第182話 ユキちゃんとお別れ!
「それじゃぁ私たちは行くわね〜」
「うん、本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました!です!」
俺は深々と2人に頭を下げると隣に居たユキちゃんも真似をする。
「いいって事よ〜気にしないで〜」
「……本当に一緒に来なくて良いのか?」
「うん、大丈夫!」
そう、俺の飼い主であるマスターが居なくなって今の俺がどういう状況か解らないが、あのシルクハットを被った大マスターが迎えに来ていない限り自由の身なのだろう、その時間を使って俺は“ある事”をたまこさんに聞いていた。
「おかぁさんとユキは大丈夫です!」
「…………」
だが、それにはユキちゃんを連れていけない。
だから____
「.……ユキちゃん」
「ん?なぁに?おかぁさん?」
「ごめんね、ユキちゃん」
「……?」
「……ユキちゃんはお母さんとここでお別れだよ」
「な、なんで?」
その言葉を聞くとユキちゃんは泣きそうにな顔になった。
「お母さんは弱いから……ユキちゃんを守れないし危険なんだ」
「そんなことないもん!今だっておかぁさんが居てくれたから!」
違う……俺は運が良かっただけだ、もしもあの時ヒロユキやグリードの代表騎士の人が居なかったらどちらも死んでいた。
「ユキちゃん……」
「……いや……嫌だよ……おかぁさん……やっと会えたのに……」
「……」
ユキちゃんは俺に抱きついて来てついに泣き出す……ごめん……やっと会えたお母さんも本当のお母さんじゃないんだ……
「ユキが弱いから足手まといなの?」
「フフッ、そんな言葉をどこで覚えたのかな?」
俺はユキちゃんと目線を合わせて真っ直ぐに目を見つめる。
「よく聞いて?お別れって言ってもほんの少しだけだよ?お母さんが強くなったらすぐに迎えに行くからね」
「……ほんとに?」
「うん♪」
「ほんとにほんとにすぐに?」
「うん、だからそれまで待っててね?ユキちゃんは強い子だから待てるでしょ?」
「……はい……」
「偉い偉い」
「……えへへ」
「おかぁさん」
「ん?何かな?」
「ユキも……ユキも強くなる!強くなっておかぁさんを守る!」
「フフッ、じゃぁその時はお言葉に甘えるね?」
「うん!」
再び立ってたまこさんとヒロユキに向き直る。
「では、ユキちゃんをお願い」
「わかったわ~」
「……任せろ」
「うん……」
俺はみんなに背中を向けて歩き出す。
「……おかぁさん!」
後ろからユキちゃんの声が聞こえたが振り返らずに歩く。
「行ってらっしゃい!」
「!……フフッ」
俺は少し笑ったあと、「行ってきます」の意味を込め、振り返らずに片手でグッドサインを出してみんなに別れを告げた。
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