第295話 飴のお兄さん

 《モルノスクール》


 文化祭当日と言うこともあって生徒以外にも近所の人や親戚、他の町の友人なども来ていて賑わっている。


 そんな中、ユキ達は空き教室に来ていた。


 「ようこそ、モルノスクール文化祭へ。私は二年アリスト科のプレジと申します、父上から話は聞いてあります、私が案内をするのでよろしくお願い致します。」


 ニコッと笑いプレジはモグリ邸の先生達にお辞儀をする。

 今日来た先生は三人、ウマヅラ、ドーロ、ルクスの三人だ。

 

 「うむ、よろしくお願いします」


 「よろしくー」


 「よろしくやねんね」


 次にプレジは子供達の方を見てニッコリ笑い。


 「それ!」


 「「「「わー!」」」」


 魔法を使ってみんなの前に山盛りになった飴を出現させた。


 「後で好きなだけ持っていっていいからね?」


 「あらー、いいのー?」


 「はい♪」


 「ほら、みんな飴のお兄ちゃんにお礼を言うねんな!」


 「「「「飴のお兄ちゃん!ありがとう!」」」」


 「ありがとうでーす!」


 みんなお礼を言った後ちゃんと並んで飴を目一杯ポケットに詰めていく。


 「さて、では先生方どこか行きたいところはありますか?これがリストです、決めたら私にお申し付けください、他の生徒と連絡を取り安全にリストアップされたものを案内しますので」


 「ほう、これはこれはありがたい、飴に夢中になっている間にゆっくりと我らが見れる訳ですな」


 「気が利くわねー」


 「流石やわ」


 「光栄です、ではゆっくりと考えていてください、時間はたっぷりあるので......私は扉の方にいますね」


 先生達三人はそれぞれの出し物のリストを見て、プレジは扉の方で立っている、そしてプレジの所へトコトコと金髪を揺らしながら近付く子が......ユキだ。


 「飴のお兄ちゃん、あれは魔法です?」


 ユキの存在に気づきプレジは屈んで目線を合わせる。


 「そうだよ?」


 「すごいです!どうやったのです?」


 「【転送魔法】を見たことないのかな?」


 「てんそうまほう?」


 「そうそう」


 「もっと何か出せるです?」


 「出せるよ?お嬢さん、何がほしいかな?」


 「お嬢さんじゃないです!ユキです!えとねえとね!お肉!」


 「お、お肉?」


 「うん!ユキね!食べるのも好きだしお料理も好き!」


 「ふふ、じゃぁユキさんが大きくなったら最高のステーキを食べさせてあげるよ」


 「わー!ありがとうです!ステーキ大好きですー!」


 パタパタと喜ぶユキをプレジは撫でる。


 「ふにゅ♪」


 「いい髪の色だね、私の恋をしてる相手もこの髪の色でステーキを美味しそうに食べるんだ」


 「わー!おかぁさんみたいな人です!」


 「おかぁさん?」


 「はいですー!少ししか一緒にいなかったけど......」


 「......」


 ここの子達がどういう子達なのかはプレジは聞いていた、なのでもしかしたらユキは母親に売られ、辛い過去に触れてしまったのではないかと焦った。


 「ゴホン......ユキさんにはみんなには秘密でこれをあげよう」


 プレジは持ち合わせていた【聴覚強化】の魔皮紙をユキのポケットにいれてあげる。


 「なーに?これ、です?」


 「これは使うと耳がよく聞こえるようになってね?後ろの方になっちゃって前の声が聞こえないときとかに使うといいよ」

 

 そのタイミングで先生達がプレジの所へ来た。

 どうやらどこに行くか決めたみたいだ。

 ドーロはユキを見るとすこし頭を下げながら


 「すいません、こーらー、ユキちゃん飴のお兄ちゃんに迷惑かけちゃだめよー」


 「かけてないです!」


 「はい、迷惑じゃなかったですよ、私も彼女と話せて良かった、先生方も決まりましたか?」


 「はいー、何個か危険そうなのを除いてとりあえず最初は二年生マジック科の魔法ショーを見せてあげようかと思ってますー」


 「わかりました、では行きましょう」


 「はーいー、みんな移動するよー列に並んで飴のお兄ちゃんについていきましょうー」


 「「「「はーい」」」」


 「ほらーユキちゃんも並んでー」


 「はいですー!」


 トコトコとユキは列に戻るとミイが手を繋いで話しかけてくる。


 「なにしてたのー?」


 「へへへ、ひみつです!」


 「教えてよ~」


 「大人の女は秘密がおおいんです」


 「私達まだ子供だけど......」



 

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