第六十七回 レッツ、私鉄沿線。


 ――つまり今、僕たちは『私の鉄道』を利用させてもらっている。


 何もかも新鮮。

 初めてのこと。


 ……お友達と電車、登下校ではなく今は休日。同じ目的で、同じ場所に向かって、空いている座席に横並び。車窓から走る街並み、&ウキウキするハート。そしてダンシングするハート。でもでも、浪速なにわのマルチメディアの中心部よりかは、遥かに距離は短い。


 僅か駅四つ……されど、「ねえねえ、女子三人もいて会話の一つもないの?」と、


 可奈かなは言う。少々ヒステリック? しびれを切らしている様子にも伺える。――そこで僕は発言する。我ながら御尤もの内容のつもり。それはそれは、それはだね、「可奈、今は電車の中。会話にお花が咲いたら周りの人たちにご迷惑だよ」と、いった内容だ。


「そ、そうね……」


 可奈は納得しそうな感じ……でも、「千佳ちかはどう思う?」

 という具合の急転換。まさかの無茶ぶり。……ほらほら、固まった。と、思いきや、


「いいねえ、会話。僕にもできそうかな?」


 と、遠い目。その一言より先は進まないようだ。完全に、途切れた。「もう、あなたたちは」と、今の僕たちに刺さるのだろうか? 全く違うことを考えている。


 僕も、何となく千佳も。……きっと訳ありのようだ。という直感を道連れにする。


 僕は、マリさんの言葉が脳内でリピートされていた。何かといえば、言うまでもなく前回の未来みらいさんのことについてだ。――可奈は何と言おうが、僕の実力を買って。


 舞台は『喫茶・海里マリン』の、もちろん店内。カウンター越し、未来さんが背を向け奥へ奥へと移動、遠く離れる。マリさんは「クスッ」と、……前回の会話を引き継ぐ。


「ないない。例えばね、瑞希みずき先生が未来君のお家で一緒に『格ゲー』をしてたように、ほんと純粋。どうしても、一緒に組みたいのね、『四十八分の一スケールのUGユージィ』……コンクールとか関係ないみたい。――と、いうことで(ジャーン! と効果音入り)、お友達になってあげてね、梨花りかちゃん」と、いうことが、おおよそ三十分前にあったのだ。



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