第84話 おはよう、朝、自由!

 チュンチュンと鳥の鳴き声、外が何やらザワザワしてるようだが心地のよい太陽の光。


 「ん、ん〜」


 私、《ブールダ邸の奴隷メイド》のアンナは目を覚ました......うん、気持ちのいい朝ね。


 「アオイ、朝よ、ほら起きて」


 はぁ......髪の毛が寝癖ですごいことなってる……

 

 「......」


 「あんた......どうなってんのよ......」


 「......?」


 反対にアオイは寝癖も何もなく綺麗なままの髪だった……ほんと、この子どうなってんのよ……


 「朝の支度しなさい、すぐに出るわよ」


 「......どこへ?」


 「とりあえず私達の奴隷の証拠、『これ』を隠そうかと思ってるわ、私達が奴隷と解った途端、上から目線で来たり、無理やり襲いに来る奴が居るかもしれないから」


 「......」


 この奴隷の刻印は別に隠してもよい、それと言うのも「奴隷だけど奴隷に見せない様にする」事をする人が居るからだ。


 例えば、「奴隷彼女」。

 女の奴隷を高値で買い、刻印を隠して彼女の様にしろと命令してデートさせたりする。

  

 「てことで、私は首にある数字、あんたはその胸の数字を隠せるような服を買いに行くわよ、ちなみに《ゴールド》はダメね、あそこの服はファッションが奇抜すぎて逆に目立っちゃう」


 「......はい」


 「ちなみにそこまで行く服だけど、チャイナドレスはやめてね、もうあんなのはこりごりだから」


 「......はい」


 「メイド服で行くわよ、それならフードもあるからね」


 「……了解です」


 「じゃ、ちょっと私はお化粧するから待ってなさい」


 「……はい」


 お化粧しようと鏡の前に座ると口元がニヤニヤしてる自分に気づく。

 アオイには秘密だけど私も奴隷になって初めて休暇を貰えたのよね、顔に出ちゃってるわ、気合い入れ直さないと!


 「......」


 アオイの方を見るといつもの様に虚空を見つめて体育座りをしている。

 

 はぁ……この子、お化粧もいらないし髪をとかなくてもいいし……ほんと羨ましい身体よね……この子に女としての自覚が芽生えたら確実に人生を謳歌出来るのに……って!そんな事より!


 「まずは仕事を片付けなきゃね」


 今回の休暇はもちろんタダで貰えたわけではない。

 これもアオイが居てこその休暇なのだ。


 アオイを2週間レンタルした相手、《モグリ》は私達メイドの間でも噂がつきない。


 特に自分の奴隷をいじめて反応を見ているなど悪い噂である。


 性欲を満たすために奴隷を何人か殺している噂。

 独占欲も強く、金を積んで奴隷商を一つ丸ごと潰し全て自分の奴隷にした噂。

 奴隷達で強制的に繁殖させる噂。


 そして、私達のマスターはアオイを高値で売った……最初はビックリしたけど、条件は処女を守る事と顔を傷つけない事だ。


 ………………ま、まぁアオイには申し訳ないけど最低条件はクリアしてるから……うん、酷い目に合わないといいけど……ここまできて少し心配。



 だけど奴隷の私に他人の心配なんてしてる暇はないわ。


 だから私はマスターに提案したのだ。



 “感情のない奴隷より感情がある方がアオイを延長して買ってくれます私なら時間があればアオイの感情を取り戻せますよ”と____


 「本当にうまくいったわ、私は天才ね」


 もちろん、私にとっても賭けだ。

 2週間……多くもあり少なくもあるこの日数でアオイの心を取り戻さなければこれから先、一生休暇なんか貰えなくなるわ。


 下手すれば殺されるわね。


 「......」


 私は化粧を終わらせて振り向くとアオイはまだ座っている。


 あれ?私化粧したよね?だけど何もしてないこの子に勝てる気がしない……


 「アオイ」


 「……?」


 大丈夫、私は何人もアオイみたいな奴隷を見てきて更生してきた。


 「いや、なんでもないわ」


 私なら出来る!


 だから今は自由を堪能しながらアオイの糸口を見つけるわよ!


 「じゃ、行くわよ、しゅっぱーつ!」








 さぁ!久しぶりの自由の第一歩よ!!!!!





 そう思いドアを開けると!




 「…………え?ちょ?」

 

 「......ぅ」






 廊下や壁、そして私達の部屋のドアにベットリと赤黒い血が付いていた。







 

 

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