第63話 武器召喚!

 結界が張られると同時に、轟音と共に爆発音が響き渡り地面が揺れる。

 

 どうやら、他の冒険者達が動き出した様だ。


 「さっそく始まったみてーだな」


 遠くからでも見える大きな魔法は、クリスタルドラゴンにぶつかるものの、ダメージの兆しは見られなかった。


 「やはり近接が得意なパーティーは我々と同じく近づこうとしてるな」


 私たち以外にもちらほらとまっすぐ同じ方向へ走っているのが見受けられる。


 「まぁ、もっともじゃね?てか得意というかあれだろ、敵が巨大すぎて近く見えるけど実際は遠いから魔法が届かない奴が多いんだろ、オリバ、お前はどう思う?」


 「言うまでもない......」


 「ま、俺の理論は完璧だからな!」


 「つまり私達も近接してクリスタルドラゴンを攻撃する、ということでいいのか?」


 「とりあえずはそれで、俺達に長距離魔法使える奴は居ないからな、ただ問題なのが長距離攻撃を主流にしたパーティーの攻撃に当たらないようにすることだよなぁ、下手くそが当ててきたら仲間でも殺す!」


 「殺すのはやめておけ......私達は攻撃が飛んでいない所を見極めクリスタルドラゴンを攻撃する」


 そう言っとかないとこいつは本当に殺す可能性があるからな


 「あーぁ、何で弱いやつに俺が合わせねーといけねーんだよ」


 「了解......」


 「んじゃぁ、お前ら強化するから全速力でいくぞ!おら!【超身体強化】!」


 クロエが空中に魔法陣を展開し、その中を私とオリバルが通る……見た目は変わっていないがこれにより装備無しでも人間では無理な事が出来るようになる。

 

 例えばジャンプ力だ、人間は通常10メートルは飛べない。

 だがこの魔法を使う事によって筋肉が強化され壊れにくくなり可能になるのだ。


 ちなみに【超身体能力強化】は上級魔法であり、一般に使われる【身体能力強化】とは比べ物にならないほど恩恵を受ける事が出来る。


 それもあって私達が1番にクリスタルドラゴンの元へ辿り着いた__


 「これは……」


 そのおかげで1つ分かった事がある。


 「これが原因で動いてなかったのか」


 崩れ落ちた山の瓦礫の中に、魔法陣の光が微かに輝いている。その瓦礫の下からは何千もの黒い鎖が、クリスタルドラゴンの足にしっかりと絡まりついているのだ。


 「キーさんキーさんキーさんキーさん!なにあれ!なんだよ!もう!俺の知らねー魔法がまたでた!しかも今回は見えてる!あーーー!解析してえええええ!」


 「落ち着けクロ」


 「うるせぇ!俺は落ち着いてる!」


 うそつけ!


 クロエは転送魔皮紙から本気の武器の【ナックル】を取り出して手に装着する。


 「さっさとこのでけー魔物をぶっ飛ばすぞ!」


 クロエの得意魔法は回復と補助。


 だがそれは後方で支援する為ではなく__

 

 「でかいから外すことがねえ!オオオォォルァァア!」


 自分が前線に立つ為に必要な魔法だからだ。

  

 ドゴーンという重厚な音と共に、クリスタルドラゴンに向かって拳を繰り出したクロエだったが


 「まじかよ......俺の渾身のパンチだぞ!?普通の魔物なら跡形もなく飛び散るくらいの!」


 しかし、その美しい鱗には全く傷がついていなかった。


 「くそ!オリバ!」


 「うん......」


 続いて、オリバルは背中に背負っていた【メイス】を取り出した。

 通常の形のメイスとは違い、剣のような形状をしている。


 「……!」


 オリバルも攻撃するが、鈍い音が響き、まったく効果がない。


 「硬い……」


 

 2人の武器はいずれも鍛錬され強化された最強に名を恥じない武器。


 しかし、その武器をここまで通さないとなると本当にこれは伝説のクリスタルドラゴンらしい……なら、私も最初から本気を出そう……



 伝説には伝説だ。

 




 「【武器召喚】!」




 魔法を唱えると、私の足元に幻想的な魔法陣が広がり、その中から美しい炎の渦が勢いよく昇り上がった。そして、渦が弾け飛ぶと、左手には輝く盾が浮かび上がり、右手には燃えるような真紅の光を帯びた剣が姿を現した。



 ……これが私の使える最強で最大の魔法。


 なんの因果か知らないが私はこの神級魔法を使える。



 神級魔法……冒険者なら誰でも知っているが、選ばれたものしか使えない神の領域への魔法。



 もちろん、デメリットもあり、出すだけでも大量の魔力を使い、出してる間も持続的に魔力を消費するが威力は超級魔法を超える!



 「行くぞクリスタルドラゴン!」



 真紅の剣でクリスタルドラゴンの鱗を斬りつける!


 「ジュッ」と水が一瞬で蒸発するような音が聞こえた後、斬りつけた箇所一直線に光が走り爆発し難攻不落の鱗が内側から弾け飛びクリスタルドラゴンの肉が現れた。


 「______!!!!???」


 「キーさん!あぶねーぞ!」


 「!?」


 声に気付き振り向くと此方をめがけてクリスタルドラゴンの爪が虫を払いのけるように地面を削りながら接近してきていた。


 「っ!」


 「……」


 間一髪、近くにいたオリバルと一緒に避ける事が出来たが、そのまま爪の動線上にいた冒険者パーティーは避ける事が出来ず弾き飛ばされた!


 「危ない!」


 「アイツら!」


 冒険者である以上、自分の身長の倍以上ある魔物に弾き飛ばされるのは日常茶飯事……だがそれは大型魔物の討伐依頼が日常のダイヤモンド冒険者の話!


 「ぐわああぁぁぁ……グ__」


 きっと弾き飛ばされた男達はそう言う経験が少なかったのだろう。

 

 受け身を取ることが出来ずに【結界】の壁に勢いを殺せずに当たり、衝撃で潰れ内蔵と血を撒き散らした。


 

 だがそちらに構っている暇はない!



 「クロ!オリバ!私は【武器召喚】が続いているうちに鱗を出来るだけ削ぎ落とす!」


 「「わかった!」」


 

 魔力がどんどん減っていってる以上時間を有効活用しなければ!


 {キール様}


 親衛隊から連絡が入るが、モニターを見てる暇がないので声だけで応える。


 「到着したか!」


 {はい、現在此方は超級魔法の【光の矢】が準備完了しています}


 「分かった!現在此方は私の武器でしかあの鱗を剥がせない!待機せよ!」


 {了解}


 この大きさ。

 そして時間も考えると短期決戦で挑むしかない!


 「クロ!オリバル!」


 「あ?」


 「何……」



 「“アレ”を使う!」



 そう言って私は一枚の魔皮紙を取り出した。



 「ほぇー!キーさん久しぶりじゃん!それ使うの!」


 「私だけでは足りない!2人とも援護を頼むぞ!」


 「あいよ!」


 クロエはナックルを転送魔皮紙に戻し、ロッドに切り替え。


 「なら、俺も使う……」


 オリバルは転送魔皮紙からもう一本、剣のメイスを取り出し二刀流になり、私と同じ魔皮紙を取り出した。






 そして__








 「「【限界突破】!」」









 私とオリバルはリミッターを外した。













 「行くぞクリスタルドラゴン!」












 


 

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