第56話 問題だらけ!
「サクラ女王、やはりアオイは盗賊か山賊に襲われたのか__」
敷地内で襲撃された馬車が見つかり、アオイが行方不明になり数日……勇者召喚をしたなど世間に言えないので裏で必死に探して居るが彼女の姿は見つからなかった。
「言葉には気をつけなさいキール、敷地内で襲撃されそのまま逃してしまったなんて事が他の国に知れたらどうなる事か」
「申し訳ございません」
サクラ女王の書斎でグリード代表騎士の【キール】は苦い顔をする。
あの日、この世界に【勇者】が召喚された……
【勇者】達の同行はギルドを通して耳にしている。
【勇者ヒロユキ】は冒険者を初め、どうやら良い女性のパートナーを見つけたみたいだ。
その方と一緒に現在ゴールドの冒険者になっている。
今の所、【勇者】としての強さは感じられず、目立っていない。
私は【勇者ヒロユキ】の噂を聞いて、正直【勇者】の力をなめていた......国の戦力を一人で傾けるほどの伝説の勇者の力......そんなものかと。
問題はもう一人の【勇者リュウト】だ。
彼は冒険者になるや否や、初心者とは思えないほど色んな武器を鍛練なしで使いこなしていた。
そして、依頼を受けても鎧は銀色に輝いたまま達成してくるので【銀騎士】と名前が通ってる。
現在は《ダイヤモンド》冒険者らしい。
普通ならばそのクラスに行くのに10年……いや、そこまでたどり着くことも出来ずに冒険者を終えるものも多い。
「もう一つ、サクラ女王」
「何?」
「元国王、カバルトの遺体は現在も見つかっておりません」
「そう……犯罪者とは言え私の実の父……せめて娘の私で殺して上げるために確実に刺したはずですけどね」
「遺体をどう使うか分かりませんが、おそらく、元国王の息がかかっている者達の仕業かと……」
「尋問__」
その言葉を聞いてキールは心の覚悟を決める。
国王の息がかかっていた者だとしても元々は一緒に苦難を乗り越えてきた騎士達だ、それを尋問するのは心が傷つく……だが仕方ない……その国王は犯罪者なのだから……
「__を頼もうかと思ったけど、しなくていいですわ」
だが女王から出た言葉は予想とは違っていた。
「サクラ女王……」
「そんな事、私に言わなくてもキールの判断で出来ることよ、それをわざわざ回りくどく命令をさせようなんて……本当はしたくないんでしょう」
驚いた……
「そんな事ありません」などと言えない。
確かにその節があったからだ、自分が下すより命令をされた方が切り替えができる……確かにそう考えていた。
自分よりも歳下の娘に一言で見抜かれ痛いところを突かれたのだ、ぐうの音も出ない。
「はい」
「今避けなければいけないのは少人数の私派と他の国王派が城内で争って崩壊する事よ、今は代表騎士であるアナタがこちら側に居るから下手に動いてないけど彼等を刺激する様な事は私はしません」
その話を聞き私の中でサクラ女王への印象がガラリと変わった。
この子は王女ではなく、女王になっているのだ。
「話は戻るけどアオイちゃんを早く見つけないと……大変な事になりますわね」
「はい……」
勇者召喚の事がバレれば他の二つの国から同時に攻撃されてしまうだろう。
そんな事は避けなければ……
「なのでこの状況を緊急事態と見て、国の代表騎士であるキール......あなた自らその足でアオイちゃんを探してもらいます。今から代表騎士の代理をたててアオイちゃんを探して来なさい」
「!?」
「あら?秘密裏に動くのにこれ程の適任はいないと思いますわよ?」
「し、しかし、私が居ないと女王様の命が危険に晒されるのでは?」
「大丈夫よ、私も今は自分の身は『女神』に守ってもらってるから」
そういって女王は自分の胸に手をあてる。
女王の中に『女神』が居るのは私しか知らない。
現在は特に影響がないので放置しているが......『女神』.....この世の全ての悪を詰め込んだ神。
そんなものに頼っていいのか?
「いえ……やはり私は__」
『あなたの周りはそんなに頼りない奴らばかりなの?』
「!?」
『あなたが居ないとなーんにも出来ないの?そんなのが王宮を守ってるの?』
サクラ女王の雰囲気が変わった。
「女神……か」
『ご名答♪』
サクラ女王は見たこともない不気味な笑みを浮かべ舌をぺろりと出す。
『私がこの子の中に居るのは知ってたわよね?つまりこの子を生かすも殺すも私次第♡』
「お前が出て居る時、サクラ女王はどうなっている」
『そうねぇ、瞬きしたら時間が経ってるって感じじゃない?』
「つまり、聞いてないのだな」
私は女王に剣を突きつけた。
『…………へぇ』
「私は国の為に動いていた、それが間違っていた」
『それで?』
「今の私は娘を1番に考えている、その為なら全てを捨てる覚悟だ」
『この行動と何の関係があるの?』
「これは覚悟だ、サクラ女王は信じているがお前は信じていない」
『刺せばこの身体は死ぬわよ?』
「構わない、その場合は俺は娘を連れてどこまでも戦う」
『ふ〜ん?ま、いいわ♪アナタの覚悟はちゃ〜んと女神様まで届いたわよ』
「……」
『アオイちゃんの場所、知りたいでしょ?』
「知っているのか?」
『えぇ……ある程度の場所はね』
「……」
『ジャックスタウン、そこにアオイちゃんは居るわよ』
「わかった」
『物分かりがいいわね』
「うるさい、はやく消えろ」
『ばいちゃ〜い♪』
そう言ってウィンクをして目を閉じた。
「......今、出てました?」
サクラ女王の雰囲気が戻る。
「はい」
「あの方は何と申しておられました?」
「《ジャックスタウン》にアオイが居ると」
「そう、なら話が早いですわね」
「はい、それと、私を挑発してきました」
「挑発?」
「私が居ないとダメな騎士たちなのか?と」
「フフッ、残念だけどそれは意見が合いましたね」
「…………」
「怒ってるのかしら?でもアナタの発言から言わせてるのよ?」
「……はい」
「必ずアオイちゃんを取り返してきなさい」
「了解です」
「そう言えば」
「はい?」
「私はアオイちゃんを連れてくる事は言いましたが仮定は気にしません、なので貴方がどこに行こうが必要な事と思ってますので、自分の村に久しぶりに帰っても何もいいませんよ」
「ありがとうございます」
そういって部屋を出た。
「…………」
………何だろうか、このモヤモヤした気持ちは。
「ジャックスタウンか」
だが切り替えなければな、仕事は仕事だ。
「何年ぶりに王宮の外に出るのだろうな」
さて、どうやってそこまで行こうか……
「……初心を思い出すか」
そういって、私は荷支度をし、馬車で一度クインズタウンに向かうのであった。
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『何か悪い予感がするわ』
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