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それなのに琴葉は全く気にも留めていない。

雄大の不満は募るばかりだ。


「琴葉、わかってる?」


「うん?」


「俺今すごく嫉妬してるんだけど。」


「えっ?ええっ?何で?」


訳がわからずどうしようとオロオロし出す琴葉がまたいじらしくてたまらない。


「何でって、あーもう、くそっ。琴葉可愛いな!」


雄大は伸ばしかけていた手でそのまま琴葉の腰を引き寄せると、思いきりぎゅううっっと抱きしめた。

そしてそのまま可愛い可愛いと頭を撫でる。

嫉妬されているのか甘やかされているのかわからずに、琴葉はされるがまま疑問顔だ。


「で、俺たちに合ったライフスタイルって、琴葉はどう考えてるの?」


ひととおり琴葉を堪能して落ち着きを取り戻した雄大が、穏やかに問う。


「雄くんは世界をまたにかける設計士でしょ。出張もよくあるし大変だよね。私はそれを支えていきたい。minamiは続けたいけど、今の働き方だと将来子どもができた時に困る気がするんだよね。子育てしながら働くことも視野にいれていかないと。だから京都のパン屋さんみたいなスタイルに変えていこうかなって思うんだけど、どうかな?…って、雄くん聞いてる?」


琴葉が身ぶり手振りを添えて話をしているのに雄大は手で口許を覆って俯いているので、琴葉は不思議に思って覗きこんだ。

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