21編

麗華の提案は衝撃的だった。

私が最も耳にしたくない言葉であった。


「私がモンスターに殺られて死んだら、

賭けではあるけど現在に飛べるんじゃない?」

「麗華ちゃん…。それ本気で言ってるの?」

「そうだ。幾らキーパーソンの

お前が死んで異次元の扉が開くとしても、

過去か現在どっちに

飛ばされるか分かんないんだぞ。」

「私も反対。

また麗華が死んでいく様なんて

見たくない。」


しかし、麗華は覚悟を決めていた。

「それ以外に方法は無いじゃない。

それに私が死んだとしても

過去か現在に飛ばされれば、

また復活するし、最悪美春の蘇生を使えば

良いじゃない。

過去か現在のどちらかに

飛ばされるのは2分の1だけど、

決して少ない確率ではないわ。」

麗華の言うことに私達はぐうの音も出なかった。


「分かったよ。麗華がそこまで言うなら…。

受け入れるしかないよね。

でも、麗華こんな無茶なこと

買って出てくれて本当にありがとう。」

「お礼なら無事に現在に

辿り着いてからでいいわよ。

じゃあちょこっと

モンスターに殺られてくるわ。」


そう言って麗華は今の私達では到底叶わない

モンスターが居るフィールドに突っ込んで行った。

そして、見事に大敗し死んでしまったのである。


「異次元の扉が開くぞ!突っ込め!」

雷太の掛け声と同時に私達は現在に辿り着く

事を祈りつつ異次元の扉に入っていった。

次に目を開けた時は異次元の世界を渡った

後だった。そこに広がっていたのは平和だった

頃の見慣れた私達の街だった。


「やったー!現在に戻ってこれたよ!」

「見事博打は成功だったな。」

「それより麗華は!?」

「居るわよここに。無事に成功したみたいね。」

心配されていた麗華の安否も無事であった。


「私の心配より、さっさと現在の中級ボスを

倒しに行きましょう。現在の中級ボスの情報は?」

「えーと。属性は…。火・水・風・土の4つの

属性!?これじゃあ幾らキーパーソンの

私でも活躍できるかめちゃくちゃ

不安なんだけど…。」

「4つの属性を持ってるって事はそれぞれの

属性に弱点もあるって事だろ?

まだ分かんないぞ。」

「確かにそうだけど…。過去や未来の中級ボス

よりもかなり厄介そうだね。とりあえず

向かうしかないか。」


大きな不安を残しつつも、私達は現在の

中級ボスであるオールパーパスドラゴンの

巣窟へと向かうのであった。

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