第222話 正義のアイ!
「ここまででいいか?」
アカネとキールは取引をした後、茶髪のメスの獣人に案内され世界樹を降りた。
「はい、ありがとうございます」
「……」
「?」
案内していた獣人はキールを睨み付けている。
「何かな?」
「いえ、人間などと話すことは無いし、話したくもない」
客人として扱う様に言われているせいか無視できないのでその獣人は変な言葉になってしまった。
「ならばその目はやめてほしいものだな、君程度の実力では私に敵わないから喧嘩を売る相手を間違えないことだ、痛い目を見るぞ」
だがキールもずっと殺意とも感じられる視線を受け続け頭に来ていたのだろう、挑発する様に返す。
「なんだと!」
「キールさん!えと……十番隊隊長のアイさんでしたっけ?ここまで送ってくれてありがとうございました」
アカネは変な空気になりそうなので無理矢理話を切り上げて離れようとするのでキールも察して後ろを向く。
「さっさと失せろ、人間」
「……」
「ちょ、キールさん!?」
キールはその言葉を聞くと瞳孔を開きながら獣人に振り返った。
「君に昔何があったかは知らないが人間という分類で見ない方がいい、私は獣人にも色々なのが居ると思っているし人間にも悪いやつも居ると思っている……そんな私から見ても君は愚かで救いようのない獣人だ」
「なんだと!」
その言葉を聞いた瞬間アイは自分の剣を抜き、キールに上から斬りかかるがそれをキールは容易く避ける。
さらにそれを追って斬りつけていくがキールはつまらなさそうに避けている。
「内容の無いことをぺらぺらと喋ったところで人間風情が我ら獣人の気持ちがわかるか!」
「……」
「っ!何!?」
パシッと表情を変えずに片手の指の間でアイの剣を挟むとそのまま足で剣の持ち手を蹴りあげた。
「しま__」
アイは持っていた剣を衝撃で離してしまいキールに武器を奪われた。
「内容が無い事だと思ったか?違うだろう?真実だから聞きたくないんだ、私は君みたいな奴が1番嫌いだ、もっとも君がこれだけ侮辱されても聞く耳を持たないなら勝手に破滅すればいい、私には関係ない」
「く……」
先程まで自分の持っていた剣を突きつけられ反論が出来ないアイ。
「此方も君みたいなのに構ってる暇はないからこれくらいにしといてやる__剣は返す」
アイの目の前の地面に剣を突き刺した。
「その剣も君の部下達もかわいそうで仕方ない」
それだけ言い残し、その場を二人は去っていった…………
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「あの……どうしてキールさんあんなことしたんですか?」
世界樹から少し離れた所になりアカネはキールに聞く。
「彼女を見ると昔の私を思い出してな……」
「なるほど、そうですか」
「見苦しい所を見せた、すまない」
「いえ、私はリュウトさんさえ居れば気にしませんし、私はリュウトさんが悪の道に行っても着いて行きますので」
「そうだ、それでいい」
「良いんですか?」
「良いとも、絶対の正義なんてこの世に存在しないのだから……」
「………そうですか…………」
2人はそれ以上話す事なくリュウト達の元へ向かった。
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《取引後 女王の間》
もう周りに誰も気配はない。
魔時計がシュルシュルと秒針を刻む音だけ聞こえる。
「しかし、あの小娘……」
取引した古い本を読みながら思い出すのは自分と同じ種族と髪の色の獣人。
「生きていたとは____“名も無き愛染”」
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