友人Aとサバサバ系女子 [1]⇨[1]

「いや、全然話さないじゃん、頼むわ」


「話す話す、話すって」


 昨日ちょうど、こんな話をしていた。

 多分実際会ったらネットの時とテンションとか話し方とか違う、と。それはお互い様ではないだろうか、と僕は思っていた。君に関しては知らないが、僕はどちらかと言うとSNSの方が愛想がいいと言われる。というのも僕は目つきが悪く、いつもダルそう、とよく言われるので自ずと文章、および視覚でしかコミュニケーションをしないSNSの方が柔らかい感じがするんじゃないだろうか。


 そのことを告げた時、共感の声が返ってきた。


【あーわたしも。まぁ出来るだけ会話途切れないように頑張ろ笑笑】


【いや僕はあんまり自分から話題投げる方じゃないから、君が頑張ってくれ笑笑】


 ここでもまた僕は、共通点が見つかったことに、喜びを感じていた。

 たとえそれが誰しもに共通する、いわゆるバーナム効果のようなものでも。

 僕は、嬉しかった。


 地下鉄のホームで電車を待っている最中、話題は僕の連絡先を勝手に君に送った僕の友達についてだった。


 僕の友達(以下A)は高校の時知り合った。

 Aとは初め席が近くて、いやでもAとその友達との話が聞こえてきたりした。入学当初、僕は確実にこいつにいじめられると思っていた。というのも、入学初日にもかかわらず、既に何人かクラスに友達がおり、さらにA自身もそうだが、なにぶん見た目が厳つい。

 坊主でゴリゴリのムキムキとかではないが、目つきが怖かったり身長と高い。さらに友達との会話の中で気の強そうな性格が露見していたので、当時僕はビビってしかいなかった。

 しかし話してみるといいやつで、勉強もできるし運動もできるし性格が少しうざいが、火の打ちどころがない、とは彼のことを言うんだろうとそう思うようになった。

 そして高3になってまた同じクラスになり、一緒に帰る仲になり、大学生になった今ではほぼ毎日会うくらい仲良くなった。


 そして、君は元々Aと大学、さらに学部が同じだった。

 授業で隣の席になって、そこから仲良くなったらしい。

 だからといって僕の連絡先を勝手に送るのはどうかと思うが、こういうやつなのでしょうがない。


 電車に揺られながら、


「あいつデリカシーがない、いっつも余計な一言が多い」


「言わなくていいことも言ってくる」


「子供っぽいし、うるさい」


 君がAの愚痴を僕にこぼす。

 否定できず、全て正論だったので僕は大きく首を縦に振って共感していた。Aは考えなしに思ったことを口に出すタイプなので、女性からしたらよりデリカシーがないように思うだろう。


「まぁでもいいやつだから、仲良くしてやって」


「無理」


 君はバッサリと切り捨てた。


 ___________________________________________


 そうこうしてるうちに、水族館のある駅に到着する。


 駅から徒歩で5分ほど歩くと着くと、調べたら出てきた。

 向かう時の会話でも、まだAの名前は出ていた。

 しかし、その時は君からの愚痴ではなく、僕からのAのプレゼンだった。

 頭が良いこと、困った時は助けてくれるところ、なんだかんだ面倒見がいいところ。

 ただ君にはあまり響かず、


「そのかっこいいとか優しいAは、私知らない。私がいつも接してるAは子どもっぽくてめんどくさいやつだし。私に対しては酷いから嫌い」


 というのが彼女なりの結論だった。

 結局Aの株の暴落は免れなかった、ごめんねA。

 てかお前が悪いよ?


 水族館についた。

 流石夏休み、流石休日といったところか、チケット売り場には行列ができており、炎天下の中でこの列に並ぶとなると発狂ものだ。


 しかしそれが嫌で、僕はあらかじめネットでチケットを購入しておいた。


 君にチケットを買っておくウマをメールで伝えた時、


【ネットで買うと何がお得なの?】


 僕はわからずに君に聞いた。


【並ばなくて済むんじゃない?】


 なるほど、こいつ賢い。というか僕がバカ。


 と、余計な回想を挟みつつチケットを携帯に読み込み、QRコードを出し、ゲートを潜る。


「いってらっしゃいませ!」


 店員さんが花道を作るように列になり、にこやかに挨拶をしてくる。

 僕は笑顔で会釈をしたが、君がどうしているのか気になり、目を向ける。

 君はというと、むすっとして挨拶もせずどしどし歩いていた。


 その態度に驚いてしまい、君の方を見ていると、君はこちらに気づき、「ん? なに?」と首を傾げた。あ、素なんですね、それ。


 さっぱりしてらっしゃる、サバサバ系ってこんな感じなのか。

 と、僕は初めて会うタイプの人間に興味が湧いた。


 水族館...デートと呼んでいいのか、少し迷いながらも、僕らは水族館に入った。


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