闇、そして光

ある☆ふぁるど

第1話

 彼は暗黒の世界をさまよっていた。長い間。輝くもののない空と、暗く歪んだ大地との狭間で、彼はとまどっていた。前も見えず、後方を振り返っても何もない。ただ広がる闇。

「一体、いつから・・・」

 この世界は変わってしまったのだろう? 彼は記憶をたどり、過去へとさかのぼっていく。そうだ、かつての大地は光に満ちていた。空にはまぶしいばかりの太陽がさんさんと輝き、彼も、そして仲間たちも、自由に空間をかけめぐり、空に向かって羽ばたいていた。

「なのに・・・」

 今は闇しかない。みんなどこへ消えてしまったのだろう? 彼らもまたこの暗黒の中で、互いの姿も見いだせずにさまよっているのだろうか。いや、もしかすると、彼らはあのまま光の中にいて、自分だけがその世界から放り出されたのではないだろうか。

「だとしたら・・・」

 あの世界へ帰らなければ・・・と、彼は思った。焦燥があった。早く、一刻でも早く、この闇から抜け出さなければならない。

 しかし、闇は果てしなく、どこまでも続いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る