第19話:【雨の守護者、或いは我が罪状を謳う声】

 太陽は黒雲を慈しむ。其れは日光として雨雲と共存する。

 雨雲、しかし光の射さぬ場所において過去、傷を負い、

 滴り落ちる日光、ただ照らすことに腐心し。


 大地に突き刺さる水滴、雨雲は沈黙、沈黙、ただ沈黙に尽くし、

 対して日光、案ずるばかりの日々に不可視の出口を希求。

 太陽の祈り、雨雲は浮遊し、同胞・派閥に忌避。

 痛みよりも孤独を。閉ざした精神の領域で充足のふり。

 其れは雨雲の危険思想。


 そして。


 雨雲は邂逅した。日光ではない光、空に輝く別の光と。

 其の光、黒雲の色彩を残したまま、雨雲に優しく。

 日光は赤みを帯びて。

 雨雲は生の定義を再度確認した。

 ほろほろと歓びの涙は雨となって降り注ぐ。

 対して日光、此の雨粒を更に強く照らす。

 Gratitude, 即ち奉謝ほうしゃ、まだ見ぬ新しい光に送る。

「嗚呼、有り難し」、と痛烈に。

 しかれども、言の葉は無音。


 太陽、雨雲の守護者を、静謐さを以て共に業火の円盤を取り囲んだ。

 繋がりを、同じ縄を、同じ時を、貪るが如く手に手にし、

 それでも日光、感謝の念と某かを伝えることが困難の極みで存り、

 深夜、深更、鏡の中の己に問いかけ続けていたその時。


 嗚呼、失態。


 あまりにも浅はかな、唾棄すべき失態。

 雨雲の守護者、或いは其れは絆。友と呼び合うことすら無意義な。

 に対し、日光は誤った光、失態においてかの守護者に狼藉。

 太陽の核、詫びをと思慮を巡らせ、されど日光は届かず。


 雄弁に垂れ流し続けるこの活字の群れすら本意ではない。

 日光、太陽の核を握りしめ此ら感情を素描しようとただ必死に。

 

 日光は時の軸に関わらず、雨雲を照らす光に敬意、頭を垂らし。

 

 無音のこの白の中で、


 雨雲の守護者、


 貴方に、


 この恣意的な言葉が、


 せめて正しい形状で届くことを祈りながら、ただただ。


 永劫祈り続ける。

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