米について

@kinoenoki

第1話

うちの実家は農家だ。

戦前から続く由緒正しい(?)東北の農家に生まれたわたしは、小さな頃は家の米が苦手だった。

学校の給食は食べられるのに、家のご飯は気持ち悪くなってしまう。

そんなわたしに、母は苦労したと思う。ごはんひとつとっても、少しでもいいからと刺身醤油用の小さな皿にご飯を盛り、ふりかけをかけるとかいっそのこと餅のようにしてしまうとか。食べられるものがあってもそればかりとなるとわたしが飽きてたべなくなってしまうことを心配して心を砕いてくれた。

成長するにつれて好き嫌いもなくさなり、なんでも美味しくいただけるようになった今は

母への感謝で一杯である。


大学までは親元から通ったわたしは、母の料理がすきだった。だけれど、東北の村気質の濃く残る片田舎から脱出したいとその思いだけで都会への就職を決めたのだった。

親元を離れた一人暮らしで食生活が乱れるのに時間はかからなかった。簡単にできるからと教えてもらった料理も、洗い物が嫌であまりできていない。一人暮らしの生活は母への感謝と尊敬を濃くするばかりである。そんなわたしが唯一きちんと摂取しているのは昔は嫌いだった実家の米だ。

今年も視界一杯に広がる稲穂を刈り終えたところだと電話できいた。

今年も新米の季節がやってくる。実家の新米を家族自慢とともに周囲の人に配る奴がいたらそれはわたしかもしれない。


米離れが進むなかであるが、みなさんにも美味しい新米の季節に、ぜひ食べてもらいたい。

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