第40話 その頃、ユキちゃんは?

 《スロー村》


 「んもーぅ!なんでいないんれふかぁ!」


 ここはスロー村ギルドの横にある居酒屋。


 ギルドの依頼が終わった人達はここで打ち上げをしたり、次の予定を立てたりしている。


 そんな、周りが賑わっている中、壁際のカウンター席で酔いつぶれてる少女が一人……ヒロユキが依頼で居ない間に違う目的で動いていたユキである。


 「マスター……《ルグランサ》もういっぱい~」


 ヘロヘロした声でマスターにおかわりを要求するユキ。


 「はいよ、しかし嬢ちゃん、そんなに飲んで大丈夫かい?もうジョッキ4杯になるぞ」


 机には《オダマメ》と言うオツマミとユキが空にした大きいジョッキが4つ置かれている。


 「まだまだ~!お母さんはこのくらいじゃ酔いつぶれてなかったれすからねぇ~わたぁしが酔い潰れましぇんよ〜」


 マスターから見れば充分酔いつぶれていると思うが、せっかく飲んでくれるのならと新しいジョッキに《ルグランサ》を注ぐ。


 「あんたのお母さんもかなり飲む方だったんだな、遺伝か?はいよ、《ルグランサ》お待ち」


 ドンッ!とカウンターの上に並々に注いだ《ルグランサ》がシュワシュワと泡を立てて少しこぼれるが気にせずユキはジョッキを手に取り。


 「私の自慢のお母さんれす!ゴクッ……ぷはぁ」


 「そういや嬢ちゃん、さっき「居ない」って言ってたが人探しか?」


 「そうなんれすよ~やっと見つけた手がかりなのにぃ!……人探しとよくわかりまひたね?」


 ぐびっ!とまた飲んだ。

 どうやらかなりユキはお酒がまわってるようで、所々ろれつがまわっていない。


 「まぁここには人探してる奴も最近多いからな」


 「そうなんれす?」


 「なんだ嬢ちゃん知らないのか?《クバル村人失踪事件》を」


 「……詳しくはしらないれす」


 「ま、こんな事言って俺も噂でしか知らんのだが、どうやら隣のクバル村から人がごっそり居なくなったらしいぜ?んでそこ出身で他の所に行ってた連中が自分の親族や恋人を探す為に1番近い村のここに来てるってわけだ」


 「なるほろ、それでわたひが人を探ひてると?少し水をくらはい」


 「そう言う事だ、はいよ」

 

 マスターは水を渡すとユキはそれをグビグビと飲みほし少し酔いを醒ます。


 「残念ながら少し違いまふ、私は母親を探しているのですが、母親はその頃のクバル村には行ってないはずなのでその事件とは関係ないはずです」


 「母親か、さっきも自慢って言ってたしな、ま、ゆっくり探すこった」


 マスターはこれ以上はやぶ蛇と思い、追求をやめる。

 あまり深く関わると店の人全員に聞いて回れやらなんやら要求してくる可能性があるからだ、お酒が回ってる分、そこらへんはしっかり注意しとかないと行けない。


 「はい!確実に生きているのであとはたどり着くだけです!少し気分が良いので、マスターに私のお母さんの形見を見せてあげます」


 そういいながらユキは一枚の綺麗な白い羽を出し、それをヒラヒラとマスターに見せた。


 「ほう?これはまた立派な羽だな、なんの羽だ?」


 「それが解らないんですよね、うーん」


 「見た目は『ベルドリ』だけどなぁ、こんな色見たことない……お、そういや俺のベルドリ料理はうまいぞ?」


 「ふふ、マスターも商売上手ですね、ではそれを頂きましょう、私は味にはうるさいですよ?」


 ユキは羽をしまってまたお酒を片手に持ちマスターにニヤリと意地悪な笑顔を向ける。





 「望むところだ嬢ちゃん」




 マスターもニヤリと返し、この店の最高の料理……《ベルドリのパインポイン焼き》を出した。








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