23編

私は大人になりたくなかった。

自分の未来を想像したくなかった。

お父様とお母様が年を取るのも

嫌だったし、何より自分が将来

どんな姿になっているかなんて

考えたくも無かった。

学歴も大して無い、夢も無い、

有るのは有り余るお金だけ。

私は自分の未来を見るのが怖いのだ。


モンスターと戦うようになって、

改めて実感させられた。

平和な日常はいつまでも

続くことは無いのだと。

皆、戦いを通して成長している。

皆、平穏な日々を

取り戻すために先を見据えてる。


でも、私だけはいつも皆から

取り残されているような気分だった。

「中級ボス達も倒したし、

少し宿に泊まって

ゆっくりしようよー。」

「連日の戦いで疲れたし、

少しは休むとするか。」

「私ももうクタクタ。

しばらくは休みたい。

じゃあ2,3日はそれぞれ休暇を取ろうか。

外に出る時はくれぐれも

モンスターに気をつけてね。」


私にとってチャンスだった。

集団ではなく、個別での行動に

なったことで私はある行動を

実行しようと決めていた。


「麗華ちゃんもゆっくり休んでねー!」

「はいはい。じゃあさよなら。」

私にとってそのさよならの言葉は

しばしの別れの挨拶を意味していた。


「ふー。この2,3日で

すっかり体も休めたなぁ。

そろそろ出発の時かな。

皆に声を掛けようっと。」

「胡桃ちゃん、準備OKだよー!」

「俺も大分休めたな。」


そこに麗華の姿は無かった。

「あれ?麗華は?」

「私は見てないなー。」

「俺も見てないぞ。」

(私も姿を見ていない。

そういえば最近の麗華、

何だか悩んだりしてたな…。まさか!)

「皆、麗華の部屋を探して!

居なかったら、街中を探すよ!」

「胡桃ちゃん?急にどうしたの?」

「そうだぞ。そんな血相変えて

まるで麗華が居なくなった

みたいじゃないか。」

「そのまさかよ!」


麗華の部屋にも街中を探しても

麗華の姿はどこにも無かった。

「麗華が居なくなるなんて…。

まさか異次元の扉が開いたっていうの?

でも、開く条件は

限られてるはずなのに…。」

「そうだな…。麗華1人だけで

行動してるとなるとかなり危険だぞ。」


「…。もしかして、私達が最初に

異次元の扉を開いた時みたいに

明らかにレベルの差がある

弱いモンスターが逃げ出したのを

見計らって、過去か未来に飛んだとか?」

「美春!それだ!

でも、麗華は過去と未来の

どっちに行ったんだ?」

「それなら、未来だと思う。

未来に居た時の麗華は

様子がおかしい事が多かったから。

何かに悩んでいてもしかして自分で

解決しようとしてるんじゃないかな。」

「じゃあ未来の世界に

麗華と同じ方法で行くか。」

「麗華ちゃん、

何事も無ければ良いけど…。」


(麗華は何に

悩んでいたんだろう…。

未来の世界に居た時は

必ず様子がおかしかった。

相当深い悩みなのかな。

私達が口出しして良いものか…。)


そんな事を考えながら、私達は再び

未来へと向かうのであった。

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