第45話:バカなカップル×2で中山家の知能指数が暴落
「……えーと、詩雨、俺今凄く珍妙なことを耳にした気がするんだが」
以前詩雨が俺に吐いた台詞を、今度は俺が口にした。
「ルーシーとは今日、っていうか数時間前に出会ったばかりだろ?」
俺は、弟思いが過ぎて呼吸が荒くなっている詩日さんの手を、ちゃぶ台の下でそっと握った。
「確かにそうよ、テル。でも、私はシウを見て——」
「ルーシー、俺は詩雨と話してる」
ルーシーはムッとした顔をしたが、そんなことはどうでもいい。
「そ、そりゃぼくも最初はビックリしたし、女の子に抱きしめられたりした経験がなかったから混乱したけど、ウチでルーシーとずっと話をしてみて、その真っ直ぐさがその……いいなって思って」
「真っ直ぐさ? 話は聞いたよ、この美少女は輝くんだと思って詩雨に飛びついたらしいじゃないか。そんな勘違いを好意と捉えるつもり?」
剣呑な声で詩日さんが問うと、
「もちろん、あれは私の失態でした、ウタカお姉様。でも私が幼い頃から大好きで、十年以上顔も見ずに温めてきたこの愛は、本物のテルではなくシウを選びました。要するに『テル・コウサカ』という虚像に、私は想いを募らせていたんです。もういっそ、本物の『テル・コウサカ』の見た目や実際のパーソナリティは虚像でありどうでもいいもので、私はシウ・ナカヤマという実像に一目惚れしてしまったと言っても過言ではありません」
「んー、なるほどね……」
納得する詩日さんを尻目に、俺はどうでもよかったんかい! と突っ込みたい俺がいた。
「輝くん、さっきは話が飛躍しすぎだときみは言ったが、案外そうでもなさそうだね。英会話、頑張らないと」
「そ、そうですね……」
なんかもう俺だけスロー再生されてて残り三名が早送り、つまり俺の思考の先を行っている感がハンパない……ついていくのに精一杯だ。
「ぼくとルーシーのことは置いといて、輝くんが知らせたいことって何かな?」
とか言ってたら来ました! 今度は俺と詩日さんのカミングアウト・タイム!!
詩雨を動揺させずに、ちゃんと言葉を選んで伝え——
「ああ、私と輝くんはバカップルを目指すことになったんだ」
ギャーーーーー!!! 詩日さん! 直球過ぎるしあっさり言い過ぎ!!
「え? じゃあ輝くんと姉さんも……? バカップルってよく分からないけど、輝くん、どういうこと?」
「えーと、はい、我々も先刻駅前で交際を開始した次第で……」
「ええええええ?!」
「おまえがそこまで驚くな詩雨! おまえら二人の方がよっぽどサプライズだよ!!」
「おお、ここにはカップルが二組、つまりダブルデートというやつか」
「姉さん?!」
「おめでとうございます! 素敵です、ウタカお姉様!」
あーあーあーもううるせーよおまえら全員!!
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