第40話 呼び出しからの誘い
―1—
ソロ序列戦も全ての試合を消化し、閉会式へと移行する。
大会の上位7名がステージで表彰されるらしく、準々決勝まで勝ち残った
そのままステージの近くで火野のことを見るつもりなのか、はたまた異能力の反動でどこかで寝ているのか。恐らく後者のような気がする。
大会の順位についてだが、優勝した
つまり、試合時間の長い者の方が高い順位になる仕組みだ。
このことから準々決勝で1番試合時間が短かった
「このメンバーが並ぶとなんだか同じ学年のはずなのに遠い存在のように感じるね」
ステージでは、
「西城、まだ学生生活も序盤だ。今は実力が離れているように感じるかもしれないが、ここからの頑張り次第でいくらでもその差を埋めることができると思うぞ。まあ、初戦で負けたオレが言えたことじゃないけどな」
「ううん、凄いよ神楽坂くんは。もうこれからのことを考えてる。僕も神楽坂くんを見習って前向きに頑張ってみるよ」
西城が爽やかな笑顔を見せた。
今回結果が出なかった者は次の大会で結果を残せばいい。そのための努力をまた今日から始めるだけだ。
ステージ上で閉会式の流れを説明していた鞘師先生が表彰台に上がった。
どうやら閉会式が始まるようだ。
と、ここでポケットに入れておいたスマホが振動した。予定より少し遅かったな。
「悪い西城、少し席を空ける。閉会式が終わっても戻って来なかったら先に帰っててもらって構わない」
「うん、わかったよ」
西城に許可を取り、会場の外に出る。
ドームの周りを数分歩き、別の入り口から再び中へ。人気の無い薄暗い通路を進み、エレベーターに乗り込む。
エレベーターには開閉のボタンしか存在せず、閉のボタンを押したら自然と上の階に向かって動き出した。
「着いたか」
エレベーターが開くと、黒い扉が1枚あるだけの殺風景な場所に出た。
扉の前で立ち止まり、スマホの画面に目を落とす。
【扉の鍵は閉まっていない。着いたら勝手に入って来い】
スマホに届いたメッセージには短くそう書かれていた。
オレは一応ノックを3回してからドアノブに手をかけた。
まず目に飛び込んできたのは、ステージ一面が見下ろせるガラス張りの窓だ。
ステージ脇の観戦用特大モニターには、大会の順位が表示されていた。
1位・
2位・
3位・
4位・
5位・
6位・
7位・
「悪いな。人払いをするのに時間がかかった」
見るからに高級そうな黒革のソファーに体を預けていた生徒会長、
ソファーの脇に配置されているサイドテーブルの上にパソコンが開きっ放しで置いてあることから今まで何か作業をしていたことが窺える。
「それはいいんですけど、会長から連絡が来るなんて驚きました」
早朝、学院のウェブサイトを通じてオレのスマホにメッセージが届いた。
【今日のソロ序列戦決勝が終わってから直接会って話がしたい】
そんな文章と共にここの場所、VIPルームまでの行き方が書かれていた。
「
「あの言い方からして誰も大会最終日だとは思いませんよ」
大会が終わって数日経った落ち着いた頃を想像していた。
それか生徒会長としてのリップサービスくらいにしか考えてなかった。
「今日を逃すとどうも予定が合いそうになくてな。話せるときに話してしまった方がいいと思ったんだ」
「その口振りからしてただ世間話をするためにオレを呼んだ訳じゃなさそうですね」
「ああ、その通りだ」
馬場が軽く頷いてからもう1つの黒革のソファーを指差した。
座れという意味だろう。
特に逆らう理由も無いのでソファーに腰を下ろした。
「
「オレがですか?」
学院の決まりで確か生徒会は序列7位以内の生徒しか入ることができないとされている。
1学年で序列7位以内に入っている生徒は当然いない。
ソロ序列戦で優勝した暗空でさえ60位くらいだろう。
学校の決まりを無視してまでオレを生徒会に招き入れるメリットとはなんだろうか。
「ああ、悪い話じゃないと思うんだが。どうだ?」
「今すぐにというのはちょっと。少し考える時間が欲しいです」
「それもそうだな」
有難い話ではあるがすぐに答えを出すわけにはいかない。
生徒会に入る上でオレ自身にメリットとなる部分とデメリットになる部分を精査する必要がある。
「会長、生徒会に入るには序列7位以内である必要があると記憶していたのですが、その点はどうなるんですか?」
「その点に関しては問題ない。俺の推薦ということにする。すでに特別枠として迎え入れる方向で調整も進められている」
会長は未来視の異能力だったな。
オレが生徒会に入る未来でも見えているのだろうか。それとも話を持ち掛ける側として最低限準備はしているとアピールするためか。
「前例の無いことをして一部の生徒から反感を買う心配はありませんか?」
「それはあるかもしれないな。ただ、学校に限らずルールを変えるときに反対されることは避けられないものだ。反感を恐れていつまでも現状維持していては、失う物は少ないかもしれないが得る物も少ない」
馬場がサイドテーブルに置いてあったパソコンの画面をこちらに向けてきた。
「学院のウェブサイトだ。これはソロ序列戦が終わってついさっき更新されたページだ」
画面には、ソロ序列戦の結果から1学年の序列が確定した旨が書かれていた。
トップページに載っているのは、序列上位7人だけだ。
1位・
2位・
3位・
4位・
5位・
6位・
7位・
「神楽坂、お前は下剋上システムで
馬場自身も1年生のときに行われたソロ序列戦で優勝し、その後数多くの生徒から下剋上システムを挑まれたらしい。
そういえば土浦も似たようなことを言っていたな。
「急ぐ必要は無い。と、言いたいところだが俺にも事情があってな。2週間後の前期中間試験最終日。それまでに答えを聞かせほしい」
「わかりました」
VIPルームを出る頃には閉会式も終わっていた。
第1章 異能力者育成学院、ソロ序列戦編完結。
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