第298話 ユキちゃん盗み聞きです!

 「ここら辺のはずですが......」


 あれから何度も生徒の人から「迷子?」って言われ続けながらも上手く誤魔化して一年の校舎まで到着......【聴覚強化イヤホン】は人混みで発動させていると時々人にぶつかりそうになるのでユキは発動させたり切ったりを繰り返していた。


 「もう一度ここで聞いてみるです」


 しかし、発動をさせようとした時


 「あ!やばいです!」


 ユキは咄嗟にトイレへ駆け込み個室トイレの扉を急いでしめる。


 「ま、まさか次に行く所がここだったなんてです......」


 そう、ユキが発動させようとした時見えたのはさっきまで居た集団だった。

 不運なのか幸運なのかウマヅラ達が選んでいたのは一年アドベンチャー科の出し物だった。


 「で、でもまだ声の人を見てませんので帰るわけにはです!ここからでも!」


 トイレで発動させようとした瞬間、誰かが女子トイレに入ってきた。


 しかし、ユキは気にせずイヤホンを発動させようとすると......


 「アオイは美少女コンテストに行ったわ、良く誘導できたわね、すひまる」


 「......!」


 ユキは【アオイ】という言葉に反応する。

 その名前は前にユキがアオイと一緒に居た頃。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「おかぁさん、ユキはおかぁさんの名前もしらなかったの......じぃじに聞いても教えてくれなくて......だから、おかぁさんの名前を教えて!」

 

 「フフッ、ごめんね?じぃじはきっと忘れちゃったのかもねー......お母さんの名前は」








 「【『アオイ』】だよ」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 と、ユキは聞き出していたのだ。




 「(アオイ......おかぁさんの名前!)」



 ユキは聴覚強化イヤホンを発動させ外の話してる人たちの会話を盗み聞く。


 

 「?、どうしたのすひまる、浮かない顔して?」


 「あ、あの......やっぱり私にはアオイさんが『女神』なんて思えません......」


 「それに関しては私も同意見だわ、あんな普通の人間、見ただけならわからないでしょうね」


 「じゃ、じゃぁ計画を中止に」


 「はぁ......これだからアンタみたいな......」













 「【下級吸血鬼】は駄目なのよ」





















 「(かきゅうきゅうけつき?です?)」


 子供のユキには聞いたことのない言葉で良くわからなかった。





 「す、すいません......」


 「いいわ、あんたみたいな能力のない能無しは気付かなかったでしょうが教えてあげる、あの時......人間達の話し合いしてた時に咄嗟に出した魔法」


 「『魅了』......ですか?すごかったです......私もかかりそうに......」


 「はぁ......これだから......私たちは実際に『かかっていたのよ』そして、何回もまたかけられている」


 「え!?わ、私はそんな記憶......」


 「すひまる、あんたまだ『女神』って言うのが解ってないみたいね。あれだけの魔力、あれだけの密度の『魅了』......それはもう【魔法】ではなく『呪い』......いや、もしかしたら世界に干渉してる『何か』かもしれないわね」


 「?」


 「ピンと来なさい、どうして私達の仲間を増やすのに時間がかかってる?どうして日の光に弱い私達が《体育祭》なんて出てるのよ」


 「それは......学校の行事だから仕方なく......仲間を増やすのも行事の準備で忙しいから......あ」


 「そう、そうよ、『そう思ってしまう』からよ」


 「これが......『呪い』......」


 「それに気付いてもまた私達は人間達の......いや、アオイの良いように動いてしまう。」


 「ひ、ひぃ......もしかしてあの時、転けてガラスにヒビが入ったのも......」


 「それはアンタのせいかもしれないけど、充分ありえるわね。それに思い出させないでよ、演技とはいえアンタみたいな下級に謝るなんて私の一生の汚点だわ......まぁ、私が『呪い』にかかってたからあんな事で苛立ってしまったのだろうけど。もう私に目立つような事をさせるなよ?下級吸血鬼が!」


 「ご!ごめんなさい......」


 「ふん、まぁいいわ、そのおかげでやっとアンタだけアオイに近付けるようになったから」


 「あの、なんで私だけ......なんですか?あなた様も色々......」


 「............アオイといつもいるあの青髪の女」


 「ルカさん......ですか?」


 「アイツは私が《あの夜》この女の血を吸って化けた次の日から何かを感じて警戒してるわ。隙を見てアオイの血を頂こうと見てるけど逆に此方側が見られてる。」


 「そ、そんな......」


 「話はここまでよ、さぁ、来た様ね。」


 「(来た?)」


 ユキがそう思ったとき、女子トイレの扉が開きユキの耳に聞こえてきたのは。



 「あ、あの!話ってなんですか?《ストロングウーマン》のリーダーさん、すひまるさん。」



 ユキの耳に聞こえてきたのは14歳の若い青年の声だった。







 「急にこんな所に呼び出してごめんねー?《ファイアーヒューマンドロップ》の小さなリーダーさん♪」






 





 

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