第34話 みんなの実力!

 《キャンプから歩く事数時間》


 目的の川にたどり着き、【ウッドリーワンド】以外の魔物に会わないまま時間が過ぎていた。


 「ここら辺で休憩を取りましょう」  


 「……わかった」


 「おう」


 リンが指示をだして、川の近くにあった大きめの石に座る。


 周りはシーンとしていて、川の音だけが聞こえて来てこれがキャンプならリラックス出来る様な空間だったであろう。


 「……」


 だが、ここは魔物がうろついている山だ、どこかで息を潜めて狙ってるのかもしれない……なので、こうやって、休憩を適度に挟む事で体力も温存しながら歩いていた。


 「……そう言えば」


 「ん?なんでしょうか?」


 「……川を歩いてるのは水を確保するため?」


 「そうですね?」


 「……魔法で出す水は?」


 水を確保するなら魔皮紙を使えば魔力を通すだけで水が生産されるのだ、だからわざわざ水を確保しながら歩かなくても良いのでは?


 ……しかし、リンは「常識だよね?」と感じだった。


 「?、それでも良いんですけど、目の前に飲める水があるのにわざわざ魔力を消費して飲んだらいざって時に魔力が無くなる可能性がありますよ?」


 「……なるほど」


 つまり水は飲めるけどあくまで攻撃や緊急手段と言うことか……今までユキが出してくれてたから分からなかったな……


 となると。



 「……川の水は綺麗?」


 そのまま飲むわけじゃないよな?


 「実際は汚いですよ、だからこう言うのを使うんです」


 そういって30センチ程のストローを転送魔皮紙で取り寄せて渡して来た。


 「これを通して飲むと中の魔法が発動して、ろ過してくれるんです」


 コップを出して川の水をくみ、ストローを通して飲むと青く光り口の中に水が入ってきた。


 「ものすごくヤバい毒なら赤に光ってそのチューブを通らなくなるから安心ですよ」


 良くできてるな。


 「……ありがとう」


 何も知らない俺をショウが不思議そうに聞いてきた。


 「しかし、お前、そんなことも知らないなんてどこから来たんだ?」


 取り敢えず、こう言うときはこう言えとユキに言われてる。


 「……“山の中で育ったから知らない”」


 「おいおい山の中ってお前……アバレー王国出身か?」


 「……?」


 「アバレー王国の人は大きな木を改造してそこに住んでるって聞いたことあってな、俺達に外国に旅行に行く金なんて無いから行ったことないが色々と文化が違うらしい、後は魔物の事をアヤカシって言ってたとかな」


 「……へぇ」


 そんな話をしていた最中だった。


 「おっと、来たみたいだぜ」


 ショウが話を中断してすぐに弓を構えて森のしげみに矢を放つ。


 

 「さて、何が来るでしょうね…… キウルーか」


森の影から現れたのは、まるでドーベルマンに角が生えたかのような、全長約1メートルの魔物が四頭。


「小さい群れで来てるね、いくよ!」


そう言って、リンが手にしたクレイモアを振りかざして先陣を切る。


「お前らが斬り合う前に一匹は殺しておいてやるよ! 【爆矢】!」


ショウが放った矢が途中で爆発し、矢の速度が変わる。


その矢は一匹のキウルーの眉間を貫き、そのまま倒れて動かなくなった。


 「……お見事」



 「ヒロユキさんは僕を狙いに来るキウルーをお願いします!【集点】!」


 リンが魔法を発動させた瞬間キウルー達が一斉にリンへ襲いかかった。


 「……なるほど、陽動の魔法」


 普段はリンがその魔法を使って敵を引き付け、遠距離に居るショウを狙わせない作戦なんだろう。


 「……隙あり」


 俺の前に居たキウルーの一頭がリンに向いたので太刀で首を両断する。


 動物の柔らかい肉と一瞬硬い骨の感触が刀を通して手に伝わってくる……相変わらず嫌な感触だ。


 首がなくなったキウルーは血をふきだしながら倒れる。

 

 「一撃とはやりますね!負けてられない!」


 リンはクレイモアに食らいついてくる一頭を巧みな動きで振り払い、その隙間に素早く体勢を崩させた。そして、力強く武器を持ち上げ、一気に叩きつけた。


 リンの一撃を食らったキウルーは、内臓をまき散らしながら上半身と下半身の真っ二つになり、土に倒れ伏して息絶えた。その獰猛な存在も、リンの剛健な腕前に敵わない様だ。


 「残りは一頭!」


 「ガルルルル……」


 一頭はリンから一旦離れ、距離をとった……が。


「シュン!」と風を切る音と同時に、リンの背後から髪をかすって矢が飛んできて、最後の一頭を仕留めた。


「あぶない!ショウ!髪にかすったよ!?」


「この位置からだとああなるんだよ!別に怪我させてないからいいだろ!」


「まったく……」


リンはそう言いながらも笑顔を浮かべている。


それを見るだけでも、ショウとの信頼関係が強いのがわかる。二人の間には、戦いの中で培われた絆が息づいていた。


 「これが僕達の戦いかたですヒロユキさん」


 「……良かった」


 「俺の弓はすごかったろ?」


 「……うむ」


 「さて、と、このキウルー達をギルドに転送しますね」


 リンは風呂敷くらいの魔皮紙を取り出し地面に広げる。


 この魔皮紙はギルド直通の転送魔皮紙で魔物の残骸などをこの上に置くとギルドに自動的に転送されるのだ。



 「さて、日が落ちる前にもう少し進みましょう、夜は夜行性魔物が活発になりますから、なるべく日が落ちる前に次の休める場所に行っておきたいので」







 そういって三人で川をまた歩き出すのであった。






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