第3章 殺人ギルド血影編
◯下剋上システム
第68話 暗空の予感
―1—
私の予感は正しかった。
彼——
彼自身は隠しているつもりなのだろうけど、明らかに周囲とは一線を画した異彩な雰囲気を放っていた。
特殊な環境で育った私以外には気がついていなかったみたいだけれど。
好奇心が抑えられなかった私は彼に声を掛けたのだが、上手くはぐらかされてしまった。
今思えば、あんなに大胆な行動に出るなんて私らしくなかったと思う。
彼の普段の学生生活に目を向けると、座学と実技の両方とも何の問題もなくそつなくこなしているという印象が強い。
そのため、あまり目立つようなタイプではない。
その割には、彼の周りには学年の中心人物となった
不思議と人を惹きつける魅力があるのだろう。
そういう私も神楽坂くんに興味が湧いて仕方がないという1人なのだが。
転機が訪れたのはつい最近。
彼の片鱗を目の当たりにしたのだ。
ソロ序列戦の決勝戦の直後、馬場生徒会長から生徒会への勧誘を受けていた私は学院に入学した目的を果たすために生徒会入りを決断した。
何の運命なのか神楽坂くんも生徒会に入ることが決まっていた。
私たちが勧誘された理由は、反異能力者ギルドの襲撃に対抗するための戦力の補強としてだった。
事前情報があったとはいえ、敵の強さは想像の遥か格上。
私と神楽坂くんは、災害級とも言われていた黒いドラゴン・ガインと交えることになった。
全力を尽くしたけれど、私の力では歯が立たなかった。
神楽坂くんもそれを感じ取ったのか、戦闘の最中にギアを上げた。
頑なに隠していた力を解放したのだ。
彼が私の影の異能力を使ったあの瞬間、私の身体に電撃が走った。
やっぱり、私の勘は間違っていなかったんだと。
コピー能力。
私はその異能力を見るのは初めてではない。
私が追っている
彼は異能力者育成学院を序列1位で卒業している。
そして、私から何もかも奪った男だ。
神楽坂くんならあの憎き
いいえ、超えるかもしれない。
人に頼るという手段を選ぶことには多少の抵抗があったけれど、私1人の力ではどうしようもないということも理解している。
目的のためなら人の手も借りる。
だから、今日神楽坂くんから誘いを受けたときは心が躍った。
指定された学院の校門前にも早く着いてしまった。
それなのに、彼は火野さんと一緒だった。
よりにもよって火の魔剣・
魔剣に宿る不死鳥がいないと何もできない無力な少女。
私の人生には常に魔剣が付き纏う。私自身、呪われているのではないのかと思うほどに。
彼も、私から全てを奪った天魔咲夜も魔剣の所有者だった。
今でも魔剣を見ると吐き気を覚える。
憎くて、憎くて頭がどうにかなってしまいそうだ。
それでも必死に心を落ち着けようと、冷静であろうと自分の影を見つめる。
どこまでも深く広がる私の影を。
「暗空さんだったの?」
私の正面に立っていた火野さんが鋭い視線を向けてきた。
これまでの人生で何度も見てきた敵意剥き出しの目だ。
「何がですか?」
相手のペースに乗っかる必要は無い。
あくまで私は私らしく。
「とぼけないで。不死鳥を返して」
「フフッ」
人生は思うようにはいかないもの。
だからこそ面白い。
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