第123話 ドッペルゲンガー!
《ナルノ町》
………………
…………
「……あれ?」
気がつくとそこは暗い地下ではなく悲鳴が飛び交う町の中心だった。
「……僕は一体何を……」
思い出そうとしたが周りがそれどころでは無かった。
「何やってんだあんた!早くにげろ!」
「は、はい!」
集団心理と言うものだろか、状況が分かってなくても周りが悲鳴をあげながら逃げているので同じ方向に俺も走り出す。
「一体何が__っ!」
逃げながら後ろを見ると少し遠く離れたところでいつか見たドラゴンと同じ、いや、羽根を広げたらそれ以上ありそうな巨大な____
____ハエがいた。
うわ、気持ち悪!
全身に鳥肌がたつ、遠くから見てこの嫌悪感だ、近くで見るとどうなってしまうのだろうか……
町の所々から魔法がそのモンスターに放たれているがダメージが通ってるとは思えない。
必死でみんなと逃げている中____
「こっち!」
「え!?え!?」
“金髪の女性”に腕を引っ張られ、ある店の中に誘導された……
照明はついておらず、薄暗い店……どうやら服屋みたいだ……
店の中は荒れているが服がそこら中に散らかって……って、あれ?俺ここに来たことある様な?
「あなた、アオイちゃんよね?」
「え?そ、そうですけど」
「この顔どう思う?」
「!?」
その金髪の女性が振り返ると鏡を見たような感覚になった。
俺が目の前に居たのだ!
いや、正確には俺を真似した人達の一人だろう、だがこの人に関しては何もかもが一緒だった!
「久しぶりねー、アオイちゃん、どう?この顔、身体、胸、おしり、目の色、髪!何もかもをあなたをモデルに改造したのよ!毎日毎日自分を見るのが快楽でね……あ、そう言えば私が誰か解らないはずよね?私はそうね、名前はいいかしら、ここ《ゴールド》の店長と言えばわかる?」
そうだ!ここは以前俺が連れてこられた店か!
「そ、その、お久しぶりです、逃げなくていいんですかね?」
何100人も同じ顔が居る中、本物の俺の事を分かったのは驚いたが、それとこれとは別だ、外ではもうほとんどの人が逃げたのか店から外を見ると誰もいない。
「逃げるわよ、ちょっと一仕事した後でね?」
「仕事?危ないですよ?」
「いいのいいの、本物のアオイちゃんを見つけたし……これはチャンスよ」
「チャンス?」
「……私ね、アオイちゃんになったのは良いけど何かが違うの、外見は完璧に似せてる、身体とかだって骨を削ったりした、変身魔法やメイクとかではなく完璧にね?だけど『何か』が足りないの……アナタに完璧になれたはずなのにその『何か』が……私は考えに考えたわ、何が自分に足りないか……でも分からなかった、だから1つの答えを出したの」
「な、なにを?」
「“本物さえ居なければ”私が1番可愛いんじゃないか?ってね」
「!!!?!?!?!」
えええええええええええええ!?!?!?
何その解決法!ちょっとタンマタンマ!
これって俺とばっちりじゃん!
「良かったわ、今あなたを殺しても何も罪には問われないもの、きっと神様がくれたチャンスよ!大丈夫、あなたの遺体は後で私がちゃーんと回収してあげる……その肌も目も内臓も何もかも使い道しかないもの」
「それ大丈夫じゃないじゃん!?」
「あら?さっきから思ったけど自分の意思を話すようになったのね?えらいわねぇ」
どこからともなく店長はナタを取り出し、ジリジリと詰められる。
死の匂いを嗅ぎ付けたのか小さなハエが飛んでくる……え……『ハエ』?
「鬱陶しいわね、ブンブンと……何この小さいの」
まとわりつくハエに鬱陶しそうにしている。
なんだ……この『危機感』は……
俺は本能的に大量の服の中に隠れた!
「あはは、可愛いわねぇ、目の前でそんなとこに隠れるなんて?子供じゃないんだから」
違う、俺が感じてる『これ』は店長からのではない!
「あーもぅ!鬱陶しい!__え、な、なに!?」
__その答えが解った。
一匹のハエを持っていたナタで見事に一刀両断すると、それを合図に窓の隙間や扉から大量のハエがドッペルゲンガー……もといゴールドの店長に襲いかかったのだ!
「な!?く、くるな!【ファイア】!」
火の魔法を火炎放射器の様に使って威嚇し何体か焼き払うが焼け石に水。
「嫌!そんな汚らわしいナリで私に触れるな!いや、いやぁぁ!!」
ハエの大群が意思を持ってるかのように身体にまとわりつきたまらず店長は外に飛び出した!
「何よこれ!な__んぐ!」
口や鼻、さらには目からもハエが入り込み、痛みと不快感により転げまわるのが見えている。
何が……起こってるんだ?
さらに外に居た小さなハエがどんどんどんどん店長の身体を包んでいき最後には黒い塊になってビクッビクッと痙攣した後に動かなくなった……
「ひ、ひぃ」
目の前で起こった光景に恐怖する、そして次に驚いたのは上から人間サイズのハエが飛んできたのだ!
そいつが近づくと小さなハエ達はまたどこかに飛んでいき、死体があらわになる。
「ぅ……ひどい……」
自分を殺そうとしていた相手だったがそれを踏まえてもひどい姿だった……死体に目は無く、金髪の髪も根こそぎ引きちぎられ……これ以上はやめておこう……
そしてその死体を一通り転がした後、掴んで持っていった。
「ゥッ……オエェ」
吐いてしまった……あまりにも惨い、こんなの常人に耐えれるわけがない。
死体は慣れてきたけど命が……しかも自分のドッペルゲンガーのような存在が目の前で惨い殺され方したのだ。
つまり、俺が狙われていたら……
「……」
ゆっくりと歩きガラス窓から外を見てみる__
「な、なんだこれ……」
外の空には大量の大きなハエが人間を連れ去っているおぞましい光景が広がっていた____
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