第146話 それぞれ!

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 「まさか……あのまま山頂に置いていったままにされるなんて……」


 ブルゼを討伐した後、あの黒騎士の野郎は俺たちを置いてアオイさんと一緒に消えていった……そう言う事なので3日もかけて2人でボロボロの身体に鞭を打ちながら下山して来たのだ。


 「リュウトっ!」


 町のあちこちはまだ崩壊していて人々が騒がしく復旧している中、みやが俺のことに気付いて近づいてくる。


 「みや、元気にしてたか?」


 「ぅんっ、リュウトこそあれから三日連絡ないんだもん心配したよっ」


 そりゃそうだ……魔皮紙なんてほとんど使い果たした状態で放置されてたんだから……


 「すまないな……そう言えばアカネ達は?」


 「アカネ達は町の復旧作業を手伝ってるよっ」


 まぁ、ここら周辺の魔物は俺たちに取って脅威じゃない。

 確かに、俺を探すより復旧作業をしていた方が効率がいいな……よく分かってる、いいパーティーだ。


 「あれっ?もう一人の勇者は?っ」


 「あぁ、アイツはパーティーの所に行ったよ」


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 ______

 

 「アニキっ!」


 「……」


 「え!?なんでそんな顔するの!?」


 「……生きてたのか」


 「死んでないからね!?ミーは不死身!えっへん」


 そう言いながらもジュンパクの腕は無くなっており包帯を巻いていて痛々しい。

  

 「……ユキは?」


 「ユキの姉貴は……」


 ジュンパクは元気なさそうに言った後、真面目な顔になり__


 「ついてきて」


 「……」


 そう言って、俺を1つのテントへ案内した。


 


 __そこには





 「……!!」



 緊急治療を受けている苦しそうなユキの姿があった。


 「……ユキ!」


 近くに行こうとするが周りに止められてしまう。

 その騒ぎに気付いた1人の医者がこちらに来た。


 「あなたは?」


 「……ユキの仲間だ」


 「そうですか……すいません、私たちで手を尽くしましたが維持をするのが限界です」


 「……維持?」


 「はい、彼女はかなり高度な魔法により生命を保っています、簡単に言うと普通の人間じゃありません、まるで魔力で作られた身体の様なイメージです」


 「……」


 「なんとか私たちは彼女を生き残させる事は出来ましたが時間の問題でしょう……1ヶ月です」



 ____!?



 「……そん、な……」


 崩れ落ちる俺を見てその医者は周りに聞こえない様に話しかけて来た。


 「一つ……希望があります」


 「……!?」


 「現在、我々医師の間で噂になっている伝説の医者……その人物なら彼女を助けられるかもしれません」


 「……伝説?」


 「はい、彼女は魔法医師免許を持っていなくて勝手気ままに重病の人を治療しています、そしてその全てを治している噂です」


 「…………そいつなら、治せるんだな?」


 「はい、現在はアバレー王国で目撃情報がありました、名前は____《たまこ》」


 「……わかった」


 「もう行くのですか?」


 「……今は1分1秒でも惜しい」


 「分かりました、彼女はこの町を救ってくれた一人です、私達が命に変えてでも延命させて見せます!」


 「……頼む」




 待ってろ、ユキ……必ず助けてやる。




 ……………………………………



 …………………………



 ………………



 「……」


 去っていくヒロユキの背中を見送るジュンパク。

 

 いつもヒロユキは何も言わずに行動する。

 それを追うのか追わないのかは自分で決める事なのを知ってるのだ。


 「あなたは行かないんですか?」


 悲しい顔をしているジュンパクに中から一人の医者が出て来て話しかける。

  

 「片腕のないミーは……弱いから、足手まといになっちゃうんだ……」


 「そうですか……でも、私にはそれだけじゃない様に見えますけどね」


 「…………」


 「冒険者で足や腕を無くしている方は沢山います、それに伴い、義手や再生魔法技術も素晴らしい進化をして生活は愚か冒険者もまた復帰できるほどのはずです」


 「……」


 「なので片腕が無いって言うのは嘘ですよね?」


 そう言う医者に対してジュンパクは片手で一瞬で短剣を抜いて医者の首に当てた。


 「……何のつもりですか?」


 「そう……ミーは片腕がないことより片腕を失った事で自分の弱さを知った、だから弱いからあの人のそばにいちゃ行けないんだ」


 「それとこの状況はどう言う関係が?」


 「まだしらばっくれるの?腕が無くなってもミーの中身の感覚は変わらないんだよ?…………お前のその目、海賊時代に反吐が出るほど見た嘘の目だ」


 「……」


 「何者だ?さっきアニキに何を吹き込んだ」


 「流石、神の子が選んだ仲間だな」


 医者の雰囲気が豹変する。

 それはジュンパクの感覚が正しかった証拠でもある。


 「神の子?」


 「私は……【神の使徒】だ、頑張った君たちに神からのご褒美を伝えに来た」


 「信じろと?」


 「信じる信じないも君の自由だ……だけど、君があの“勇者”の隣で着いて歩ける様になれる場所を教えてやる……俺を殺すのはそれからでもいいんじゃないかな?」


 「……………」


 ジュンパクは短剣を降ろす。


 「ふぅ……」


 「神の使徒でも命に危機を感じるんだね?」


 「そりゃ、不死身じゃないからな」


 「場所を教えろ、それとさっきの言葉、覚えておけ?ミーはしつこいぞ♪」


 「肝に銘じておくよ」




 「(待っててねアニキ、そしてユキの姉貴……ミーは絶対に戻るから)」




 そう言ってジュンパクは“ある場所”へと一人で旅立って行った。









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