第百十九回 十三日の金曜日の出来事。


 ――その日も、僕らは行進した。


 向かう先は比較的、最寄りの駅から近い。それは『最寄りの駅』という名前の最寄りの駅だ。……ほんと、ややこしくていけねえ。まあ、とにかく目的地には向かっている。



 目的地には、つまり目的がある。……って、当たり前か。カラオケは土曜日だから、その前に今日は金曜日。十三日と付くが、なるべく気にしないことにしている。それが証拠にたこ焼きも買ってみる。それから食べてみる。三人仲良く美味しかった。


 ここでも対象は、僕と可奈かな千佳ちか

 ――星野ほしの三姉妹参上! と、心の中で叫びながら、インターホンを押す。


 この三人の内一人。……それは僕だ。僕を前に出し、二人は少し下がる。ここは公営住宅の九棟、二〇二号室といえば……ドアが開く玄関の。そう、僕たちはここに、バンプラを作りに訪れた。または手伝いにも訪れたのだ、未来みらいさんの。



 ――ニッコリ「上がって」と、川合かわい未来さんは部屋まで案内する。四十八分の一スケールUGユージィのバンプラを作成する場へと。そこには!


 そこには、もう先客がいた。


瑞希みずき先生」と、僕らは言う。


 ともあれ『ながら族』? TV画面から目を離さずコントローラーを操作、ドカッと女の子座りを維持したまま、格ゲーにその身を投じていながらも……。


「やあ君たち、一足お先にお邪魔してるよ」と、声をかけてくれた。



 ……あっ、そうだった。


 ここに来たの、千佳は初めてだ。未来さんことはよく知っているみたいだけど、バンプラのことは……訊くの忘れていた。興味あるかどうか。おおっ、やっちまったぜ。


 するとするとすると! 興味津々! 穴が開くほど、じっと見ている、見入っている。


「あの、僕もしていいかな? 格ゲー」と千佳は言う。――おおっ、そっちかい!



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