「1つ上の現実」で何年か前に「異世界転生」なる新ジャンルが生まれていたようです
@HasumiChouji
異世界(1)
学校に向かう途中に居眠り運転のトラックに轢き逃げされ、異世界に転生してから1年が過ぎた。(トラックの運転手が居眠りしてた事と、そのまま逃亡してた事は、この世界に転生させてくれた神様から得た情報だ)
女戦士のリーガン。
魔女のディーリア。
巫女のサマラ。(注:ふたなり疑惑あり)
エルフの精霊使いエスター。
少女忍者のチャーリィ。
俺は、彼女達とパーティーを組んで、「魔王の中の魔王」と呼ばれていた魔物達の王を倒し、魔物達の軍勢の人間界侵攻を食い止めた。
「ねぇ、お兄ちゃん。これからどうするの?」
王都から延びる街道で、チャーリィは、そう聞いた。
「考えてない……。でも、平和になったら、勇者って用済みなんだろ? でも、俺、元の世界に戻る気は無いし……」
「じゃあ、みんなで一緒に……」
その時、目の前に奇妙なモノが現われた。
『ここで、何をしておられるのですか? 御家族の元に戻りましょう……。まだ、こちらの世界では、貴方の体は、完全には死んでおりませんぞ。貴方のお姉様が、貴方の事を心配しておいでです』
「えっ?」
それは、白い和服を来た婆さんだった。いや、何かおかしい。和服にしか見えないのに、妙に動き易そうな服。しかも、普通の和服じゃないのに、見覚えが……あ、昔、TVで見た「お遍路さん」の着てた服にそっくりだ……。
それと、もう1つ。あの着物の着方は何か違和感が有る……。和服は袷の左が前の着方なんてしない筈……いや、有るとすれば……しかも白って……。
「だ……誰だ、お前は? アンデッドか?」
『ここは私の見た所、修羅の世界ですぞ……。修羅の世界の本質は「争い」と「媚び諂い」……』
「はぁ?」
『この世界では、あらゆる行為が次の争いを産む種になります。更なる争いを望んでやった事だけでなく、平穏や平和を望んで行なった事も……。この世界に居る限り、貴方は戦い続ける運命……』
「ふざけるな‼ 俺は、この世界に平和をもたらしたんだ‼ 魔王を倒してな‼」
『では、この世界での使命を終えたのなら、元の世界にお戻りなさい』
「やだ‼ 俺は元の世界の連中よりも、こっちの世界の人達と心が通じ合ったんだ‼ 俺の今の『家族』は……父さんや母さんや姉さんじゃないッ‼」
『言った筈です。この世界の本質は「争い」と「媚び諂い」だと。その者達は、貴方に……貴方の「力」に媚び諂っておるだけ。貴方より強い者が現われれば、貴方は用済みとなります……。貴方の心の目で、その者達の真の姿を御覧なさい』
「えっ?」
そう言われて仲間達を見ると、そこに居たのは……。
「我が神の御名において命じる‼ 去れ‼ 邪悪なる者よ‼」
だが、サマラの叫びが幻覚を打ち破ってくれた……。
「あれは……一体……?」
「判りません。でも、聞いた事が有ります。私達が倒した『魔王の中の魔王』と魔界の覇権を巡って争った結果、敗れて封印された他の魔王達の中に『亡者を統べる者』と呼ばれていた者が居たと……。そして、その配下には精神操作能力を持つアンデッドが居ると……」
「待ってくれ。『他の魔王達』って何だよ? 聞いてないぞ?」
自分で、そう言った次の瞬間、重大な事に気付いた……。何故、ヤツは「魔王の中の魔王」と呼ばれていたんだ? この名前って、他にも『魔王』が居る……または居た事が前提の呼び名じゃないのか?
「ヤツは、何十・何百も居た『魔王』の一体に過ぎません。かつて魔界で起きた『魔王』同士の争いの結果、魔界の覇権を握ったのがヤツだったのです。ヤツが魔界の王になれたのは、自分より強力な『魔王』同士が争って共倒れした結果、漁夫の利を得た為、と云う伝承も存在します」
そ……そんな……。
「しっかし、マズいね。私達が『魔王の中の魔王』を倒した事で、ヤツが封印してた他の魔王が目覚めたのかも知れない。だとしたら、魔界で魔王同士の勢力争いが起きてる可能性も有る。そうなったら……」
ディーリアは、そう説明した。
「お……おい、そうなったら、どうなるんだ?」
「人間界も魔王同士の争いに巻き込まれる。そして、その場合……戦いを終らせるには……全ての魔王を倒すか……もしくは、全ての魔物を皆殺しにするか」
「えっ?」
「魔王を1人か2人倒しても、その配下の魔物達が生き残っていれば、他の魔王の配下になるだけ……。下手したら、魔物同士の戦いで他の魔物の力を吸収した魔物が『魔王』に『進化』するかも知れない」
「待ってくれ、下級の魔物が魔王に変るなんて、今まで起きなかっただろ? どう云う事なんだ?」
「『魔王の中の魔王』が、勝手に『進化』しようとする魔物を片っ端から処罰してたんだ。自分の脅威になる新しい魔王が生まれないようにね。ヤツが魔界の独裁者だったせいで、魔界では一応の秩序が保たれてたんだよ」
「そ……そんな……」
「ホントに、困ったね、こりゃ……。あたしのこの最悪の予想が当っていれば『魔王の中の魔王』の軍勢と戦ってた頃とは……戦いのルールそのものが変ってしまってる」
その時、空から舞い降りた者が居た。王都守備隊のグリフォン騎兵だ。
しかし、様子がおかしい……。
「勇者様……王都にお戻り下さい……。王都の民は……勇者様の力を必要としております……」
傷だらけの騎兵は、苦しそうにそう言った。
ふと、王都の方を見ると、黒い煙が立ち上り、無数の閃光が瞬いていた。
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