第36話 VSピルクドン!
あぁ……しあわしぇえ……
噛むとサッパリした焼き魚の味が口の中に広がる。
今まで野菜スープしか食べてこなかったから……まさしく幸せを噛み締めるって奴だね!
「久しぶりの固形の食べ物うまぃい」
おぃしぃおぃしぃ、まじうめぇ!
後はお塩があれば完璧だったんだけどねぇ……ま、これはこれで自然の味!
「あむあむ」
たんたんと燃える炎がリズミカルに音を奏で、たぎる煙が夕暮れの空へと昇り、穏やかな夜の幕開けが迫っている。
「クォ!」
「ヒロスケも食べる?」
「クォ……」
ヒロスケは「い、いや遠慮します」と言ってはないがそんな感じの反応をした。
「遠慮してると幸せを逃すよ?貰えるもんは貰わないと」
まぁ気持ちは分からなくもないが、ゲテモノと腐りかけは美味だとテレビで言ってた気がする。
あ、ちなみにゲテモノ判定の虫は論外ね。
「しかし、これからどうするカロかね」
「うーん……どうしよ?そういや、夜になりそうなんだけど32番さんは制限時間とか聞いてる?」
「いや、全くそんな話は無かったカロね……見てはいるんだろうカロが、最悪の場合死んでも良いって思われてるんだろうカロ」
「うへぇ……」
それってどう言う状況なの……商品だよね?俺……ちゃんと綺麗に扱って!
「はぁ……貰った魔皮紙も反応ないし……」
「?、そういや、どこに魔皮紙を持ってるカロ?」
「ん?ここ」
俺は胸の谷間から魔皮紙を取り出す。
「すごいところに入れてるカロな」
いや、ね?
……無かったんだもん他に入れる場所…………
「あはは……ちなみに32番さんはどこに入れて____」
どこに入れてるか聞こうとしたその時だった。
「早くそこから離れてください!」
「え?」
少し遠くから人の声が聞こえて振り向くとフルフェイスのめっちゃごっつい装備して大きな剣を持った人が血相を変えた様子で手を振りながらこっちに来ている!
「うぉ、かっけぇ……」
何あのリ○レウスみたいな装備!
あれを見ると異世界に来た!って感じがするなぁ、しみじみ……
「ボーっとするな!こっちにこいノロマ露出狂!」
その後ろから同じ様な装備の弓を構えた口の悪い奴も出てきた。
うるさい!ノロマはともかくこんな格好したくてしてるわけじゃないんじゃ____
「伏せてろ!」
「__っ!?カロ!」
「うごぁ!?」
トカゲさんが何かを察して俺の背後から腰を抱き抱えるように飛びついてきて思いっきり顎を打った……歯と歯のぶつかりあった音が脳に響く中、まだ地面に落ち切ってない長髪金髪の俺の髪を矢が貫通して通り過ぎて行く。
「あぶな!?」
「ガァァァァァア!!!!」
「へ?」
え?
今更になって俺の身体を嫌な悪寒が走り出す。
「い、今の声って__」
おそるおそる後ろを振り返ると__
「フシュルルルルル……」
先程の矢が鼻の先に刺さっている背中に苔をはやした体長8メートル程のワニが此方を睨んでいた。
「ふええええええええええええええ!!!!?」
「クオオオオオオオオオオオ!!!!」
「あ!ヒロスケええぇ!ご主人様置いて逃げるなぁあー!!!???」
俺が悠長にそんな事を言ってる間にもさっきの人達はすぐに行動し、ワニと俺たちの間に割って入る。
「2人とも!大丈夫ですか!動けますか!」
「う、うん!」
あれ?2人は解るけどもう1人、量産型みたいな鉄の鎧に長刀の人が居た。
「……」
あ、何となく解る……こいつ無口なタイプだ。
無口な弟を持つ俺の無口センサーを舐めるなよ。
「行くよ!ショウ!ヒロユキさん!」
「……あぁ」
…………ん?
3人は武器を構えて戦闘態勢に入る。
いやいや、え?いや、でも……そんな事ある?
「何してるカロ!逃げるカロ!」
「う、うん!!!」
そう言って周りを見渡す。
「あ、あれ?」
「しまったカロ!」
だが時既に遅し……泉を囲う様に隙間なく木々が絡み合い、いつの間にか立派な木のコロシアムが出来ていた。
「何でええええ!?」
「こいつらはウッドリーワンドカロ!木に擬態した魔物カロ!」
そう言うのが居るなら最初に言って!?
「どうする!?」
「どうするもこうするもないカロ!こうなったらどちらか死ぬまでこのままカロ!!!」
「ふぇえ!?!?」
何そのアニメみたいなセリフ!?
てかまじ頑張ってみんな!!!!!!!俺の命がかかってるから!!!
いのぢが!もっだいない!!!!!!!!
「ショウ!」
「くらえ【爆矢】!」
放たれた矢は途中で矢が加速しピルクドンの足へ命中したが、ガキンと音を立てて弾かれ近くの木の壁に突き刺さる。
「チッ!そう簡単に攻撃を通してくれないか」
「いや!最初の一撃は通ってる、僕とヒロユキさんで隙を作るからまた同じとこを狙ってみて!」
「……俺が先に行く」
俺のよく知ってる名前の人は長い剣__って!太刀か!かっけぇ!日本人の心をくすぐるねぇ!
じゃなくて……すかさず太刀を構え走り、ショウと同じく足を斬りつけた。
矢と同じく太刀は鱗を傷つけるだけでダメージはないが、自分の攻撃範囲に入って来たヒロユキにターゲットは向けられる。
「……」
それを利用しピルクドンが追えるスピードで尻尾の方へと走って行く。
この瞬間、リンとショウがフリーになる。
「【炎弾】!」
「【爆矢】!」
リンは近接よりも魔法攻撃を試す事を優先してポケットから魔皮紙を取り出し魔力を流すと魔皮紙は火の玉になりピルクドンの横っ腹に当たり爆発し、先程と同じ矢は見事ピルクドンの鼻の穴に突き刺さる。
「シァャアアアアアアアア!!!??」
「効いてる!」
「よし!」
だが流石にそんな事をされればピルクドンも黙っていない。
「ガゥシャァァア!」
まるでコモドドラゴンの様に4本足を使ってドタドタと地ならしをしながら向かったのは後衛職である弓の人の場所。
「……行かせない」
だが、先程まで注意を引きつけていたヒロユキは自分が狙われていない事を確認した瞬間、太刀を槍投げのように投げた。
「シャァァア!?」
そのまま太刀はピルクドンの目を直撃、不意打ちで視力を失って感覚が狂ったのか足を絡ませ体勢を崩す。
「良くやった!【爆矢】!」
避ける準備をしていたショウは状況が変わった事を一瞬で理解し弓を構え渾身の一撃を繰り出した。
「グシャァァア!?」
「見た目通り、腹は他よりも柔らかいな」
矢は白い腹に命中し体内へと入っていった。
「おい!お前達!」
「へ!?」
「カロ?」
後ろにいた俺たちに弓の人は声をかけてくる。
「今がチャンスだが人手が足りねぇ!何か攻撃魔法は使えるか!」
ええええ!?
い、いや、魔法と言っても
「み、『魅了』しか……」
「少しだけの火しかだせないカロ」
うわ、実際に口に出すと恥ずかし。
「使えねぇ」
あー!こいつ!ショウとか言う弓使い!俺の今一番気にしてることいったな!呪われろ!
「もういい!」
無事、戦力として認められなかったようですね、はい。
「リン!このままじゃ防戦一方だ!アレを使うぞ!」
「待って!ちょっとずつだけど攻撃が効いてる!このまま同じことの繰り返しで__」
「__馬鹿野郎!そんな事してたら一回のミスで誰かが死ぬ!ここは一気に行くしかねぇ!」
そんな中、空気が変わった。
「……すぅ……はぁ……」
「ヒロユキ、さん?」
周りの気、と言うのか?気配?解らないけど、全てがヒロユキに対して吸い込まれるような感覚に陥った。
「ショウ!」
「ち!なんか解らねーがこれが失敗したら使うからな!」
ピルクドンは体勢を整えるが片目を失いヒロユキの方は見えていない。
「グシャラァァァア!!!」
「【集点】!」
ピルクドンはリンの方へ一直線に向かって行く。
「来い!」
木の壁を背にギリギリまで引きつけ避ける。
「うおりゃ!」
ピルクドンはそのままの勢いで壁に頭から突っ込み、その隙にリンは目に刺さっているヒロユキの太刀を抜き空中に投げた。
「ショウ!ヒロユキさんに!」
「任せろ!」
ショウは素早く3本矢を放つとキンッキンッと音を立てて弾かれながらヒロユキの所まで運ばれる。
「しくじるなよ!ヒロユキ!」
「……あぁ」
ヒロユキが太刀を掴み納刀し、構える。
「……来い……【集点】!」
「グシャラァァァア!!!」
ピルクドンはヒロユキに対して真っ直ぐ走っていき。
「……兄さん直伝……【満月斬り】」
一瞬でピルクドンの後ろにヒロユキが移動したと思ったらピルクドンの身体が真っ二つになり勝利を収めた。
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