第368話 再開喜び

 「もう来ないみたい?だね」


 「あぁ......」


 アオイは気絶している半魚人や糸で地面に縫い付けてた半魚人達を【糸』でヒロユキの様にぐるぐる巻きにした後、獣人化を解除し、それを見たリュウトもレイピアを腰にしまう。

 

 「......さて、と」


 「アオイさん?」


 アオイがウズウズしてたがもう感情が抑えられなくなり


 「生きてて良かったよぉ!リュウト君んんん!」


 「ちょ!あ!」


 アオイはリュウトを思いっきり抱きしめた。

 ちなみにアオイの着ているのはグリード城で初めてもらった【グリード王国特性最先端装備】でリュウトが着てるのは今回の人魚討伐の依頼を聞いた後グリード城で貰った赤い服で、アオイが着ている装備がバージョンアップされたものだ。

 ほ

 なのでアオイが抱き締めてもお互い生地質の装備なので怪我はしない。

 

 「生きてたぁ!リュウトくんんん」


 「っ......!」


 アオイがリュウトを抱きしめてるのをリュウトはすぐに止めずにアオイの胸を堪能する。

 端から見たら仮面を付けた金髪スタイル抜群美女が青少年を抱きしめて喜んでる絵面だが......忘れてはならない、アオイは男だ。


 しかし、アオイがこんなになるのには理由があった。

 

 「生きてた?って?」


 「うん!てっきり『山亀』の時死んだのかと!」


 「?、何を言ってるんだ?」


 「え?」


 そう、アオイがリュウト達全員を最後に見たのは山亀を討伐中、作戦が失敗して巨体が墜落した所。

 実際には【キール】の活躍によりみんな助かっていたのだがそれはこの場に居る二人とも知らなかった。


 「「え?」って......俺たちは山亀を討伐した後会ってるじゃないか」


 「山亀討伐の後に......なるほど」


 「なるほど?」


 真実を隠すと必ずどこかで綻びが発生する。


 だがアオイのこの記憶喪失には身に覚えがあり納得する。


 「(俺の中の【女神』が?でもどうして?......)」


 「良くわからないが、むしろこっちのセリフだ!やっと会えた!アオイさん!」


 「うん!改めて久しぶり!リュウト君」



 お互いに握手を交わし本題に入る。


 「ところでさっき言ってた「魔王はこの世界にまだ存在する」って?」


 「あぁ、俺もサクラ女王から聞いた話なんだがその様子だと本当みたいだな」

 

 「?」


 「アオイさん、魔王を倒しただろ?」


 「うん......まぁ」


 「実は、俺も、ヒロユキも魔王を倒してるんだ」


 「なるほど、そう言うこと」


 「思ったより驚かないんだな?」


 「ま、まぁ、なんとなく想像はついてたって奴かな?」


 「(俺からしたらリュウト君もヒロユキも死んでいると思っていたからそっちの方が驚きすぎてその後に出た真実は頭が処理できたというか......)」


 「そうか?俺は聞いたときびっくりしたけどな......それで俺達は次のステップに移動したんだ」


 「次のステップ?」


 「【魔王】を全て討伐する、それが俺達【勇者】に与えられた仕事だ」


 「............仕事と言うより」


 「あぁ、本来の俺達の存在意義だな」


 「うん、そうだね」


 「もっとゆっくり話をしたいところだけどそろそろアイツと話していいか?あっちもあっちでヒロユキがピンチかもしれない」


 そういってリュウトはヒロユキのほうを指差す。


 「うん、確かにそうだね」


 アオイが手を軽く振るとヒロユキの顔の部分だけ糸がほどける。


 「。ほう、あの数の相手を倒したか流石勇者だ」


 「その格好で偉そうなことを言っても笑えるだけだぞ」


 「。ふん......」


 「それで、その身体はどうやって手に入れた?」


 「。言うわけないだろ馬鹿か?」


 「まぁ、そうだろうなぁ......」


 リュウトが情報を聞き出す術がなく本当に困った顔をして考え込む。

 

 「(こいつの言う通り身体はヒロユキ本人のだと拷問をしたところでヒロユキの身体を傷付けるだけ......かといって情報を聞き出さないとこのままヒロユキのカラダは乗っ取られたまま......)」


 するとそれを見ていたアオイが動いた。


 「ここは任せて、リュウト君」


 「?、お、おう」


 「。あ?なんだ?」


 アオイはヒロユキの前まで行って見下ろすと仮面を取った。


 「。。。」


 仮面の下から出てくるこの世の『可愛さ』『美しさ』を全て備えた顔が出てくる。

 

 「リュウト君はこっち見ないでね?」


 「あ、あぁ」


 リュウトから見るとアオイの背中しか見えていないのだが一応リュウトも背中を向けて見ないようにした。





 そして、アオイは静かに問いかける。






 「ねぇ、君は僕の顔がどう見える?」


 「。お前の顔?」


 ヒロユキの身体を乗っ取っているヌルスはアオイの顔を見て............アオイがもっとも【怒る』言葉を言ってしまった。


 

 「。女の顔だ」


 その瞬間、アオイの心の【怒り』に反応するようにヌルスの周りの空気が冷たくなる。


 「。っ!」


 その感覚を感じてるのは【怒り』がぶつけられてるヌルスだけ。


 「(。な、なんだこれ!なんなんだよ!身体が......心臓が......いや【魂】が震える............恐い?この俺が?そんな馬鹿な!)」


 「そうだよね」


 「。?」


 「君から見たら【私』は女だよな」


 アオイはニコリと笑顔をヌルスに向ける。

 その笑顔はヌルスの魂をも釘付けにし、【怒り』を感じとりそして


 「。ひぃ!な、なんなんだ!お前は!(こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い)」


 ヌルスの感情はぐちゃぐちゃになっていった。


 【どうしたの?まだ何もしてないよ?何をそんなに......恐がってるのかな?』


 「。っっっっっ!!!!!」


 アオイはヌルスの頬を優しく触り魔法を唱えた。



 【魅了』



 

 

 「(こわい怖い怖い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い______________________________________________________________)」


 

 「【私』の質問に答えてくれるかな?」


 アオイのとろけるような声に従いヌルスはゆっくりと言葉を繋げる。


 「。あぁ......」


 


 「ありがとう、じゃぁ」




 ヌルスはアオイの質問に嘘偽りなく全て知っていることを話した。

 



 

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