第十八回 ――なだけに末広がり。または十八番。


 そうサブタイトルでうたいながらも、う~む。

 このような状況でありながら、どのような意味なのだろう? と、訊きたい。



 ただ言えることは、『初めてのチュウ』


 唇が塞がっているから心の叫び。……それが増幅装置に触れ、スピーカーの如く文面に拡散してゆく。オブラートに包みながらも、きっと本日の夜に、エピソードとして更新することだろう。拡散なだけに末広がり。または十八番な物語に文章を乗せて表現する。



 ――唇が離れた。


 それでも余韻というもの。僕のものではないような、何ともいえないフワッとした感触が唇に残る。可奈かなちゃんもまた、僕の唇の感触が残っているのだろうか? はたまた別の理由なのかはわからないが、心成しかウットリしているように見えた。それでもって「あわわわ」という表現のもと、僕の思考回路は真っ白な火花を上げながら、ショートの道程を迅速に歩んでゆく。にもかくにも、それをも凝縮で――『僕のファーストキッスを奪われちゃった』と、その思いが、ブロークンした僕の思考回路を支配した。



『――Mさん瑞希先生のために、

 残していた僕の唇なのに、こんな形になるなんて……』


 と、この言葉が、

 脳裏をかすめたのもあって、


「ひどいよお」と、音声化された。


「ひどい? じゃあ、梨花りかちゃんはどうなの? 今の今まで、わたしの気持ちに全然気づいてくれなかったじゃない。梨花ちゃんはいつも、Mさんばっかりで……」


 って、あらあら、可奈ちゃんまで泣いちゃった。「あ、あの……」と、僕の言葉は詰まる。只々ただただ――『どうしよう』と、公園の真ん中で、そう思うばかりだった。



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