第4話 入学試験

「はい! できましたよ、我ながら会心の出来です!」


 腰に両腕を当て、えっへん! と自慢げに言うミル。

 まずは身なりを整えよう! という事になったんだが、急遽やる事が出来てしまい、切りに行くのが面倒なのでずるずると伸ばしていた所


「あら、ならミルに切ってもらうといいわ、彼女プロ並みよ? 私もお願いしているのよ」


 というシロナの一言があり、頼む事にしたんだが……。


「まじで上手いな……これが俺の本来のハンサム顔か」


 鏡で自分の顔を改めて確認する。以前の無造作に生えていた髪は綺麗に整えてあり、見違える姿になっていた。 

 

「確かにクロト様はイケメンですが、ご自分で言ってしまう所が流石ですね!」

「だろ? 褒めてつかわすぞピンクメイドよ」

「ははぁ……! 有り難きお言葉! お嬢様もきっと驚かれますよ」

「ほほほ、よいよい」

「あんた達何してるの?」


 ミルとふざけていると、制服姿のシロナが部屋に入ってきており、呆れた声で言った。

 そして俺の姿をまじまじと見つめてくる。


「あら、来た時は髪がボサボサでよく見えなかったけど、こうして見ると意外と顔がいいのね」

「意外とは余計だが……顔で選ばれなくてよかったぜ、しかしお前の言う通り、すごいメイドだな」

「でしょう? また伸びたら切ってもらうといいわ。さて……今日は入学試験の日ね」


 そう、騎士にも入学試験が必要なのである。

 お嬢様お付きの騎士といえど、誰でも入れると言うわけではないらしい。


「本来はもう試験は終わっているのだけれど、特別にクロトだけ受けさせてもらえるようになったわ」

「さすが金持ちだな」

「実技はクロトなら問題ないわね、後は筆記もあるのだけど、大丈夫なの……? 騎士に任命した私が言うのも何だけど、ほら……」


 第3区画出の俺のことを心配してくれているらしい。


「心配するな、基本の事は昔に学んでいる。細かい所は借りた本を全て読んで暗記済みだ」

「暗記って……あれだけの本を全部暗記したの?!」


 机の下には、シロナに借りた大量の本が重ねてあり、魔法関連から戦術、歴史まで様々な種類がそこにあった。急遽やることが出来たというのはこの事だ。


「ああ、3日も寝ずにやればこのくらい余裕だろ、そのせいで髪切るのも遅れたけどな」

「3日ってあんた……体調は大丈夫なの?」

「問題ない」


 強がっている訳ではなく、本当に3日程度なら何も支障はない。真面目に覚えようとすれば、一度見れば大体は覚える、筆記試験に関しても恐らく大丈夫だろう。


「勉強もできるなんて、なんか意外だわ」

「俺も第3で生きるのに必要ないと昔から思ってたんだが、やむを得ない事情がな……」


 勉学もジジイの地獄の特訓の一つだったからな……ハハハ……ハハ。


「お嬢様! クロト様の目が遠く!」

「クロト?! 大丈夫?! あんたやっぱり寝てないから!」

「おぉ……すまん、昔思い出すとちょっとな」

「どれだけ強烈な過去だったのよ……まぁいいわ、私は試験に一緒に行けないけど、頑張ってねクロト」

「そうなのか、まぁとっとと終わらせてくるわ」


 そう言ってミルとシロナは部屋から出て行った。

 準備を整えて俺も部屋から出る、そのまま玄関まで行くと、シロナの父、オーガスがメイド2人と何か話していた。

 

「このまま通り過ぎるのも面倒な小言を言われそうだし、挨拶くらいはするか……」


 オーガスに声をかけようと近づくと、こちらに気づいたらしく、オーガスの顔がこちらを向く。

 すると突然幽霊でも見たかのように表情をこわばらせた。


「お、お前は……まさか……いや……!?」

「何口パクパクしてんだ? 餌でも欲しいのか?」

「何を馬鹿げたことを! ん? なんだクロトか……見た目はまぁ整ったようだな」


 何だ今の驚き様は……?すぐに気を取り直した様だが、心の底から驚愕した表情だったな……。

 

「今日が試験の日だったな、わざわざお前だけ急遽受けさせる事にしたんだ、せいぜい落ちないように頑張ることだな」

「ああ」


 そう言うとオーガスは、メイド二人と奥の通路へ進んで行った。

 去り際にまさかな……と何か呟く声が聞こえた気がしたが……。

 

「何だったんだ一体……?」


 気にしてもしょうがないし、俺はそのまま屋敷を出て、入口前に止めてある馬車に乗り学院まで進んで行った。




 学院はアーツの外にあるらしい。

 外といっても、アーツからそこまで離れているわけではなかった。

 何故わざわざ外に作ったかと言うと、他国から入学してくる奴もいる上、魔法を使用する点で迷惑が掛からない様外に出来たそうだ。

 魔物が気になる所だが、結界が常時張っているらしく安全とのこと。

 そういう事情もあってのことか、学院の周りは辺り一面草原と大地であった。


 やっと到着すると、入口にある門の前に立ち、学院を見上げるが、学院というより城というイメージが強い。

 全体的に白を基調としており、周りも豊かな自然に囲まれている。

 ここ(学院)も馬鹿みたいに広いな、住む世界が違うという事を改めて実感する。


「さて……こっからどうすればいいだ?」


 普通は案内とかいるもんじゃないのか? 勝手に入っていいものかと考えていると、アーチ形の門の向こう側から何やら人の気配を感じた。

 

「ごめんなさい! 遅れました! 今開けますね!」


 女性の声が聞こえてくる、恐らく学院の者だろう。

 声と同時に門が開いていき、完全に開くとそこには金髪のシニヨンに、眼鏡をした女性がそこには立っていた。


「お待たせ……しました! ようこそ! シャングリラ魔法学院へ! 本日試験を担当……致します、ミノリ・イブリアントと申します。 クロト・ムラマサ君……で間違いないかな?」


 息も絶え絶えに自己紹介する、先生らしき女性。

 

「あ、ああ、そうだが、大丈夫か?」

「大丈夫……大丈夫! 遅れちゃってごめんなさい! さぁまずは筆記からね、早速学院内に行きましょうか!」


 走ってきて疲れているだろうに、慌ただしく学院に戻っていくミノリ。この人大丈夫か……? と思っていると。

 

「きゃ!?」


 何かに躓いたらしく、盛大にコケ始めようとしてしていた。

 

「何やってんだか……」


 それを事前に直感で察知していた俺は、ミノリが倒れようとしている所を、地面に身体を擦り付けて、滑り込み抱え上げる。


「……ったく、これも試験の一環なのか?」


 呆気にとられた顔をしているミノリが、正気に戻った様で喋りだす。


「え!? あ、ありがとう……」


 もじもじと目をそらすミノリ、そのまま俺の手を離れ地面に両足を着く。


「あの距離から間に合うんですね……」

「ただ走って滑りこんだだけさ」

「……なかなかできることではないと思いますが」

「別に、ってこのやり取りよくやるな」

「??? とりあえず! 流石ミス・シュヴァリエールの騎士ですね、この調子なら実技も問題ないでしょう、期待してるわ!」

「だといいがな」

「謙遜しちゃってー! よし、いきましょ」


 そう言って再度学園に向かうミノリ、ちなみにまたコケそうになると感じたんだが、もう知らん。


 

 学院に入り、階段を上り教室へと案内される。教室内も広く50人程度は座れると思われる長机が綺麗に並んでいる、窓を見ると辺りが一望できるようになっていた。


「はい、じゃあ席について、場所はどこでもいいですよ」


 そう言われ俺は適当に窓際の席に着く。

 俺が席に着くとミノリが問題用紙を置いて、前方にある教卓の位置に戻った。


「それでは開始しますね、制限時間は1時間です。頑張ってね」


 俺は問題用紙に目を通す。

 ふむ……この程度なら問題なさそうだ、運よく暗記していた部分と一致していた所が多かったのが救いだった、ささっと終わらせて外でも眺めるか。





「はい~では終了ですー、テスト回収しますね、さて次は実技ですよ~すぐ下の中庭で行いますので、そちらまでお願いしますね」

「あんたが担当じゃないのか?」

「私は筆記担当ですので、実技担当はバレット先生が行いますよ」

「バレット?」

「はい、ドラゴンも一人で倒したこともあるという立派な先生です!」


 それ教師やめて別の職に就いた方がよかったのでは?


「中庭に行けば、きっとすぐわかると思いますよ」

「そうか、ありがとな」

 

 いってらっしゃ~いと手を振るミノリを背に教室から出る。そのまま階段を降り中庭まで向かった。

  

 中庭に到着すると、がっしりとした体格に、所々獅子の顔が彫ってある銀の鎧を纏い、左目に眼帯を付けている茶髪のおっさんが仁王立ちしながら空を眺めていた。その隣には大剣が地面に刺さっている、おそらくあれがバレットだろう。

 ミノリの言う通りすぐわかる……というか、例え中庭に生徒が沢山居てもすぐに見つけられるだろう。一人しかいないというのに凄い威圧感を放っている。

 俺はバレットと思われる人物に向かって歩き始めると、こちらに気づいたのか、空を眺めていた眼帯のおっさんが急にニヤッっと笑いながら、こちらにずかずかと歩いてくる。

 何でそんな笑顔なんだ……? と思った瞬間。俺の直感が後ろに飛べと囁く。


 直感に従い、咄嗟に後方にバックステップをし距離を取ると、眼帯のおっさんが急にこちらに向かって飛び出し殴りかかってきた。ズゴンと鈍い音を立てて、地面が揺れる。先ほどまで俺がいた位置には大きな穴が空いていた。


「おいおい、試験とはいえ、いきなり殴りかかって来ることはないだろう? 避けれなかったらどうするんだ」

「おぉ! やはり坊主がクロトか! 待っておったぞ~」

「そういうあんたがバレットか、てか質問に答えろよ」

「すまんすまん、儂がこの距離まで相手に気づかない事なんてなかったもんで、つい興奮してな、お前さん特殊な気配と歩き方しておるの」

「だからって急に殴るな、地面に穴空いてるぞ」

「綺麗に避けといて何を言う、そしてお前さん言葉遣いが悪いなぁ」

「うっせえ、生まれつきだ」

「儂は細かい事を気にせんが、実力と見合った態度でないなら、きっちり教育してやるぞ?」

「普通に中庭に歩いてに来て、普通に喋ってるつもりなんだがな」

「お前さんの普通は少しズレとるな……まぁいい早速試験を始めるとしよう。魔法を使っても構わん、儂に有効な一撃を入れれば合格だ」

「それは分かったが……今までの入学試験は全部そうだったのか?」


 と言うのも、先ほどのバレットの動きを見てみるに、ドラゴンを倒したという話も真実味を帯びてくる。

 一撃入れることで合格とするなら、狭き門になるだろう。騎士隊長クラスでやっと合格できるレベルじゃないか……?


「いいや? お前さんだけの特別試験だが?」

「ふっざけんな!!??」


 横暴だ。センセーに言ってやろー!! ……こいつが先生だわ。


「その態度も今後儂は許してやるというんだ、今回は剣も使わんしそれくらいやってみろ」

「ったく」


 動きは見た目の割に素早いが、素手同士なら一撃を入れるくらいならそう苦労はしないだろう。魔法を使ってくることを考慮しても問題なさそうだ。


「まぁいい、学院の実力ってのも見ておきたいしな」

「何をぶつぶつ言っておる、さぁ早く来い」


 どうやらあちらから攻めてくるという事はないらしい、試験の為か余裕なのかはわからないが、付け入らせてもらおう。


「そうか、なら遠慮なく行かせてもらうぜ」


 俺は一気に詰め寄りバレットの正面まで肉薄する、その勢いのまま地面を抉りながら顔面を目掛けて蹴りを放つ。

 バレットは抉られた地面の土で視界を遮られながらも、しっかり蹴りを両腕でガードしていたが、その隙に俺は死角に回り込み素早く掌打を放つ。


「終わりだ」

「何を! まだまだよ~グランドエッジ!」


 バレットが叫ぶと、突如俺の足元から鋭く尖った地面が飛び出してくる。

 咄嗟に攻撃を中断し、前方に飛び込み回避し距離を取った。

 にやりと笑いながらバレットはこちらを向いて話し始める。


「おーあれを避けるとはやるのぅ、先ほどの攻撃の仕方を見ても、お前さん実戦経験がなかなかあるようじゃな」

「まさかいきなり無詠唱で魔法使ってくるとは流石に思ってなかったぜ?」


 オーガスのおっさんもそうだったが、ある程度できる奴は無詠唱で撃ってくると考えていいだろう。

 楽に終わるかと思ったが、やはりそう簡単に合格できるわけじゃなさそうだ。


「騎士になるのも大変なんだな」

「お前さんならすぐに上に行けるぞ?」

「悪いがあまり目立ちたくなくてな」


 第3区画の事や魔法の事もある。いずれバレる事かもしれないが、自分から目立ちにいくような真似をわざわざする必要もない。

 それに目立てば目立つほど、それなりの代価を支払うことになる。

 俺は魔法を使えないというハンデもあるし油断していてくれた方がやりやすい。注目を集め強いと思われれば対策もされやすくなる……

 力を得たとして無暗に見せびらかすのは愚か者がする事だ。


「なにやら色々とあるようじゃの」

「悪いな、あんたには大丈夫だと思うが、色々と手を見せる前に終わらせるつもりなんでな、


 バレットはそれを聞くと無言で身構える。


「瞬迅」


 そう言うと俺は、予備動作なしにバレットの側面に接近、姿勢を低くし両足を払う。


「ぬうぅ?!」


 咄嗟の出来事にバレットは反応できなかった様で、巨体が宙に舞う。その隙に俺は素早くバレットの腹部に掌を当て力を籠め、ふと何かを思い出したかのように、一呼吸置き技を発動しようとする……。

 しかしその隙を見逃さず、倒れながらバレットはその巨腕で俺の腕を掴み、そのまま俺は地面に叩きつけられる。


「っいってぇ……」


 受け身は取ったがダメージは多少はある。直ぐ起き上がることも出たが、俺はおっさんの腕をはがし大の字になってその場で倒れた。

 バレットはゆっくりと立ち上がり俺を見下ろし、不思議そうな顔で口を開いた。


「お前さん、何故最後間を置いた、何をしようとしたかわからんがあの殺気、そのまま儂を倒せた筈だろう」

「買い被りすぎだ、おっさんが上手く対処できた、それだけだよ」

「素直じゃないのぅ」

「それで? 俺は不合格か?」

「まさか、ここまで出来て不合格なら、今年は誰も騎士にはなれんよ」


 ガハハと笑いながら手を伸ばしてくるバレット。俺はその手を取りつつ立ちあがる。


「クロトか、覚えておこう」

「おっさんに覚えられてもな……」

「よく言うわ! しかしクロトよ、魔法を最後まで使わなかったのは見事だが、一応どのくらいか見ておかなければならんのでな、ほら、適当に一発攻撃魔法を撃ってみよ」

「……うてねぇ」

「ん?? 何だ声の小さい」

「俺は魔法が使えないんだよ」

「……それは珍し……難儀じゃのう」

「ほっとけ」

「ま、まぁ実技は見させてもらった! 結果は後ほど報告させてもらおう」

「そうか、実技は合格でいいんだよな?」

「あー……まぁそうなんじゃがまさか魔法が使えない騎士とは思わんかったわ」

「問題があるか?」

「普通ならアウトじゃな、じゃが実力は見させてもらったんでな、検討しよう」

「そうか」

「ご苦労じゃったな、結果は夜にはシュヴァリエール家に伝えよう」

「わかった、またな眼帯のおっさん」

「せめて先生かバレットと呼ばんか、まぁ……いいじゃろう」


 俺はバレットと別れ、迎えが来ている門まで向かい、そのまま行きと同じ馬車に乗ってシュバリエール家に戻った。




 

 ふぅ……と息をつくバレット、その時、突如鎧の腹部が砕け散る。そこは丁度クロトに掌を当てられた位置だった。

 

「あれは……儂より強いのぅ……」


 鎧を見ながらバレットは呟く。

 全く速さに反応できなかった、気づいたら既に宙を舞っていた。

 わざと一呼吸置いて見えたが、それがなければ鎧ごと内部を粉砕されていただろう。

 捨て身覚悟で魔法を放てばダメージを負わせる事はできたが、もはや試験ではなく殺し合いになってしまう。剣を持っていたとしてもあの速さで対応できたかどうか……。

 しかし、何故あそこで手を抜いた? 哀れみか?それとも強者の驕りか……


「悪いがあまり目立ちたくなくてな」


 そう奴は言っておったな……。

 この試験は中庭で行われていた。それもクロト一人だけだ、勿論それを学院内で見ていた他の先生はいただろう。

 まさか儂の面子を? いやいや、そんな事を気に掛ける様な奴には見えんかった。だとすると……


「生意気な事をしおって」


 そう笑いながらバレットは大剣を抜き取り学院の中へと戻って行った。

 


 *


「あーだるかった」

「そんなに大変だったの??」


 シュバリエール家に戻り、風呂や食事を済ませた後、俺は自室でシロナと今日のことを話してた。


「ドラゴン倒したおっさんと戦えって言われたんだぜ?」

「あーバレット先生の事ね、って試験そんな難しかったかしら?」

「魔法まで無詠唱で撃ってきやがって、地面に叩きつけれられたわ」

「あら、武闘派の先生と聞いていたのだけれど、第2等級でもあるのね、流石のクロトでも先生には敵わない……か」

「俺を何だと思ってるんだよ、ドラゴンより強いってか」

「やりかねないわね」

「魔法も使えない無能に何を言う」

「まぁいいわ、他は大丈夫だったの?」

「筆記もなんとかなったな、丁度覚えていた所でよかったぜ」

「出そうな範囲の本を貸してあげた私に感謝する事ね」


 そう、意外にもこのお嬢様は頭もいいときた、ドジだがな。


「なんか失礼な事思ってないかしら?」

「イイエナンニモ」


 と話していると、コンコンコンと部屋のドアが叩かれる。


「失礼します、学院からご連絡が入りましたので、ご報告させていただきます」

「合否の連絡ね、ありがとう」

「いえいえ、とんでもございません! しかし、合否の連絡があれば聞いておいてと頼まれましたが、私が先にお聞きしてよかったのですか?」

「クロト専属メイドだし、別に落ちるなんで考えてないから構わないわ」

「当然だな」

「何なのその自信は……」

「左様でしたか、では発表させていだきます。 クロト様の判定は……ギリギリ合格だそうです!」

「よかった……ってギリギリなの?」

「はい、先生方が仰るに、筆記はまずますで、実技も問題なさそうですが、やはり魔法がひっかかったみたいですねー、差し引きギリギリになったみたいです」

「負けたのに寛大な判定でよかったわね、お父様にお力を借りずに済んだわ」

「へいへい、よかったですよかったですっと」

「でも魔法がやはりひっかかったのね……考えても仕方ないっか! とりあえずクロト、おめでとう! これで学院に行けるわね!」

「おめでとうございます、クロト様」

「おう、ナイトクロトって呼んでくれ」

「なんか嫌ね……」

「私は好みですけど? 夜のクロト様って感じですね!」


 キャキャと一人だけテンションが上がっているミル。

 

「ミルはいつも楽しそうね、さて、今日は疲れたでしょう、そろそろ寝ましょうか」

「ああ、そうだな」


 おやすみなさい~と二人が部屋から出ていく。

 試験の疲れか、3日の徹夜が効いたのか、俺はその日久しぶりに 熟睡することが出来た。






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る