第66話 魔眼解放と領域展開
―1—
「俺と
「はい!」
馬場会長と暗空がシューターとハバネロの後を追って行ったため、校舎前には
対するは反異能力者ギルドの黒きドラゴン・ガインと魔法少女・ウィズの2人だ。
まだ、融合技の反動で異能力を発動できそうにないが、なんとか体が動かせるまでには回復した。
滝壺先輩に頼りきりになってしまうのは申し訳ないけれど、ウィズの注意を引くくらいのことはできるだろう。
「
橋場先輩に投げ飛ばされて倒れていたガインだったが、シューターの登場により目の色が変わった。
口を大きく開き、高火力なエネルギーを吐き出す。
背後には校舎。避ける訳にはいかない。
「
「
「
迎え撃つのは榊原先輩、天童先輩、橋場先輩の3人。それぞれが中級レベル以上の攻撃技を繰り出す。
3種類の技が交ざり合い、火炎砲と衝突。
あれだけオレや暗空が苦しんだ一撃を難なく相殺してしまった。
一方のガインは、火炎砲が相殺されたとみるや正面から突撃してきた。
攻撃が防がれたとはいえ、体格差では圧倒的に
強靭な爪や鋭い牙は、普通の人間からしたらかなりの脅威だ。
「神楽坂くん、私たちもいきますよ」
「はい」
オレと滝壺先輩の相手はウィズだ。
シューターとハバネロから喝を入れられたウィズは、俯いてぶつぶつと何やら呟いていた。
その声は次第に大きくなる。
「魔王と契約した我が右眼。今、封印を解き放て! 魔眼解放ッ!」
右眼を覆っていた眼帯に手をかけるウィズ。
ゆっくりとその眼帯が外されていく。
閉じていた右眼を開くと、サファイアのように青く輝く綺麗な瞳が現れた。
と、そのとき、オレと滝壺先輩の体にある異変が起きる。
「体が、動かない」
「私の右眼は相手の自由を奪う悪魔の眼。そのまま大人しく攻撃が当たる瞬間を見てるといいよ☆
ウィズが持つ杖の先端から炎を纏った蝶が放たれる。
先ほどよりも動きが速い。
優雅に宙を舞う蝶が目の前まで迫るが、体が動かないので防御の態勢を取ることができない。
まるで石像にでもなったかのようだ。
「ぐあああっ」
爆発の衝撃に耐えきれず声が漏れる。
攻撃は1度きりではない。2撃、3撃と、宙を舞う蝶の数だけ攻撃を食らい続ける。さながらサンドバッグのようだ。
眼球だけを動かし、隣に立つ滝壺先輩に目をやると、艶のある青髪が焼け焦げ、衣服がボロボロになっていた。
今この瞬間もウィズの杖からは火蝶が飛び出し続けている。
終わりの見えない攻撃に気が遠くなる。
異能力さえ使えれば。
とはいえ、ウィズの魔眼の能力が継続している以上どうすることもできない。
何か打開策はないものか。
「あまり調子に乗るな。今からここは俺の領域となる。
榊原先輩が両手を前に出し、力を込める。
すると、橋場先輩と肉弾戦を繰り広げていたガインが膝をついた。
学院の校舎と同等の大きさのガイン。そのガインが膝をついた姿は山が沈んだようにも見えた。
榊原先輩が発動させた領域の展開。
それは異能力を極めた者が最後に行き着く最終奥義とも呼べる一撃だ。
自身の異能力を広範囲に影響させることができると言われている『領域』は無敵の必殺技になる。
この若さで領域の展開が使えるとは。
榊原先輩が異能力者育成学院で序列3位であることも頷ける。
校舎前一帯の重力が強まったことで、榊原先輩の前に立つガインや魔眼を解放させているウィズが地面に倒れて行動不能になった。
重力の圧に逆らえず地面に杖を伸ばすことで精一杯といった様子のウィズ。
身動きの取れなかったオレと滝壺先輩もウィズの魔眼の効力が解けたのか自由になった。
「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!」
最後の抵抗なのかガインが雄叫びを上げて体を起こす。
想像を絶する負荷がかかっているはずだが、ガインの中にある何かがガイン自身を突き動かしている。
「ガイン、これが最後の攻撃だ!」
ウィズが親指の腹を噛み千切る。
そして、指から流れ出た血を地面に垂らす。
次の瞬間、いつの間に地面に描かれていた魔法陣が白い輝きを放ち浮かび上がった。浮かび上がった魔法陣はガインの体へ吸い込まれていく。
「
「GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!」
正気を失ったガインが両腕を振り下ろす。
「
咄嗟に前に出た橋場先輩が拳を突き上げるが、物凄い勢いで弾き飛ばされてしまう。
激しい音と共に校舎の壁にめり込み、意識を失ってしまった。
「
天童先輩がガインの顔面目掛けて雷撃を放つがまるで効いていない。
「
ガインは2枚の羽を広げて加速すると、そのまま捨て身で突っ込んできた。
ここにいるメンバーでこの攻撃を防げる者はいない。
「ぐおおおおおおお!!」
榊原先輩が領域展開の威力を上げる。
その効果もあってガインを地面に引きずり下ろすことができた。
しかし、全く勢いが落ちていない。
ガインは地面を抉りながら校舎に向かって一直線に突き進んでくる。
「
滝壺先輩が波動砲をガインの頭に向かって放つが、減速する様子は無い。
オレがもう1回融合技を放つことができれば。
拳を握り締めて真っ直ぐガインを見つめる。
どれだけ強力な異能力を持っていたとしてもここぞというタイミングで使えないのであれば意味がない。
何もできない自分に腹が立つ。
オレはまた何も守れなかった。
また。
「えっ?」
怒りの感情がふつふつと湧き上がってきたそのとき、紫の髪の少女と黒髪の男がオレたちの前に足を進めた。
紫龍と溝端は、目の前にガインが迫っているというのにまるで散歩でもするかのようにリラックスしている。
そのあり得ない光景にオレの怒りの感情もどこかに引っ込んでしまった。
「異能力による力の底上げかしら? まあ、悪い線ではないけれど、制御しきれないほどの力を手に入れてこの程度とはね。
「そうだな。俺が一撃で
溝端が黄金に煌めく槍を空に向かって掲げると、天が2つに裂け、一筋の光が降り注いだ。
それはこの世に降り立った神を祝福しているかのような優しい光だった。
「
溝端がガインに狙いを定めて槍を投げ放つと、激しい突風と共に雷のような轟音が鳴り響いた。
槍が直撃したガインは後方に吹き飛ばされ、ドラゴンの姿から人間の――少年の姿に戻って動かなくなった。
「ウィズ! ガイン!」
反異能力者ギルドのリーダーであるシューターが突然校舎前に姿を現した。
馬場会長との戦いはどうなったのだろうか。
シューターは、姿を2回ほど消しながらウィズとガインの体に触れた後、跡形もなく消えてしまった。
「事は済んだみたいだな」
溝端が手元に戻ってきた
紫龍も黙ってその後に続く。
こうして、まだいくつも謎を抱えたままだが、なんとか反異能力者ギルドの襲撃を
負傷者多数、本校舎並びに第二校舎損壊という決して軽くはない被害状況だったが、死者が出なかっただけマシだろう。
【◯反異能力者ギルド襲撃】END。
NEXT→【○犯人】
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