第19話 奴隷生活初日!

 《地下奴隷施設》


 下っぱに手枷を付けられ、地下へ……また地下へと階段を降りていく。


 え、何これ?カ○ジ?ペリカとか出てきたらどうしよ……456サイコロ作っとかないとな。


 「ほら!入れ!35番」


 押されてコケそうになるが、おっとっとでなんとか踏みとどまりその牢屋の中を見回した。


 中は真っ暗で蝋燭が壁に数個付いているだけ、その位置からして正方形の部屋なのが解る。

 

 「__っ」


 あ、あれ?涙が出てくるぞ……おかしいな、今頃学生寮で説明を受けてるくらいなのに。



 どこで狂った俺の異世界生活。




 いや、最初からか、思えば召喚されてすぐ__



 「大丈夫がー?」


 「ひゃっ!?」


 不意打ちだった。


 自分のほのぼの異世界生活が終わりを迎えているのを実感していたら、暗闇から3メートル級の巨人ゴリラが出てきた。

 

 驚きすぎて変な声出た……なんだよ「ひゃっ!?」って女かよ!心までは女にならないぞ!


 「大丈夫ど〜?」


 ゴリラが心配そうに俺を覗き込んでくる。

 

 てか顔怖!リアルゴリラじゃん!


 「だ、大丈夫です」


 「泣いでるど?」


 先程の俺の一筋の涙を見て心配してくれるゴリラさん……悪い人では無いみたい?


 「それはお前が怖いからカロ!5番!」


 もう一人、暗闇の奥からトカゲ人間が出てきた。

 あ、はぁーなるほど、これは良くある獣人ってやつか。


 「ぞんなぁ、オデが泣かしだの?」


 割りと本気でショックを受けてる?


 「あ、あの大丈夫ですよ?これはその……なんだろ、痛かったから……かな?ハハハ」


 痛かったって何に対してだよ!こんなんで騙せるわけ!


 「オデじゃない、よがっだ」


 あ、騙せた。


 「そうカロ?まぁあいつら看守は奴隷を痛め付けることで喜んでるクズ野郎カロ、大変だったカロね」


 勝手に解釈してくれた。

 別に泣いてた理由それじゃないけど。


 「あんたも運がないカロね……今日から一緒の檻で暮らす32番カロ、よろしく」


 「35番、よろじぐ」


 まだ数字になれてないけどこの中では数字で呼ぶのが礼儀みたいなのでそれに従おう。


 「よろしくお願いします、5番さん32番さん」


 「カロ達と他にも二人居て__お、噂をすれば」


 ちょうどその時、檻が開けられ2人入ってきた。


 1人は人間に近い獣人で、赤い髪、ミディアムショートの猫耳獣人……猫耳キターーーーーー!


 もう1人は毛がもふもふの立派なライオンの顔と鬣がある筋骨隆々の勇ましい獣人だ。


 ライオンの方は所々血が流れていて毛についている……え?何してたの?縄張り争い?


 「またあいつらと喧嘩したカロ?」


 冗談で言ったけど縄張り争いと変わらない事してそう……


 「私が悪いんです、33番さんが私のせいでこんなに……」


 「ガッハッハ、俺は昔から喧嘩が好きでね、ちょっとしたくなったから手を出しただけだ!気にするな」


 ライオンさんは笑いながら気さくに猫耳少女の肩を叩いてる。

 これはあれだな、見え見えだけど心配させまいと思ってるんだろう


 「そんなこと一度も聞いたことが__」


 「ガッハッハ!それより何だ?そこに居るのは新しい____な!?!?」


 「?」


 ライオンさんは俺の顔を見て石のように固まった……どうしたんだろ?


 と、とりあえず挨拶かな?


 「よろしくお願いします、35番です」


 俺が声をかけると魔法に掛けられたように石になってたライオンさんがネジが巻かれたおもちゃみたいに動き出した。


 「よよよよろしく頼むぞ」


 ……改めて見るとゴリラの人といい勝負だな、顔の怖さ。


 「よ、よろしくお願いします……35番さん」


 対してこっちの猫耳少女はかわいいなぁ、まるでアニメの中に居るみたいだ、猫耳少女は実写でもかわいいってハッキリわかんだね。


 「うん、よろしくお願いします」


 えーっと番号は……ライオンさんが33番で猫耳ちゃんが34番ね把握。


 お互いに布切れ被っただけみたいな服だから数字が見えている……でっかい名札があるようなもんだな。


 整理すると、俺が35番。

 ゴリラの方が5番。

 黒いトカゲさんが32番。

 ライオンさんが33番。

 猫耳さんが34番。


 って事ね。


 「この4人がこの牢屋の全員カロ、それにしても、美人さんカロねぇ」


 親戚のおじさんみたいな事言うな。


 トカゲさんは手を顎に当てて俺を爪先から頭までじっくり見てから言う……あ、オッパイ2度見した。


 別に気にするわけじゃ無いけど俺中身男の雄っぱいだぞ、むしろ何かすまん……。


 「ありがとうございます」


 「敬語なんていいカロ、これから一緒の牢屋で過ごすんだから家族みたいなもんカロ」


 ……と言うか、これから一緒の“牢屋”って何それめっちゃパワーワードなんだけど……犯罪者くらいしか聞かないだろそのセリフ。


 「あの……同じ女の子同士、何かあったら聞いてくださいね」


 ほほーん、耳をピコピコさせながら言ってきた。


 萌えるじゃないか!

 今まで女性恐怖症のせいでこんな事感じるなんて無かったからなんか新鮮だなぁ……てか、獣人にも発症するのかな?


 しかし、“同じ女の子同士”って言葉、心に刺さるなぁ……騙してるみたいで……


 「うん、さっそくだけどトイレとかってどうしてる?」


 「トイレはあの角にあります」


 あの角ってなんか腰までのベニヤ板が1枚立ってる奥かな?あーなるほどね、そう言うパターンか。


 「な、なるほど」


 「大丈夫ですよ、すぐに慣れます……裸なんて看守にはこれからいっぱい見られると思いますしお風呂も鉄格子の前で裸になって並んでて水魔法で水をかけられる感じなので」


 ま、まじか……思ったよりハードだな。

 

 ちなみに俺は全然裸見られても良いから気にしないけどね!

 元の世界とかだと「裸で語り合おうぜ!」とか言って男友達と温泉行ったりしてたし。


 さっきも言ったが、むしろ俺が男ですまん!騙して悪いな!お前らが見てるのは男の裸だ!身体は女だけど!

 

 「……」


 うおい!ライオンさん!?なんでそんなに鼻血たらしてる!?


 「33番さん、大丈夫ですか?」


 「ちちちちちがうぞ!やましい事など考えてない!これは看守に顔面を殴られたからだ!」


 い、いや、俺何も言ってないよ!?


 てかそう言う事!?


 マジで中身男でごめん……俺の胸で良ければ全然揉んで良いから……雄っぱい。


 「33番は疲れてるカロね、1度寝て回復するカロ」


 「そう言えばトイレはあるけど寝る所とかは?」


 「寝るところは無いからみんなで身体を寄せあって寝るカロ」


 なるほど、寒さはみんなの力で凌ぐって奴か、なんかそんな動物居なかったっけな?……あ、ペンギンか。


 「えーっと、じゃぁ35番と34番は真ん中カロ、で俺は34番の隣その隣に5番、で35番の背中を33番が暖めるカロ」


 うん、数字で何言ってるか分からないけど要約すると体のでかいゴリラさんとライオンさんは一番外で真ん中に俺たち3人で寝てサンドイッチって事だな……川の字の強化版みたいな……


 「おでも……眠かった」


 「お、俺は少し汚れてるからな、少し身体を拭いてから行く」


 「いつも気にしてなかったカロに?」


 「ううううるさい、まったく……」


 ライオンさんはそう言ってトイレのベニヤ板にかかってるボロ雑巾みたいなのを手に取った……あ、それ便器拭くやつじゃないんだ。


 「35番さん、行きましょう」


 行きましょうって言ったって部屋の角の蝋燭の光がない暗闇の床だけどね……


 俺は後ろにライオンさんの1人分空けて横になると続けて猫耳さんが隣に来て__


 「フフ、今まで女の子居なかったから少し大きな妹が出来たみたいで嬉しいです」


 そう言って横になり俺の太ももに尻尾を絡み付けてきた……あ、尻尾何気にあったかい。


 「もっとくっつけてください、寒いです」


 言われた通りに身体をくっつけると周りが少し肌寒いのもあってか直に体温を感じた……あったかいなぁ。


 ライオンさんや他の人たちも定位置について横になってる……背中もライオンさんの体温で温かい。


 「……」


 みんな目を閉じて静寂が訪れる。




 「……」


 

 うぅ……こんなはずじゃ無かったのに……



 __________




 ______



 __




 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る