第六十五回 ……夏の音色、五線譜を駆け巡る。


 ――そして、駆け抜ける青春。


 僕は憧れる。古本の漫画で見た風景だけど、そんな世界に憧れている。

 夢見る少女。メルヘンチック。……そうであっても、


 笑われても、

 ――それが以前からの憧れだから、いいじゃないか!



 乙女チックな内容と思いきや……いきなりの脱線。僕の語ることは、


「勝ったら教えてよね、今度こそ」


 反応は颯爽たる強敵、強者とも言える。その証拠に「僕に勝てるかな? こう見えてもキング・キングス三冠王だよ。梨花りかちゃんが負けたら、僕に何をしてくれるのかな?」


 強者または強敵=未来みらいさん。僕は夏の音色・風鈴で挑戦的な態度となった。



 ――話題はもちろん『千里せんりプラモデルコンクール』の件。


 優勝者を巡る戦いに、僕は未来さんに宣戦布告をした。退けず譲れない戦い。避けては通れないルート。可奈かな千佳ちかが見守る? 中を、「やってみなくちゃわからないよ」と更に追い打ちをかけるように、僕は強気の発言をする。(……ちょっと、くどいかな?)


 お互いが出展していることも、お互いが優勝を目指していることも、

 もちろん知っている。知った上で、この会話が存在している。プラモデルでも『バンプラ対決』――これが伝統だと、未来さんは語る、語っていた。僕は純粋にバンプラが大好き、そのアニメも僕は大好き。『バンプラ愛』だけは、誰にも負けないつもりだ。


 三冠王にも、負けはしない。僕は負けはしない。


 でも、それでも、「じゃあ、梨花ちゃんが勝ったら、今度は僕と一緒に『四十八分の一スケールのUGユージィ』を組もう。色々と教えてあげるからね。……で、梨花ちゃんが負けて僕が勝ったら、そうだな、一緒に『四十八分の一スケールのUG』を組むこと。いいね」


 と、未来さんは言う。……あれれ? これって、勝っても負けても同じだよね?



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