第369話 魔物の最大の敵

 「......クルッポー」  


 「くぁ!くぁ!」  


 日も上がり森を照らす太陽が熱いお昼頃。  

 涼しい洞窟のなかにお昼ご飯のきのみを採ってきてピンクベルドリの前に置く。  


 「くぁぁ!」  


 ピンクベルドリはシャクシャクときのみを食べて腹を満たして黒ベルドリに身体を寄せてスリスリして感謝を現す。  


 「......クルッポー」  


 「くぁ!」  


 あれからピンクベルドリのユキ、黒ベルドリのヒロユキは魔物の生活になれて来ていた。    

 朝起きるとヒロユキが木の実や魔物の肉をとってきてユキに食べさせ。  

 ユキが夜寂しい時は察して無言でヒロユキが隣に寄り添ってやり。  

 魔物がユキに襲ってきたら華麗にその魔物を倒して護ったり。  

 雨の日でユキが寒さに震えてる時はどこからかボロボロの毛布を持ってきてかけてあげ風避けになる位置でユキを守ってあげたりした結果。  

 「くぁー!くぁ♪くぁー!」  


 「......クルッポー」  


 気が付くとユキはヒロユキにメロメロになっていた。  

 しかし、ついにこの日が来てしまったのだ。  

 「......クルッ」  


 「くぁ?」   


 ヒロユキが気配を察してユキを立たせて急いで洞窟の外の茂みに隠れる。

 

 「............」  


 「くぁ......」  


 茂みから隠れながら真っ直ぐと洞窟の入り口付近を見ているヒロユキを見てユキは少し不安になる。  

 ユキから見るとヒロユキが焦ってるようにみえたのだ......  




 待つこと五分。  


 「ここだっけな?ベルドリが居るって噂の巣は」  


 「そうみたいね?さっさと探しましょ」  


 洞窟の前に出てきたのは装備をした冒険者二人組だった、防具を見たところプラチナあがりたての冒険者だろう。  


 「(人です!やった!助けが来たです!)」  

 「......」  


 「くぁ!?」  


 二人を見た瞬間ユキが茂みから出ようとするのをヒロユキは押さえつける。  


 「......」   


 「(?、まだ出るなっていってるです?)」  

 ユキは静かに聞き耳をたてて茂みから様子を見ることにした。    


 「それにしても《平和条約》のおかげでアバレーの《ベルドリの唐揚げ》だっけ?あの料理が今じゃ世界的有名になってから依頼でベルドリの狩猟がおおくなったよな」  


 「そうね、まぁそれほど美味しいもの」  


 ヒロユキはその話を聞いて小さく鳴く......そう、ヒロユキが一番想定していた最悪の事態は......冒険者達がヒロユキ達を狩りに来る事だったのだ。  


 相手が魔物ならまだしも冒険者となると話は別だ。  


 もしもここでヒロユキが冒険者を殺してしまえばヒロユキ達は《危険な魔物》として依頼で処理されるようになりこれより強い冒険者が来ることになるだろう、そうなるとヒロユキ達に待ってるのは死だ。  


 「よし、じゃぁこの洞窟の中を少し探検するとするか!」  


 「いいわね、行きましょ」  


 冒険者二人がヒロユキ達が拠点にしていた洞窟の奥に入っていくのを見てゆっくりとヒロユキはユキに目で訴えて二匹はゆっくりと洞窟から離れていく。  



 逃げるしかないのだ。  



 普段、ベルドリを狩るのに冒険者の中ではコツとして「ベルドリに気付かれないように最初の攻撃をする」と言うのがある......これは野生のベルドリは警戒心が高く、身の危険を感じるとすぐに逃げてしまうからである。    


 「......クルッポー」  


 なので最新の注意を払いながらゆっくり洞窟から離れていく......


 「くぁ」  


 ヒロユキの真似をしながらユキはヒロユキについていく......しかし


 「くぁ!!!?!?」   


 「......!?」  


 ユキが地面に足をつけるとその地面の性質が変わりユキのベルドリの足は思いっきり食い込んでそのまま底なし沼に囚われるようにユキの身体の半分が埋まってしまった!    

 

 「くぁー!くぁー!」  


 必死にユキがもがくが抜けれない。  


 その正体は《落とし罠魔皮紙》......その魔皮紙を埋めたところを魔物が踏むと反応して即座に地面を魔法で柔らかくして魔物を飲み込み地面をまた固めるという冒険者なら誰もが持ってる罠だった。    


 「......クルッポー!」  


 ヒロユキはしまったと言う顔をしてなんとか足でユキの周りを急いで掘り出す。  


 この罠は獲物がかかったらそれを知らせる魔皮紙があるので先程の冒険者にはもう知らせが行ってるのだろう。  


 「くぁ!くぁ!」  


 「......クルッポークルッポー!」  


 ヒロユキは必死に土を掘っていくが......  

 「お!かかってるじゃん!」  


 「しかも二匹、夫婦かしらね?」  


 「......!」  


 「くぁ!?」  


 先程の冒険者が戻って来てしまった! 


 「..................クルッポー......」  


 「お?こいつベルドリの癖にあのピンクのベルドリを護ろうとしてるぞ?」    


 「むしろ本当にラッキーね、二匹ならちょうどこいつらで依頼は完了よ」  


 「んじゃ、さっさと終わらせるか!」  


 冒険者の一人は弓を構えて矢を放ち、゛避ける事をしなかった゛ヒロユキにまともに命中した。  


 「......!!!!!」  


 「くぁ!?」  


 「ベルドリの癖にタフだな、あんまり傷付けさせないでくれよ、値が落ちちまう」    


 「私も援護するわ【筋力増強】」  


 冒険者は再び弓を構えて強化された筋力で矢を放つ。  


 その弓は空気を切る音を出しながらヒロユキの身体にまた命中した。    


 「......ク、クルッポー......」  


 「こいつ!まだ立つか!」  


 冒険者は一瞬戸惑いを見せた......ベルドリは比較的簡単に狩れる魔物だ、それこそ【筋力増強】の魔法を使って放たれた矢は奥の奥まで突き刺さっているはず......矢が効かないのかと疑ったが、地面にはしっかりと矢を通って血がしたたり落ちているのを見てダメージは与えれていることを安堵した。  


 「くぁ!」  


 「............」  


 「直接頭を斬り落としてやる!援護を!」  

 「わかったわ」  


 冒険者は肉壁になってる黒ベルドリのヒロユキを剣を構えながら走り出した......その時!


 「あーちゃん!蹴り飛ばして!」


 「はいー!」


 剣を構えた冒険者の一人はものすごい早さで出てきた大きなアールラビッツに蹴り飛ばされ宙を舞った。

 

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