第5話 王国会議!
時は遡る______
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「またグリードの代表は変わったのかい」
“王国会議”__国の王が5年に1度だけ【神島】にある建物の中に集合し、行われる会議だ。
この世界の国は
魔法研究・技術に長けている【グリード王国】
人口・設備建設に長けている【ミクラル王国】
富・物資に長けている【アバレー王国】
の3つで構成されている。
どの国もそれぞれの得意分野を活かした動きで勢力としては互角で数百年前から停戦協定を結び、この王国会議での話し合いで解決するようにしていた。
その時の王の護衛は国の代表騎士1人だけつけて良いことになっている。
「しかし、今回のグリード代表騎士さんは、まだ歳の若いヒヨっ子じゃないか、そんなんで大丈夫なのかい?そっちの国は」
ミクラル王国の代表騎士【ナオミ】
性別は女だが全体的に筋肉質、そして顔には大きな傷があり普通の成人男性よりも2回りほど大きな身体を持ち、その巨体と筋肉を活かした大剣を使う騎士だ。
「ご心配頂き光栄です、ナオミ殿、私も今の階級については身に余るものだと思っておりますので」
ナオミの挑発に対して紳士的に返しているのはグリード代表騎士の【キール】
長い白髪に細い筋肉に美形の顔立ち。
彼はつい最近グリード代表騎士に選ばれ初めて王国会議の護衛として来ていた。
「ちっ……あたしゃ、心配なんてしてないんだがね」
王国会議会場の建物は崖の上にある白く高い筒状になっていて窓もなく、扉しかない。
その扉より先には王しか入れないので、何かあった時にすぐに対応できるように必然的に3国の代表騎士は扉の前に立つことになる。
「はい、全て分かっていての返答です」
「っ!!……ここでアンタと戦って力の差を見せてやろうか」
「それは良い考えですね……しかし、やられるのはアナタだ」
「あ?」
戦争がないからと言って代表騎士達が仲が良い、と言うわけではない……
「ふん、国の代表騎士が聞いて呆れるですぞ、挑発をする方もそれを買う方も心に余裕がない証拠ですぞな」
もう少しで剣をお互いに抜きそうになって居る所に水を差したのはアバレー王国の代表騎士【ムラサメ】
彼は白い仮面とフードで顔を隠し、鎧も見えない様に黒いローブを着て全身を隠している。
歳も武器も何もかもが分からない、唯一分かるのは声が男と言うだけだが、それもブラフなのかもしれない。
「黙りな、あんたの方がよっぽど騎士らしくない格好をしてるよ、代表騎士として恥ずかしくないのかい?」
「これだから低脳は困るですぞ」
「あ?」
ムラサメは決して煽る訳ではなく心の底から純粋に言っているので余計にタチが悪かった。
「一つ、教えてやるですぞ、自分の武器や装備を敵にずーっと見せるなど弱点をゆっくり探してくださいと言ってるような物……それを知ってる私からすれば“自分の頭の悪さ”を披露している様に見えるですぞ」
「そうかい……ならあたしの弱点も見つけたはずだよね?じゃぁ攻撃させてもらうかね」
「事実を言われて怒るのでは図星ですぞか?10年前はあんなに可愛かったお嬢さんが」
「それ以上口を開いたら本気で殺すぞ」
「出来るものならやってみろですぞ」
「……」
3人の殺意が最高潮に達した時、扉が開いた。
それは会議が終わった事を意味する。
各国の騎士、キールを含めて3人が素早く扉の前で膝をつく。
「…………」
「お待ちしておりました、カバルト王よ」
扉の中から最初に出て来たのはグリード国王……彼の顔色は決して良いとは言えなかった。
「キール、すぐに馬車を準備しろ」
「解りました」
キールは魔物の皮で作られた【魔皮紙】を取り出して魔力を流す。
すると、魔皮紙に魔法陣が浮き出て、数分で空から羽を生やした白い【ユニコーン】が馬車を引いて降りて来た。
「どうぞ、カバルト王よ」
「うむ……」
カバルト王が先に乗るのを確認してキールも馬車に乗るとユニコーンはいななきを上げて翼を広げて空へ馬車を引きながら羽ばたいていった。
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____《馬車内》____
「……」
「……」
内部にはグリード最新鋭の魔法が施されており揺れや外の音をシャットダウンし快適な空間になっている。
「……キールよ」
「はい」
沈黙していた王が口を開いた。
「お前には先に王国会議の決定を言っておくことがある」
「はい」
「我が国で【勇者】を召喚することになった」
「【勇者】ですか?」
キールは勇者を召喚すると言われピンと来ていない。
何故なら勇者とは伝説にある作り話や古い本に書かれている架空の人物の話だと思っているからだ。
「先に言っておくが勇者は実在していた人物だ、今は我らが平和になり、その事実は消えて行ったが、我ら国王で決めた数々の規定にはこの様な物もある……“勇者を召喚する際は各国同意の許、それぞれの国で召喚する”と」
こんな時にふざけた事を言う王ではない。
キールは勇者と言う者が実在していた驚きを内心に隠しつつ話を進める。
「しかし、何故、勇者を召喚する事になったのですか?」
「魔王の封印が近々解かれると言う情報が入った」
「魔王……」
勇者がいれば魔王が居る。
何と無く理解できるのだが……やはりイマイチ実感が湧かない。
「そうだ、『女神』が作った魔物達を束ねる王……それが【魔王】だ」
「しかし、私達が子供の頃から言われていた魔王や勇者が実在したとなれば魔王は倒されたはずでは」
「その話の真実は違う、我ら人間が魔王の影に怯えず生きていくための嘘だ……実際には勇者は魔王を倒しきれずに封印していた」
「なるほど……その封印が解かれる、と?……ならば勇者など召喚せずに我らが国をあげて魔王と__」
「__愚か者!」
キールの発言を王は遮る。
「現状、我らは新種の魔物にさえ手こずり、何人もの騎士が死んでいる、そんな中、魔王1人でも我らを滅ぼせるほどの力を持っていると言われておる相手に我らが勝てるわけが無かろう!」
「ぐ……」
そう言われて悔しい気持ちがあるが事実だ。
新種の魔物は大小様々だが必ずと言って良いほど死人が出る……
その魔物達の王である相手はどれほど強大か予想はできた。
「ならば我らは魔王と同等か、それ以上の力を持った【勇者】を召喚し、魔王討伐に向かわせるしか方法は無いのだ!!」
「……ではカバルト王よ、私はどう動きましょう」
「勇者を召喚するのには3つ」
「はい」
「1つは召喚の為の魔法陣だが、これは国の王なら誰もが知っている」
「はい」
勇者を召喚する“規定がある”と言う事はどこかに勇者召喚の資料があると言う事だ。
先ほども言った様に王だけ知り得る場所にあるのだろう。
「2つ目は【神の石】……これは我が城にあるな?」
「はい、【神の石】は我が国の最重要機密事項……今も尚研究員達が解読している事でしょう」
「うむ」
神の石は黒く半透明で綺麗な球体の不思議な石だ。
何をしても砕けず、自然に出来たとしては形が整いすぎている石。
何百年も前にグリード王国が掘り当てそれからずっと研究している。
「あれは勇者を召喚する為に使う物だったのですか?」
「うむ……」
王は神の石の使い道を知っていた。
だが、その事を黙っていたのは“勇者が実在していた”という事実を隠していたかったのだろう。
「そして、3つ目……だが……」
「?」
3つ目を言う王に違和感を覚えたが次の言葉でその真意が理解できた。
「人間の生贄……1000人だ」
「っ!?!?!?!?!?」
流石にそれにはキールは動揺を隠せなかった。
「王よ!それは!」
「焦るでない、生け贄には罪人を使うつもりだ」
「しかし!」
だがキールを無視してさらに王は衝撃の事を口にする。
「今回、王国会議で決まった事は我が国で他国の勇者召喚も受け持つ事になった」
「!!!!!!!???????」
「なので我々が用意する生贄は……3000人」
たまらずキールは立ち上がる。
「我が王よ!例え罪人を使うとしても多く見積もったとして2000人が限度!残り1000人など到底たりませぬ!なぜ我が国が!!!」
「落ち着けキール!ワシを誰だと思って発言している!」
「っ!!…………すいません……つい取り乱してしまいました、ですが……」
「気にするでない、お前の言ってることもわかる……」
「……」
「残りの1000人は奴隷と……志願者を使おうと思う」
「志願者?」
「そう、神を信仰している教会があるのは知っているな?」
「はい」
「【勇者】とはいわば【神の子】だ、各々の町や村の教会に情報を流し信仰者を集わせ志願者を回収しろ」
「……了解……しました」
キールの立場上、心の中では様々な感情や懸念があったが全てを抑え付け了承せざるを得なかった…………
だが後々、この了承こそがキール自身は全てを失う事になるとは______
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