終焉
「キラ……生きているのか?」
レグルが心配そうに呟いた。キラは相変わらず身動き一つしない。
「キラ……」
再びレグルが呟いて顔を近付ける。ラバンはキラのヘルメットを取った。青白い顔にさっきの火炎で焦げた髪がかかっている。ラバンはキラの鼻先に耳を近付けた。
「……息はある様だぞ」
「う……」
微かにキラが呻いた。静かに瞼が開く。キラはゆっくり目を開けた。
「ホッ、良かった。無事だったか」
レグルは安心した様にため息をついた。その瞬間、
「ええッ!」
キラがすっとんきょうな声を上げた。
「ど、どうしたんだ?」
「レグル、貴方……涙が……」
「何?」
ラバンは思わずレグルを見つめた。レグルの目には心配と安堵の涙が浮かんでいた。
「やはりドラゴンも泣くのね」
「五月蝿い。そんな事言ってる場合か? 僅かだが敵はまだ残っているぞ!」
「そうね……」
キラはラバンの手からヘルメットを取ると、起き上がって被った。
「具合はどうだ?」
ラバンがキラの顔を覗き込む。
「ええ。大丈夫だわ」
「良し、残りの奴等を殲滅しよう。ユニットを組め!」
ラバンはそう号令をかけると、残りの敵兵の元へと歩き出した。
後は時間の問題だった。行き場を失った敵は次々と数を減らし、十人程残ったところで降伏した。広場のハーナブ兵達がどっと歓声を上げる。そこへ伝令がやって来た。
「どうやら街の敵は粗方殲滅したようです。残りは逃げましたが、司令官より深追いするな、との事です。街の外の敵もジルーダへ向けて引き上げ始めました。我が方の勝利です!」
再び歓声が上がった。
「で、この後はどうするんだ?」
ラバンが訊ねた。
「はい。街総出で壊れた城壁の修復に取りかかります。兵士の皆さんは数日休まれた後、国王陛下より報償金の授与式が行われますので、後日城へ集まって下さい」
「了解した。ところで、こちらの少女だがな……カラルの村のキラだ。何処か宿泊する場所を提供してもらいたいんだが」
「分かりました。伝えておきましょう」
「頼んだぞ」
伝令は再び走っていった。
「さて、何とか勝ったな!」
ラバンはキラの背中をパンッと叩いた。
「ええ。とにかく良かったわ」
「フフフ、それにしても凄い戦い振りだったぞ」
「あら、タリルの剣のお陰よ」
「まあ、そう謙遜するな。なあ、お前らだってそう思うだろう?」
ラバンは師団に向かって訊いた。
「おう! とても村娘とは思えなかったぜ。いっぱしの剣士並だな!」
師団の騎士達は次々にキラに挨拶した。
その後、キラは街の一番上等な旅館の部屋をタダで使わせてもらえる事になり、数日間そこで疲れを癒した。タリルの剣を抜いた剣士として、キラの名前は瞬く間に街中に知れ渡り、次々とキラを見に客がやって来るので、正直キラは余り休めなかった。
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