで黒剣がクロスされてるのかさね」


 「ちなみに、このマークを考えたのは当時のクロエだよ、ねー」


 「はっ......昔の事だ思い出させんなよ、まぁ、結果的にその座を奪ったからいいだろ?」


 少し恥ずかしそうだがクロエはどこか懐かしみを感じながらルダの持ってるバッヂを見て目をそらす。


 「ルダ、返して?」


 「ほいさね、若いってのはいいもんさね、昔私も」


 「いや。おばあちゃんの昔話は今いいから」


 「何さね!年寄りの話は良く聞けって親に習わなかったのかさね!」


 「はいはいっと」


 ルコサは魔皮紙を取り出してそれにバッヂを包むと古かったバッヂは魔皮紙に溶け込んだ。

 それをルコサは自分の袖をめくり腕に魔皮紙を付け


 「僕達は今日、今、ここから、新たなパーティーとして生まれ変わる」


 魔力を流した。


 魔皮紙を取るとルコサの腕には十字になった黒剣のマークが刻まれていた。

 

 「これは新しい僕たちのパーティーシンボルだ、僕達は【神の使途】って事でこの世界を救うって言う意味も込めたんだけど、どうかな?みんな」


 「私はよいと思うぞ、ルコ」


 「ありがとキーくん」


 「まぁルコさんにしちゃ、考えたほうじゃん」


 「少なくともマークでイキってるクロよりまし......」


 「んだとオリバル!殺すぞ!」


 それぞれ何だかんだ言いながらもマークを付けていく。

 そして、四人全員付け終わった後、ルコサはルダに渡す。


 「私さね?」


 「あぁ、君も一員だ」


 「私は過去に冒険者になったことはないし、パーティーで戦うとかしたことないさね、それに......」


 ルダは普段見せないようなしおらしい態度を見せる。

 先ほどの話を聞いていて自分と言う異物が入るのが申し訳なくなっているのだ......だが、それを察して声をかけたのは意外にもクロエだった。


 「ごちゃごちゃ言わずに早く付けろよ」


 「!?」


 「あんだよ?」


 「ふ、ふん、どうなっても知らないさね」


 ルダは制服のスカートをまくし上げて太ももにマークを付ける。


 「フッ......」


 「オリバ!なんか言いてぇならいってみろ!殺すぞ!」


 「いや、良いものだなって......」


 「ちっ」


 「二人とも、まだ後一人、付けてない奴が居るよー」


 ルコサはルダから魔皮紙を受け取って未だに壁に寄りかかって何もしゃべらず手を組んで話だけを聞いていた【アビ】に話しかける。


 「ねー、てことでどう?元魔王様」


 「断る、貴様らには俺の民が人質に取られていて仕方なく協力してやってるだけだ」


 「あぁ、そう言うと思った......だから一応これを付けると色々お得になる様な【神】からの魔法がかかってるって言っとくよ」


 「なに?」


 「気になる?気になる?じゃぁ何個もある中の一つを教えてあげる、そうだなぁ......君に取って一番有力な情報としては今、封印されてるその魔眼の効果をタイミング次第では使えるようになる事かな?」


 「なんだと!?」


 時を止める魔眼の力......その力を使えると言うのはアビにとってかなりの誘惑材料だった。


 「てことで、これ、持っててね、気が向いたときに付けてくれれば良いよ」


 「......」


 アビはルコサから魔皮紙を受け取ってポケットに入れる。


 「どうも、ちなみに魔皮紙はマークが七個付けられると勝手に消滅するから後処理は完璧よ、さて、と......じゃぁ、みんな!」

















 「次に動く前に親睦を深めるため久しぶりにみんなで飲みにでも行こうか」
















 

 


 


 そして、物語は新たな章へ突入する。









 

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