裏幕 ―参―

 妖怪の隠れ里を探す金狐達は、老山より四方八方へと広がる深い森林地帯の北部を歩いていた。その北部は他の方面、特に東部と比べて草木が窮屈に生い茂り、普段誰も足を踏み入れないために地面の凹凸も甚だしく、徒歩による探索は険しさを極めていた。

 目と鼻の利かぬ銀狐にとっては、特に危険な場所である。実際北部の森林に入って間もない内に、彼女は金狐に支えられていたにも関わらず何度となく転び、時には彼女を支える金狐をも巻き込んで転ぶ事もあったので、今ではすっかり捷天に抱きかかえられていた。

「すみません。私がこんな体だから、ご迷惑をおかけして……」

 目線のすぐ下にある銀狐の顔を見下ろした捷天は、相手に見えないと分かっていながらも笑みを浮かべる。

「なあに、これぐらいどうってことねえ」

「でも、私のせいで歩きにくいんじゃ……」

「そんなことねえさ。俺達天狗は山育ちなもんだからよ、むしろ悪い道のほうが歩きやすいんだ。それに山修行で担がされた岩石に比べれば、ごんちゃんは軽いのなんの」

 自分の発言を証明するように、捷天は抱えている銀狐を軽く揺すってみせた。

 それを見た金狐は慌てて捷天に近づき、

「捷天さん、あまり急な動きをすると、ごんがびっくりしてしまいます」

 と注意した。

「ああ、すまねえ、すまねえ」

 金狐の慌て具合とは全く裏腹に、笑みを湛えたままの捷天は悪びれる様子もなく答え、銀狐の顔を再び見やった。金狐の言ったとおり、銀狐は開けられない目の代わりに両眉を目一杯持ち上げ、驚いたように肩を竦めていた。その銀狐の縮こまった様子を見た捷天は、どこかおかしさを堪えるようににっと歯をみせる。

「心配するこたあ、ねえさ。この高下駄の鼻緒が切れねえ限りは、ごんちゃんを落っことしたりんざしねえぜ」

 こうした捷天の馴れ馴れしさに、金狐はやや先行きの不安になるような危うさを覚えつつも、ある種の落ち着きを感じていた。

 捷天がお供として付いてきてくれる以前は、自分と妹の二人だけの日々であった。お互いが相手の身の安全を確認しつつひたすら逃げ、その疲れを取るために夜を明かす時も、お互いの体をしっかりと抱きとめて離れぬように眠った。銀狐などは時に、寂しさと辛さを寝言にのせて「こん姉ちゃん」と姉の名前を不意に漏らす事もあった。そうした銀狐の微かな呟きを耳にしてしまうたびに、金狐はなんとも言えぬもどかしさと息苦しさを覚えずにいられなかった。

 そこへ捷天という味方が現れたおかげで、それらが完全に解消されたとは言えぬものの、多少緩和された事は事実である。最初の方こそ、金狐も捷天の事を半信半疑でかかっていたのだが、今日まで道中を共にしてみれば、彼はなんら悪意のない誠実な天狗である事が窺えたのだった。不安と孤独で仕方がなかった夜も、彼が進んで番をしてくれようになってからは、ある程度心を落ち着けて眠りにつく事ができるようになった。

 この先、巫女の迫害からなんとか逃れる事ができ、腰を据えた生活が送れるようになれば。その時は、誇りある狐一族としてもごんの姉としても、捷天にお礼をしなければならない。

 そう考えながら、金狐は木と木の間をすり抜け歩いていく。不安定な足場やむき出しになった木の根っこで転びそうになって、銀狐を抱えた捷天の肩を借りながらも、この森のどこかにあるという妖怪の隠れ里を求めて。

 その途中、一度も足元を取られる事なく進んでいた捷天が急に歩みを止めた。

 あまりに唐突な行動だったため、彼から少し遅れて金狐もその場に立ち止まる。

「どうか、したんですか?」

 何かあったのかと思いながら、金狐は捷天の顔を見上げる。眉をひそめた彼は周辺を見回し、何かを探っている様子であった。

「いや、さっきの倒木を乗り越えたあたりから妙な感じはしていたんだが。ここにきて、その感じが明らかに強くなったもんだからな。嬢ちゃんも何か感じねえか? ……こう、真夜中の縁側で一匹の虫のざわめきだけが際立って聞こえるような、そんな感じだ」 

 言われて、金狐も捷天にならって辺りを見回す。

 目の前を見れば、どこも同じように鬱陶しいばかりの藪や木々が密集しているだけであった。金狐のすぐ右手を見れば、露出した木々の根っこが複雑に絡み合って作り出した高低差の激しい傾斜があり、またすぐ左手を見れば、太い幹の大木や細めの倒木が目立つ雑然とした光景が小規模ながらも広がっている。少しじめじめとした空気も漂っており、木々や岩々のあちこちに青々とした苔が点在していた。

「確かに、先程歩いてきたところとはちょっとだけ雰囲気が違いますね。なんというか、少し不自然な、誰かの手が入ったような獣道になっているような気がします」

 金狐がそう言うと、捷天は「ああ」と返事をする。

「もしかしたら、妖怪の隠れ里を見つける手がかりがあるかもしれねえ。よし、俺が付近を見回ってくる。ここら辺は危なそうだから、嬢ちゃんはごんちゃんと一緒に、ここで待っていてくれ」

 抱えていた銀狐を捷天が降ろし始めたため、金狐も彼女がちゃんと両足を地につけられるようにと手を貸す。銀狐の体重を支えられるよう金狐が右足を踏み変えた瞬間であった。

「きゃっ!」

 そう悲鳴を上げた時にはすでに遅く、足場の岩に生えた苔に足を滑らせた金狐は、右手の傾斜へと転げ落ちてしまった。捷天の咄嗟に回した腕のおかげで銀狐までもが巻き込まれ落ちてしまう事は避けられたものの、金狐の方までには手が回らず、急いで二の手を伸ばした彼の目先では、すでに傾斜の先に吹き溜まった暗闇の中へ金狐の姿が呑み込まれた後であった。


  ↓


 靄のかかった意識の中、どこからか木の燃えるような煙の臭いが立ち込めてきた。後ろを振り向くと、そこには激しい炎に呑まれた宮があった。深い闇を照らさんばかりのその炎が徐々に巫女の姿へと形を変え、こちらへ迫り来る。逃げなければ。そう思い、炎へ背を向けようとした瞬間、巫女から放たれた一本の矢が左足の太腿に突き刺さる。

「ああっ!」

「うわっ!」

 左足の太腿に鋭い痛みを感じた金狐は布団から飛び起き、訳も分からず体の向く方へと走り出した――その直後、踏み出した方の足首に熱を帯びた痛みを感じ、横転する。それでも、まだ自由の利く両腕を使い、目の前へと這いずり続ける。背後からは、宮を焼き母を殺した巫女の手が迫ってきているのだ。

 と、金狐の目の前に見慣れた姿が立ちはだかる。

「嬢ちゃん、落ち着くんだ。俺だ、捷天だ」

 その彼の声と表情がとても冷静であったため、金狐はひどく混乱した。

「捷天さん! 巫女が……、巫女が私を殺そうと迫ってきているんです。お願いです、助けて下さい!」

「ああ、そのために俺が嬢ちゃんの傍にいるんだ」

 彼の言葉を聞いた金狐には捷天の姿が頼もしく映った。味方のいる事に一つ安心したおかげか、自分のいる状況を把握するための心のゆとりを少しずつ取り戻し始め、訳の分からぬ脅迫めいた興奮も次第に冷めていく。そこへ、「ほら、ごんちゃんなら無事だ」という捷天の声と共に、目の前に銀狐の顔が現れる。

「こん姉ちゃん、こん姉ちゃん!」

 銀狐の体が自分の体に触れると、金狐はその確かな妹の温もりを感じてほっと涙を流した。

「ごん!」

 しばしの間、金狐と銀狐は相手の生きている事を確かめるように顔を寄せ合い、自分の頬を互いの涙で濡らし合った。まだ、ごんは生きている。自分は巫女に殺されていない。それが分かるだけで金狐の心は安らぎで満ち溢れていた。

 ひとまず落ち着きを取り戻した後、彼女は取り乱した事を捷天に詫び、ついさっきまで見ていた夢と幻影を隠さず打ち明けた。そうして吐き出してしまった方が、後々また同じ夢を見ても一人悩む必要がなくなると思ったからである。

 彼女の話を聞き終えた捷天は、親身になるような表情で金狐を見つめていた。

「無理もねえさ。あんな高いところから落ちて寝込めば、過去の辛い記憶も蘇っちまうだろうよ。悪いのは巫女の野郎共だ。何も、嬢ちゃんが怯え苦しむ必要はねえさ。……まあ、俺はいいからよ、まずあっちの奴に声をかけてやってくれ」

 そう捷天の指差す方へと目を向けると、そこには一人の綺麗な女性が座っていた。すらっとした佇まいに艶やかな長髪、やや細めの顔たちをした彼女は、とても同じ世界で生まれたとは思えぬ美しさを醸していた。

「彼女が嬢ちゃんの介抱や傷の手当をしてくれたんだ」

 そう言い聞かされながら、捷天の手を借りて立ち上がった金狐はさっきまで自分の寝ていた布団の中へと戻された。自分の顔を右へ少し傾けたすぐ傍に、その美しい女性は座っている。

「あの、このたびは私を助けて頂き、ありがとう御座いました」

「いいえ、金狐様が目を覚まされたようで何よりで御座います」

「その、……えっと」

 どこから聞けば良いのかと金狐が口籠っていると、それを察したように女性ははっとして軽く頭を下げた。

「申し遅れました、私は皐月と申します。訳あって化名を名乗り、出自を伏せる事をお許し下さい。そして、ここは――とっていも、これといった名がある訳では御座いませんが、世の妖怪達の間では『妖怪の隠れ里』と呼ばれているところです。昨日のお昼頃、見回りのために私が里の入り口まで来てみたところ、その近くで怪我をして倒れている金狐様を見つけたため、こうして私の家へ運び込んだ訳で御座います」

 皐月の話を聞いた金狐は驚いた。まさか、自分の転げ落ちた先が妖怪の隠れ里の手前だったとは。それだけでなく、そこで倒れていた自分をわざわざ助けてくれる優しい妖怪に出会えた事は、何よりも有り難い幸運である。

「本当になんとお礼を言って良いか」

 感謝の気持ちを示すために金狐が起き上がろうとすると、それを皐月が静かに制した。

「今は無理をなさってはいけません。特に両足の怪我が酷う御座いますから、まずはご養生を。歩いてもお体に差し障りの無いほど回復された時にでも、この里を案内致しましょう。では……」

 皐月は礼をし、立ち上がる。その際、皐月の動作を目で追っていた金狐は、彼女からしっとりとしながらも確かな鋭さをもった眼差しを向けられたような気がした。彼女の美しさも相まって、その眼差しは金狐に薄っすらとした寒気を覚えさせた。

 廊下へ通じる襖の前に差し掛かったところで、皐月はふと何かを思い出したように足を止めて金狐の方を振り返り、

「ああ、それと、この部屋は自由にして頂いて構いません。どうぞ、ご自分の部屋だと思ってお使い下さい」

 とだけ言い、襖を開けて廊下へと出ていった。

 部屋の前から皐月の足音が遠のいてから、捷天が銀狐を誘導しながら金狐の傍へと近寄ってくる。

「いや~、しかし、嬢ちゃんが目を覚ましてくれて本当に安心したぜ。あの時は、さすがの俺も心臓のひっくり返る思いがしたもんよ」

 自分より先に銀狐を座らせてから、捷天も腰を下ろす。

「こん姉ちゃん」

 銀狐が右手をゆっくりと伸ばし、何もない宙で彷徨わせていた。私を探しているのだろう、そう気づいた金狐は自分の左隣で寄る辺なくしている彼女の右手を優しく握り留める。

「ごめんなさいね? 心配かけて」

 銀狐は声を出すよりも先に自分の両手を使って、姉の手を握り返してきた。幼く頼りない銀狐の手からは身に沁みるほどの安堵感が伝わってくる。

 そう、ごんにとって私は唯一の身よりなのだ。私がここでいなくなってしまっては、物心のつく前に一族を失った故に母上を知らず、狐として大事な目も鼻も使えなくなったごんが一人になってしまう。私はもっと、自分の身に気を配らなければいけないのだ。

 妹にとっての自分の存在について金狐が見つめ直していると、捷天は二人の様子を交互に見て、その間を窺うような口振りでそっと口を挟む。

「まあ、とにかくだ。今はよく休むこった。なんせ、ここは俺達の探し求めていた妖怪の隠れ里だからな。当分、巫女の追手に心配する必要はねえし、もし何かあっても、近きに老山ありて傍に捷天あり、だ。追手なんざ少しも怖がるこたぁねえ」

 ここは妖怪の隠れ里。それを改めて意識した時、金狐は少しの疑問に突き当たる。

 よく考えれば、自分や銀狐は狐一族の生き残りである。かつて妖怪の大半を牛耳っていた自分の一族は多くの妖怪達から畏敬の念を集めていた反面、また様々な妖怪からの恨みを買っていたと聞いていたから、もしかしたら受け入れを拒否する妖怪もいるだろうとやや身構えていたのだ。

 一族が滅ぼされてから巫女に見つかるまでの間、妹と共に各地を転々とし隠居生活をする中で、狐一族に関する良い話を聞くと同時に、悪い話を耳にする事も決して少なくなかった。時には、「我が一族はあの雌狐共に虐げられてきた。滅びてくれて清々したわ」などの酷い言い様もあり、そういった悪態を聞くたびに金狐は心を痛めていた。

「何故、狐一族の生き残りである私達を、この里の妖怪達は受け入れてくれたのでしょうか」

 思っていた疑問を金狐が口にすると、それを聞いた捷天がこう答える。

「そりゃあ、狐一族は偉大な一族だからよ。俺が嬢ちゃん達の事情を話すと、あの皐月って奴が色々動いてくれたんだ。なんでも、あいつは昔から狐一族を尊敬していたらしくてなあ。嬢ちゃん達の境遇を知るなり、外で里全員の会議を開いて、嬢ちゃん達の定住を取り計らってくれたらしい」

 金狐の胸の内にあった疑問から少し的が外れていたものの、捷天の答えは質問に対して素直な答えであった。

 なるほど。あの皐月さんの畏まった言葉遣いや妙な視線も、私達の母上の築き上げた狐一族に対する尊敬の念の表れなのだろう。と、今程金狐の抱いていた疑問とは別の点、自分に対する皐月の態度の訳に合点がいったのだった。

 その日、金狐は少しでも早く体を良くしようと早々に寝入った。彼女の傍には銀狐がじっと寄り添い、そんな彼女達を守るため、ここが妖怪の隠れ里だからと気を抜く事もなく捷天が昼夜問わずに番をしたのだった。

 それから数日の養生と、皐月や捷天らの看病の甲斐あってか、金狐は寝たきりの状態からまずまず回復した。いまだ一番怪我の酷かった左足には痛みがあり、誰かの手を借りて歩かねば足元が覚束ないものの、その他の怪我に関してはほぼ全快したといっても良い。

 そうして金狐の体調が良くなった、あくる日の朝。

 ふと目を覚ました金狐は両目をこすりながら体を起こし、何気なく右を振り返る。

「あ……」

 途端、夢見心地の微睡みが一瞬で吹き飛ばされたのだった。

 金狐のすぐ目の前に皐月が佇んでいた。まるで金狐の寝入った時からそこに座っていたような腰の落ち着き具合であり、気配どころか妖気すらも潜ませていたのだ。彼女の艶やかな前髪からのぞく瞳はまっすぐと、冷たいほどに金狐の顔を捉えている。

「ようやく、お目覚めになられたようで……」

 金狐が固まったようにじっとしていると、不意に皐月の口が開いた。

「どうなさいましたか? 今日は私めが里をご案内すると、昨日お約束をしたはずですが。もしや、どこかお体がすぐれないのでしょうか」

 そう言われて、金狐ははっと我に返った。そういえば、そんな話を昨日の昼頃に聞いた覚えがある。彼女は気を持ち直して表情を和らげた。

「ああ、いいえ、大丈夫です。ただ、皐月さんが妖気を薄めて傍にいたものだから、ちょっとびっくりしてしまって」

 金狐に言われて気づいたとばかりに、皐月はまるで照れるような仕草をする。

「これは失礼致しました。なにぶん、小さい頃からの癖で御座いまして、とんだ無礼をお許し下さい」

 そう言いながら、皐月は丁重かつ仰々しく額を畳につけた。

 そのあまりの大仰さに、金狐はひどく慌てて皐月の肩に手を添える。

「そんな、別に大した事じゃないです。頭を上げてください」

 そう促すと、皐月はそっと頭を上げて姿勢を正した。

「人間相手ならまだしも、同じ妖怪相手に妖気を隠すなど無礼極まりない事です。しかもその御相手が金狐様のように誉れ高き狐一族とあっては尚更。もし、金狐様がこれほど寛大でなければ、私めのような一介の弱小妖怪など、暗殺の意ありとみなされその場で処刑されていた事でしょう」

 皐月の言葉遣いには一切の訛りがなく、やや時代を感じられるような威厳が見て取れた。加えて、突拍子もなく妖怪の慣例を口にした事もあり、元から儀礼的である彼女の態度がさらに強調されているように見えた。

 そんな彼女に対して、金狐は心臓の縮まるような感覚を覚える。自分を助けてもらった日からここ数日の間、皐月は砕けた態度や言動を少しも示さず、また自分の素性をほとんど語らずにいた。そのせいか、畏怖にも近い感情と確かな心の距離を感じずにはいられない。

「さあ、金狐様。外で銀狐様と捷天様がお待ちになっております」

 皐月の手を借りながら立ち上がった金狐は、彼女の手伝いを受けつつもいそいそと外着に着替える。もし、皐月が巫女であったのなら、きっと私はあのまま目を覚ます事などなかっただろう。起き抜けの自分の目に飛び込んできた彼女の佇まいを思い返した金狐は、そんな良くない事をつい想像してしまった。

 着替え終わった後、金狐は皐月に支えられながら歩き、廊下へと出る障子に向かった。障子の前まで来ると、金狐に手間を取らせまいと思ってか、皐月が自ら率先して障子を開け、先に金狐を廊下へと通す。

 と、廊下へ出たすぐそこに捷天の姿があった。彼は、部屋から出てきた二人を見るなり近づいてくると、皐月のほうを見やる。

 捷天の姿を見てやや驚いた金狐に対し、皐月はひどく澄ました表情で彼を見据えていた。

「外で待っていらしたのでは?」

「いや~」

 捷天は軽い笑みを浮かべ、後ろ髪を掻くような仕草を見せる。

「少し遅いもんだから、嬢ちゃんが寝坊でもしたのかと思ってな」

 捷天の言葉を聞いた金狐は、少し恥ずかしくなって目線を落とす。寝坊といえば寝坊だ。狐一族の存命時代では、自分の母親から礼儀作法などを厳しく教わっていたため、当然約束に対する寝坊も恥ずべき行為だと認識している。捷天とはそもそも一族が違い、そういった作法に関する考え方も違うため、然程気にする事でもないとは分かっていた。が、母親から躾けを受けて以来一度も寝坊した事がなかったせいか、それを他人しかも男性から気にかけられた事が無性に恥ずかしかった。

 寝坊した事を謝ろうと思うも、中々口に出せず金狐がおどおどしていると、

「それは申し訳ありません。金狐様のお召し替えに、私の方が手間取ってしまいまして。なにぶん、この里で私が世話を見ている妖怪は皆平凡な者達ばかりで、金狐様のようなご身分の高いお方のお世話を任されるなど初めての事ですから」

 と、皐月が金狐の寝坊を取り繕ってくれた。

「そうかい。そりゃあ悪かった、俺が少しせっかちだったな。まあ、嬢ちゃんも良い歳頃のおなごだから、俺の代わりに皐月が世話を見てくれるのには正直助かっているぜ。こっからは俺が嬢ちゃんに肩を貸すから、皐月は里の案内を頼む」

「承知致しました」

 金狐の体を捷天の腕に預けると、皐月は二人を先導するように廊下を歩き出す。捷天の体を支えにしながら皐月の後に続く金狐は、今程取った彼女の言動について考えていた。

 彼女が機転を利かせて自分を守ってくれた事に関しては、素直に嬉しかった。狐一族としての自分に尊敬の念があるといっても、金狐という個人に対してあそこまでする義理はない。それなのに、彼女はこちらの気持ちを察してか、あくまで自分の非であると嘘をついてまで私を庇ってくれた。そう考えると、先程の起き抜け時、皐月に対して示した自分の反応や感情が失礼であったように思われた。途端に、金狐は罪悪感のような負い目を覚える。

 廊下を抜け、皐月の家の玄関先に出た瞬間、金狐は外の風景に大きく目を瞠った。

 見上げるといつもそこにある空の青さはなく、かわりにむき出した土の赤茶色があった。その土はそこかしこに吊り下げられた提灯の仄かな光に照らされ、暖かく柔らかな色合いをしていたのだ。そう、この妖怪の隠れ里は地下にあった。天井ともいえる土肌の下には平凡な家屋が立ち並び、瓦葺や板葺の屋根からなる長屋や庵などが限られた土地を奪い合っているようだ。その真ん中をかき分けるように一本の大通りが伸びている。まるで、夜の更けた後も密やかに賑わい続ける城下町の一端のようである。

「これが……、妖怪の隠れ里」

 摩訶不思議な光景を見たあまりそう呟いてしまった金狐に対し、皐月がこう話す。

「左様で御座います。こうした深い森の地下に隠れ住む事で、私達は平穏な日々を過ごす事ができるのです。ここには私達の天敵と成す巫女一族も、醜い心を持った悪しき妖怪達もおりません。あるのは、ただ平和と共存を望む同胞のみで御座います」

 怪我で養生している間、金狐は一度も外の風景を見る機会がなかった。もちろん捷天や皐月から外の様子などを話に聞いてはいたものの、いざ実際に目の当たりにしてみると、その奇妙な生活空間にはただただ目を泳がせるばかりである。

 金狐が半ば唖然としていたところ、「こん姉ちゃん」という声とともに視界の端から銀狐の姿が入り込んできた。

 見ると、そこには銀狐の他に、見慣れぬ一人の妖怪が立っていた。姿形はやんちゃな若い女性という感じである。だが、ほとんど目を瞑っているとしか思えない狐目に、頬から薄っすらと伸びた数本の白ヒゲ、加えて体全体から漂うおっとりとした妖気から察するに、彼女は妖猫であろう。

 銀狐の手を引いているところを見ると、どうやら妹の面倒を見てくれていたらしい。そう思った金狐は彼女に向かって一度頭を下げる。

「どうも、私の妹……」

 金狐がお礼の言葉を述べようとしたが、

「あんたがこの子の姉かい? いやぁ、妹さんが可愛らしいと、その姉さんもやっぱり別嬪さんなんだねえ。まあ、この里で会ったのも何かの縁さね。あたしゃ憐火(れんか)、ああ一族なんて大したもんじゃない、ただのしがない猫又の端くれだよ」

 と、憐火という猫又が一気に捲し立てるや、友好の証とばかりに握手を求めてきた。

 金狐は彼女の勢いに気圧されながらも、それに応えようと頑張って笑顔を作り、「私は狐一族百三十五代目『九尾の狐』の娘、金狐と申します」と名乗り返して目の前に差し出された彼女の右手を握る。憐火も金狐の右手を力強く握り返してから、満足気な表情で手を戻した。

「これからこの里を回るんだろう? ここは決して広い里とは言えないけど、中々住み心地が良い場所さ。おまけに、そこの皐月さんも優しいし、こんさんもきっと気にいるよ。ほら、ちゃんと妹さんの手を握ってやらないと迷子になっちゃうさ。そうそう、あたしゃ皐月さんの家のすぐ隣、……そうこの家ね? ここに住んでるから暇な時には妹さんと遊びにきなよ。じゃ、ゆっくりと里を楽しんでくるといいさ」

 憐火は一息でそこまで喋り終えると、「またね」と軽く手を振り、猫らしい陽気な足取りで大通りの先へと歩き去っていた。

 独特な喋り方をする妖怪だなあ。などと思いながらも、これから里を案内してもらうというのにすでにちょっとした疲れを覚えつつ、金狐はいつの間にか握らされていた銀狐の左手を改めて握り直す。

 その後、金狐は捷天の体を支えに、皐月の案内を受けながら里を見て回る。見て回るといっても、地下にある隠れ里の構造はもっぱら街道のそれであるため、大通りの端から端を歩いて行くだけであった。それだけでも、この妖怪の隠れ里がどのような場所なのかを十分に肌で感じる事ができるのだった。

 道の両脇には、妖怪の居住している家屋だけでなく、露店のような店を営んでいるものや食事処などがあり、そこそこの賑わいに混じって食欲を刺激する良い匂いが漂ってくる。それにしては、大通りが大勢の妖怪に埋め尽くされているという訳でもない。里全体の活気も、大きな里や城下町に比べれば大した事のないように映るかもしれないが、そこは隠れ里という性質を弁えた程良い賑わいと落ち着きを持っているともいえる。

 暖かな香りと光に包まれた道を歩く中、金狐は里の様相を見ていくかたわら、道行く様々な妖怪達に声をかけられた。

 彼らは皆気さくな態度であった。個々が独自の個性を持った立ち居振る舞いや言葉遣いを示しながらも、根は穏やかな性格であろう事も窺い知れるため、彼らとの会話は決して苦にならなかった。こちらの身分を聞いても、彼らが少しも態度を変えなかった事も影響していただろう。どうやらこの里の妖怪達は、お互いの身分などをまるっきり意識しないようなのだ。

 そんな彼らの誰もが皐月に好意的な話し振りであった。

 話を聞いていく内に、今までは不透明であった皐月の事が少しずつ分かってくる。

 最初にこの里を開拓したという皐月は、皆から慕われている事。医術にも明るいため、怪我をした妖怪がよくお世話になっている事。美人だが、ちょっと物静かで不器用な性格である事など。断片的かつ妖怪それぞれの主観が混じっているものの、皐月という彼女への信頼が見て取れる話ばかりであった。

 里の空気や様々な妖怪と触れ合っていく中で、金狐はある種の懐かしさを覚えていた。かつて、狐一族の里で過ごしていたあの華やかで楽しい日々、幼い頃であったため記憶こそ少なく曖昧ではあるが、確かに自分を満たし包み込んでくれていた温かな雰囲気が感じられる。一族を滅ぼされた後、巫女一族に見つかるまでの間各地を転々としながらその日をただ生き凌いでいた頃の自分が、夢にまで見るほど望んだ平穏である。

 里を一通り見回り終えると、金狐達は皐月の家の前まで戻ってきた。

 ここは地下であるため、今朝からどれくらいの時が経ち、今が何時なのかさえ窺う事はできない。皐月が言うには、ここでの生活に慣れれば大まかな時の流れは感覚で分かるようになるらしい。

 まずは今日の礼を述べなければと、金狐は皐月に向かい可能な限りで上半身を前に折る。

「今日は、わざわざ私のために里を案内して頂きありがとう御座いました」

 金狐の動作につられたのか、彼女の手を握っていた銀狐も頭を下げる。その様子を横目で見た金狐は妹の事が愛おしく感じられ、思わず笑みを零す。

「とんでも御座いません。金狐様のお役に立てたのであれば、私は幸いで御座います」

 そう言葉を返してきた皐月は玄関の扉を開け、金狐達に向かって中へ入るよう促してくる。

「今日はお疲れの事でしょう。どうぞ、皆様はお部屋のほうでお寛ぎ下さい。私は夕食をお作りします故、後程お部屋のほうへ食事をお持ち致します」

 何故、彼女はここまで私達へ親切に尽くしてくれるのか。促されるまま玄関を通り抜けようとした金狐は、途中で自分の体を支えている捷天を止め、前から気になっていた事を口にする。

「あの……、聞いても良いでしょうか。皐月さんは何故、狐一族の生き残りである私達を受け入れ、色々と面倒を見てくるのですか?」

「金狐様が、私の尊敬する狐一族のお方だからこそ御座います」

 皐月は無表情な顔をしたまま、そう答えた。

 本当にそうなのだろうか。特別強い疑心を抱いている訳ではない。ただ、今まで見聞きしてきた皐月の言動や、この里の妖怪達から聞いた彼女の人となりを思い返すも、金狐はどうしても皐月の真意をはかる事が出来ずにいたのだ。

 そう思い悩む具合が自分の顔に出ていたのか、皐月は金狐の顔をじっと見つめながら、ふっと目元の緩めた。

「それも嘘ではありません。ですが、実はもう一つ理由が御座います」

 その言葉を聞いた金狐は、自分の詮索が見透かされてしまったような気まずさを感じつつも、次の話に耳を傾ける。

「昔、私も金狐様と同じような境遇にあったからです。身分は明かせませんが、昔の私は、とある由緒正しき一族に生まれました。しかし、私が生まれた時には、その由緒正しき一族もすでに逆賊の手によって追いつめられておりました。私を含め皆は、各地を転々としながら、食に飢え、安住の地を求めては逆賊の手にかかり、年々その数を少なくしていきました。そして、数少ない――いえ、もしかしたら、その一族の生き残りはもう私一人しかいないでしょう。私はこの森の奥深くに隠れ住んだのです。次第に私と同じか、それとも別の理由からか様々な妖怪の方々が、私のもとへと集まってくるようになり、少しずつ生活の場を整えていきました。そうしている内に、ふと気付けば、こうして俗に呼ばれる『妖怪の隠れ里』と相成った訳で御座います」

 金狐は自身の胸に穴を穿たれたような、ひっそりとした衝撃を受けた。

 見れば、皐月の表情は今までの澄ましたような美しさではなく、どこか儚げで、今程の話に出てきた一族との過去へ思いを馳せるような、血の通った麗しさを湛えていた。地下の明かりは淡いというのに、彼女の瞳の奥には凛として輝く光を照り返している。

 皐月の過去を知った金狐には、彼女の姿が今までとは少し違った雰囲気を纏っているように見え始めた。思えば、これまで狐一族の生き残りである私へかけてきた言葉や行動は、彼女自身の心情を強く表したものだったのだろう。誰かに追われた境遇を持ち、一族最後の生き残りかもしれない自分、そして何より気高い一族の血を受け継いだ者として、彼女は同情の念を抱いてくれていたのだ。

 そう思い至った金狐は、皐月に対して妙な親近感を覚える。最初、彼女の畏まった佇まいや言動には他人との間に作る心の壁のようなものが明確に感じられたが、彼女の話を聞いた今、どうやらそれがまやかしであったらしいと思えた。

「皐月さん。これから、よろしくお願いします。もし、皐月さんがご迷惑でなければ、私にもできる範囲で家の事をお手伝いさせてください」

 金狐は自然とそう口にしていた。

 皐月は血の通った麗しい表情を一度消し、先程までの澄ました美しい無表情に戻す。金狐の唐突な厚意に驚いただけなのか、それも一瞬の事であり、すぐに相好を崩して、

「勿体無きお言葉」

 とだけ返事をした。

 続けて「さあ、早く中へお入り下さい。お体に障ります故」と皐月に促されたため、金狐達は玄関を抜けて、廊下を真っ直ぐと歩いて自室へと入った――皐月は夕食を作るために台所へ向かったようだ。

 自室とはいっても、皐月から好きに使って良いと間借りしている部屋である。

 それがどうも落ち着かないのか、捷天は慣れぬ様子で自分の背を壁に預けるように座り、気難しい顔をしている。銀狐や金狐は過去に、各地を転々とする中で時に人間の身へやつして間借り生活をしていた事もあったため、特別居心地の悪さは感じなかった。

 銀狐はとにかく腰を落ち着けられる場所のある事が嬉しいのだろう。追われ身の生活をしていた頃はめっきり減っていた笑顔も最近は目立つようになり、嬉々とした様子で金狐との会話を弾ませていた。

 良かった、ごんがこんなに明るくなってくれて。金狐は楽しそうに話しかけてくれる妹の姿がただ愛おしく、彼女の発す声と言葉を一つ一つ大切に聞いていく。

 する内に、自室の前に誰かの足音が近づいてきたかと思うと、夕食を持った皐月が部屋に現れた。時間の経過が随分と早く感じられつつも、金狐達が夕食を済ました後、外はもう夜だと告げた皐月が敷布団の用意をし始める。そこまでしてもらっては悪いと思った金狐は、自分で用意すると言うものの、「まだ金狐様は足の具合がすぐれないのですから、どうぞ安静になさっていて下さい」と返されたため、ここは皐月の親切に甘える事にした。

 就寝の際は、さすがの捷天も金狐達と同室で寝るわけにはいかないと考えており、彼は自ら別室で床に就くようにしていた。だが、この時は、嬢ちゃんに少し話があると、皐月の退室後も自室に残っていた。

 彼の口が開かれるのを待っている間、金狐は自分の膝を枕にして寝息を立てる銀狐の頭を撫でる。恐らく、喋り疲れて寝てしまったのだろう。誰かに追われる恐怖から身を縮めて寝付くのではなく、こうして平穏と安心からついうっかり眠りに落ちてしまえる事は何よりも幸福である。

「なあ、嬢ちゃん」

 捷天が重い腰を上げるように口を開く。金狐は安らかな銀狐の寝顔を見つめながら、「なんですか?」と先を促した。

「あまり気を悪くしないで欲しいんだが。俺はどうも、あの皐月って女がいけ好かねえんだ。最初は親切な奴かと思ったが、どうも嬢ちゃんに対する態度が妙だぜ。何か、腹積もりがある気がしてならねえ」

 捷天の口からそう語られた事に、金狐は少なからずを胸を打たれるような悲しさを覚えたものの、これも彼が自分の身を案じてくれているからこそ出た言葉なのだろうと思い直す。

「きっと、皐月さんは自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手なんですよ。あの方も私と同じような過去があるって言っていましたし……。私、皐月さんの気持ちが、とても分かる気がするんです」

 よく思い返せば、あの宮での生活を失って以来、妹と二人きりになってしまった金狐も他の妖怪との交流をまともに行ってこなかった。だから、捷天と初めて会った時も、彼が狐一族古来の盟友である天狗一族である事もすぐには分からなかったし、こうして接するようになった里の妖怪達や皐月に対してどういう態度をすれば良いか、適切な距離感というのがうまく掴めずにいる。

 きっと、皐月さんも私と一緒なのだ。

「それに、現にこうして私を助けてくれました。もし、何かの腹積もりがあれば、最初から私を助けなかったはずです」

 そう紡いだ金狐は銀狐の寝顔から視線を外し、捷天へ笑顔を見せた。

 捷天は肩の力を抜くようにふっと短い息を吐く。

「そうだな、嬢ちゃんの言う通りかもしれねえ。それはそうと、これとはまた別に、一つ気になる事があるんだが。嬢ちゃんは、あの皐月の妖気に見覚えがねえか?」

「妖気……ですか?」

 言われて、金狐は皐月の妖気の感じを思い出す。

 皐月自身が妖気の放出を抑えているせいか、はっきりとまでは分からない。それでも、彼女から感じられる僅かな妖気からはその気品と安定した妖力の強度が窺い知れる。化け身である若い女性の姿からは想像のつかぬ程とてつもない年季も感じられ、それは彼女のしなやかな所作や訛りのない恭しい言葉遣いからも察せられるだろう。皐月の自ら言った「由緒正しき一族」の妖怪である事は疑いようもない。

 皐月の妖気から分かる事を少し整理したものの、金狐の過去にはそれらに当てはまる妖気の記憶はなかった。

「……いえ、見覚えはないですね。あれほど毅然とした妖気を、一度でも感じた事があれば、多分簡単には忘れらないでしょうし。でも、なんでそんな事を?」

「いや、俺自身は皐月の妖気に見覚えがあってな。どれくらい昔だったか、常に盟友狐一族の傍にあった、忌まわしいような懐かしいような妖気だった気がするんだがなあ~」

 捷天は顎に手を当て、しばし深く考えを巡らせるように目を瞑った。

「いや、いつか思い出すだろう。まあ、嬢ちゃんも一応気をつけておいてくれ」

 そう言って立ち上がると、「じゃあ、失礼するぜ」と捷天は部屋から出ていった。

 彼の後ろ姿を見送った金狐は、彼の言う「常に盟友狐一族の傍にあった」という言葉が気になり、もう一度皐月の妖気を思い返してみる。過去に感じた事のある妖気と比較しようとするも、幼き頃に狐一族の宮のみで生活した彼女には身内以外で思い出せる妖気などなく、ほとんど詮無き行為に終わった。そもそも、捷天と出会った時に、盟友である天狗一族の妖気ですら思い出せなかったのだからそれも当然である。

 二人だけになった部屋には、銀狐の高くか細い寝息だけが溶け出していた。

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