第62話 気になること?



 「ポータルが開いたぞ!」


 クロエがギルドから支給された転移魔法ポータルを起動したのだろう、此方の魔法陣が起動した。


 近くにいた冒険者が我よ我よとポータルに入って行く。

 私もポータルに入り、転移した。


 「お、来た来た」 


 「クロ、オリバ、すまなかったな、疲れたろ?」


 「いんや、そんなに疲れてない、それより、こっちに来てみ?」


 他の冒険者は作戦通り魔皮紙を木や石に貼っていってるのを尻目にクロエに付いていく。


 「ここの奥なんだけどまぁ見てみ?」


 「ほう……」


 奥に進んでみてみると無数の木々が倒れ、地面が抉れて所々焼け跡になっていた。


 「なにか、戦闘があったみたいだな??」


 「あぁ、しかもかなり大規模だよなこれ、なんの魔法を使ってるか解る?」


 「一つは解る、この地面の抉れ方。たぶん、大型の球体を撃ち出したのだろう、この焦げた後......ミクラル王国の【メテオクラッシャー】に間違いないと思う」


 「それってーと、超級魔法か」


 「あぁ」


 超級魔法。

 大量の魔力と引き換えに莫大な攻撃力を持つ魔法だ。

 本来ならば魔力に長けた人間が十数名、魔皮紙1つに1時間ほど魔力を流し続けて発動する魔法である。


 だが実際の狩りには向かない……そもそも魔皮紙は使い切りタイプ、超級魔法となると値段がかなり高いのだ。


 なので買えない冒険者は多く、その魔法で大型を狩ったところで赤字になる。


 「一応、エメラルド級の冒険者なら何時間もかければ1人で発動できると思うが……」


 私の見立てでは最近の冒険者ならダイヤモンドなら10人、ルビー冒険者でも4人......。


 「少なくとも片方は集団だろうな」


 現場にはメテオクラッシャーと他にも何個か魔法の跡があるのを考えると超級魔法を使う組とそれをカバーする組がいるはずだ。

 

 「だが、もう一つ、これがどうしても解らない」


 そう、ある程度現場を見ればどの魔法を使っているか特徴から判断できるが1つだけ解らない跡がある。

 

 「このメテオクラッシャーの相手……つまり行き先、途中で消えた?」


 地面が抉れてる場所を辿ると途中で止まっているのだ。


 ……まるで超級魔法を消したかの様に……


 「あぁ、俺も結構魔法知ってる方だけど超級魔法クラスをこんなに綺麗に消す魔法なんて聞いたこともねぇ!」

 

 クロエが目を少し輝かしてる。


 「なんか嬉しそうだな」


 「たりめーよ!新しい魔法!ワクワクするじゃねーか!」


 それもそのはず、クロエはちょっとした魔法マニアなのだ。

 なので彼女の家にはありとあらゆる魔皮紙が置いてある。


 「とりあえず、今は探索の問題なさそうだ、優先順位は低い」


 「わーってるよ!」


 本当に解ってるのかこの女は......


 しかし、奇怪なのは事実だ、警戒はしておこう。


 「後気になることは?」


 「ルコさんの気配がまったくない、居る気がしない」


 「あぁ……」


 確かにアイツは心配だ。


 「……」


 だが今はそれを考える時ではないのも事実……

 

 「ま、ルコさんは何やかんやふら〜っと生きててまた会えるか」


 言葉に悩んでいると察してかクロエの方からそう言ってくれた。


 「そうだな」

 

 そう言ってると胸ポケットの魔皮紙が光り熱を持つ。

 どうやら王宮からの通信の様だ。


 私は魔皮紙を取り出して魔力を流す。

 

 {キール様}


 映し出されたのは黒髪で知的な眼鏡をかけた騎士の女性。

 彼女の鎧は力強く、スタイリッシュなスタイルが際立つ。


 「タソガレ、状況を」


 {はい、現在、王宮騎士親衛隊、合計100名クインズタウンに到着しました、後に増員していく予定です}


 100人。

 クリスタルドラゴンに対して少なすぎるとは思うが王宮までの道のりを知っているユニコーンの馬車に対しては多く来ている方だ、きっとぎゅうぎゅうの箱詰め状態だっただろう。


 「解った、引き続きギルドの指示に従い此方へ来てくれ」


 {了解しました}


 山々から光の直線が天高く上昇し、透明のドームを形成していく様子が美しく広がっていくのが見え始める。


 

 それは結界が完成した証拠でもあり__




 「【クリスタルドラゴン討伐】開始だ」




 戦いの序章の幕開けを告げる合図だ!






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