第360話 目が覚めたらまさかの
「(ん、んぅ......なにがあったです?
てんびん?というのに乗せられた後目の前が真っ白になって......)」
太陽の光に起こされてユキは目を覚ます。
ユキが目を開けると天井は先程のピラミッドではなくどこかの洞窟みたいだった。
「(あれ?起きれない......よいっしょっと!)」
ユキは身体をごろんとして何とか起きる、そして起きれなかった身体の違和感を確認しようと手を確認したら......
「くあーーーーーーーー!?」
「(えええええええええ!?)」
ユキの手はピンクの羽毛が生えた羽になっていた。
「くぁ!くぁー!くくくぁ!?(どうなってるです!?足も!?尻尾もあるです!?)」
全身を包むピンクの羽毛......そして特徴的な鳴き声。
そう、ユキは小柄なピンクの【ベルドリ】になっていたのだ。
「くぁー!くあーーーーー!」
ピンクのベルドリは鳴き声を出しながらあわてて外に出るが外は見晴らしのいい森の中だった。
「(これはきっと夢です夢です夢です夢です夢です夢です)」
そのまま森の中を走り続けるベルドリのユキ、だが最初から足に伝わる土の感覚や意識がハッキリしてるので本能的には夢でないと理解しているが夢であってほしいと願っている。
「くぁ......くぁ......」
気がつくと森の奥深くまでユキは来てしまっていて戻ろうかと振り向くが......道は無くなっていた。
「(ど、どうしてです!?)」
ユキは魔物の事を良く知らない、そこは【ウッドリーワンド】の縄張りだったのだ。
「(帰れないです......)」
冒険者なら゛そもそも森に道があるわけない ゛という事で道を作ってるウッドリーワンドの横から無理矢理真っ直ぐに帰れば抜けれるのだが。
この様に知識がない冒険者や魔物は道がある方に進んでしまうのだ。
「(で、でも道があるなら人間が作ったって事です......これを進めば誰かに会えるかもです)」
そしてユキの考えは最悪な方向の考えだった。
「くぁ、くぁー、くぁ」
「(辛いことは考えちゃだめ辛いことは考えちゃだめ辛いことは考えちゃだめ)」
ユキは必死に負の感情に蓋をして抑える。
「(こう言うときはおかぁさんの言ってた事おかぁさんの言ってた事......)」
そしてユキはアオイとの会話を思い出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おかぁさん」
「ん?どしたの?ユキちゃん」
「おかぁさんって何で時々独り言を言ってるの?」
「あちゃー聞かれてたか......あのねユキちゃん」
「?」
「言葉って言うのは声をだして相手に伝えるだけじゃなくて自分にも聞こえるでしょ?」
「うん!」
「それでね、うーん、例えば一人で辛い時とか周りに誰も話し相手がいないでしょ?」
「うんっ......」
「そう言うとき自分の声をだして自分を元気付けるんだ♪それだけで全然違うからね」
「じゃぁ」
「ん?」
「おかぁさんは時々辛いから独り言言ってるの?」
「うーん、まぁそうなるかな?」
「......えい」
「ん?どうしたのユキちゃんそんなに強く抱きしめて?」
「おかぁさんには......ユキがいる」
「!......そうだね、おかぁさんにはつよーいつよーいユキちゃんが居るね♪」
「えへへ、強いユキがいるの!だからおかぁさんは一人じゃないっ」
「うん♪ユキちゃんが居るからおかぁさん辛くないよっ」
「ふへへ♪」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「(......おかぁさん......)」
思い出すと少し逆効果になりそうだったがユキは頑張ってこらえた。
「(違うです!えと!辛いときは声です!)」
「くぁー!くぁー!くぁ!?くああああ!(あーあー!そうでした!?声が上手く出ないです!)」
ユキは鳴き声しかでないのを忘れていたが、自分の耳に聞こえてきた鳴き声で心が少し落ち着くのを感じた。
「くぁ、くぁー。(これが声の力、です)」
落ち着くのを感じると、ユキのおかぁさん......アオイが言っていたことが共感できた気になってユキは嬉しくなる。
「くぁ♪くあーくあー♪」
自分の鳴き声を聞きながらそのまま道を歩いていくと開けた場所に出た......そして
「くぁ!」
その中心に子供が大好きな《シクランボ》《ルンゴ》《エレンジ》が一斉に生えてる夢のような木が一本立っていた。
普通ならばあり得ないが
「(そう言えば何も食べてなかったです!美味しそうです!)」
何も知らないユキは無邪気に近付いていった......後ろの木達が檻のように変化して行くのを見ずに......
「くぁ♪くぁーくっ......くーーー!」
くちばしで《ルンゴ》を掴んで思いっきり引っ張るがなかなか取れない。
「くーーーーぁ!」
まだくちばしで引っかけるのになれてないユキは《ルンゴ》から、くちばしが外れそのまま後ろに思いっきりゴロゴロと転がっていった。
しかし、そのおかげでユキは死なずに済んだ......ユキの先程までいた場所に大きな「舌」が出てきていたのだ!
「キシャーーーー!」
「くぁ!?」
そして空ぶった獲物を捕らえようと地面からその全貌を露にした。
「(モ、モスンターです!?)」
ミクラルで長くいたユキは魔物をモンスターと呼ぶ。
そのモンスターの名は【オビキカメレン】全身は土と同化するため茶色く、全長は頭の先から尻尾までで13メートル、高さは足先から背中の木のてっぺんまでで5メートルだろう。
最大の特徴はその舌だ......自分の背中に生やした木に誘き出された魔物をカメレオンの様な舌で相手を絡めとり、鮫のような歯でなんでも生き物をバリバリと食べる。
「くぁ!くぁーーーー!」
ユキは逃げようとしたが遅かった......後ろはすでに木ででれなくなっていたのだ。
「キシャーーーー!」
「くぁ!」
ユキめがけて舌が追いかけてくるのをユキは走って間一髪避け【オビキカメレン】の周りをくるくる走り回る。
「(こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい!)」
しかし【オビキカメレン】は無慈悲にユキを捕らえようと舌で追いかける......
そしてその時は来てしまった。
「くぁ!?」
オビキカメレンの後ろにまわったときに尻尾の攻撃を受けてしまいユキは木に思いっきり打ち付けられた。
「くぁ......くぁーーーー!くぁーーー!」
その鳴き声はまるで子供が「痛い痛い」と泣きじゃくってるようだ......
その一撃でユキは動けなくなってしまった。
勝ちを確信したオビキカメレンの舌がユキに近づく......
ユキはもうどうすることも出来なく涙が出ないが泣くしかなかった。
「(こわいよぉ......いたいよぉ......おかぁさん......おかぁさん......)」
そして何も抵抗できないまま食われるかと思ったその時。
「......クルッポー」
変な鳴き声がしたと思った矢先オビキカメレンに凄まじいスピードで近づいた影は目を爪で攻撃した。
「キシャーーーー!?」
不意打ちをくらったオビキカメレンはユキに伸ばしていた舌を戻す。
「くぁ......?」
その間にユキを護るように前に立っていたのは
「......クルッポ」
真っ黒い立派なベルドリだった。
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