第134話 金色のブルゼ!

 《ギルド内部》


 どうやら中にブルゼが入ってくる様子は無いみたいだ、何故かは解らないが好都合と捉えておこう。


 ミクラル王国のギルドの中は広く、元いた世界の空港に似ている……飛行機の代わりに転移ポータルを使ってる空港と思えばイメージしやすいだろう。


 何個もある転移ポータルの部屋は暗く機能を停止していて、その中でも一際大きな転移ポータルの部屋の前で隠れて俺たち2人は中を覗いていた。




 「……」


 「うげ、気持ち悪い」



 筒状の部屋の天井には大きな穴が綺麗に開けられていて壁にはギッシリと____人間が詰められていた。



 無理やりだ……酷い……


 ある者は骨をあらぬ方向に……ある者は四肢をもがれコンパクトにされ……そんな死体が綺麗に元の壁が分からないほど几帳面に詰められていた。


 「…………」


 昔の自分ならこの光景に耐えられず確実に吐いていた。


 だが、今の自分はこれでも動じないほどに心が成長しているんだな、と改めて思った。


 「アニキ」


 「……あぁ」


 そして……その中央に奴は居た。


 「____」


 その黄金色に輝く毛はまるで太陽の光を反射しているかのように輝き、煌めく翅が風になびき、その蝿の目は鋭く輝いている黄金のブルゼ。


 「アニキ、きっとあいつがブルゼ達のボスだよ、いや、外に居た超デッカいブルゼをボスとしたら中ボスかな?あいつからはミーの危険察知センサーがビンビン反応して感じてるよ」


 少し言葉はふざけているがジュンパクの顔は真剣で頬には冷や汗がたれている。


 「……だが、アイツは確実に殺さなくてはならない」


 「うん……この部屋の魔法陣は他の転移魔法陣と繋がってる核みたいな物だからね、まぁアイツはその事を知ってか知らずかここを1番拠点にしてるみたいだけど……」


 ジュンパクは注意深く黄金のブルゼを見る。


 「今はミー達に気付いてないから不意打ちで一撃与えられるとして、その一撃で殺さないとミーとアニキでどうなるか……」


 「……」


 「あ!いや!アニキが弱いとかじゃなくて相手の情報が無さすぎて最悪の場合って事だよ!」


 あたふたとジュンパクが訂正する、だがジュンパクの言っている事はもっともだ、先程のブルゼとの戦闘で俺は戦力差があったからな。


 「……気にしてない__む?」


 どう動くか考えていると穴の空いた天井からドシャッと人が落ちてきた。


 「__っ!?アオイ?」


 「いや、アニキ、どうやら違うみたい」


 一瞬みたら本物のアオイかと思ったが良く見たら体型が違った。


 少しホッとしたが目の前の落とされたその人物は口から血を流しながらも、ヒューヒューと息をしている。

 全身の骨が折れ変な方向に折れ曲がっていて動けないのだろうが……その青い目は光が灯っていた。


 「……行く!」


 「アニキ!だめ!」


 助けに行こうとしたがジュンパクが力付くで止めてきた。

 振り払うことは可能……だが無理やりそれをすると今ある気付かれていないと言うチャンスを無くしてしまうので下手に振り払えない!


 「……邪魔」


 「ごめんなさい、でもここであの人を助けたらその後はあの人を守りながら戦わなきゃいけなくなる……今のミー達にはたぶん無理だよ」


 「……そんな屁理屈!」


 「……」


 ジュンパクは何も言わずに真っ直ぐ此方を見る。

 その目を見ると複雑な気持ちなのが解った……


 きっと、俺より強いジュンパクからしたら俺と助けた人を守りながら立ち回らなければいけなくなるのだろう……


 …………………俺が弱いばかりに……ジュンパクにも迷惑かけている……クソ……


 「…………………」


 何も言わずに俺はジュンパクに従った。


 「ありがとうアニキ……」


 「…………」


 黄金のブルゼは落ちてきた人間へ近付き、「イイイイィィィィイ」とおぞましい鳴き声を発する。


 アイツは何を思ってそんな声を発したのか分からない……喜びか、悲しみか……


 次の瞬間____


 「__っ!?」


 「うっ……」


 エイリアンの様に口がグパッと開きアオイと同じ金髪の頭に齧り付いたのだ!


 「いギャァァアアアア!!!!!」


 先程まで何も声を出していなかった……いや、出せなかったはずの声が食べられている人間から叫ばれる。

 

 「いだぃぃぃ!!やめでえええぇえ!!だずげで!」


 血と脳の汁をまるで汗の様に流し叫んでいる中……目が合ってしまった。


 「アニキ、耐えて」


 ……クソ


 クソクソクソクソクソクソクソ!!!!

 

 噛み締める。


 歯が欠けるほどに__


 


 「ぴ、が、ぅ……ぁ……」




 カマキリが虫を補食するのを想像してもらうのが一番当てはまるだろう。


 生きながらに脳を壊され言語機能を失ったのか目がギュルギュルと周った後、息絶えた。


 「あっ、あっ……」


 死んでいるはずなのにブルゼから脳を齧られる度に痙攣し声が出ている。


 「…………………………」


 ………………殺したい。


 今すぐにでもアイツを__


 殺す!




 金色のブルゼはそのまま食事を続け、首から上……頭を全て喰らい付くし、残った身体を足で器用に持ち上げ、壁に貼り付けに行き此方に背を向けた!



 「アニキ!」



 ジュンパクが合図をだし__








 ____ついに戦闘が始まった。








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