朝食
翌朝、久しぶりにちゃんとしたベッドで寝たキラは、気持ちよく伸びをして起きた。しばらく天井を眺めてボーッとしていると、階下で何やら物音がする。キラは着替えると下へ行ってみた。
ペトラが外の通路に隣接している水路から、素焼きの壺に水を入れて頭に乗せ、台所まで運んでいるところだった。そうか、街でも朝は水汲みで始まるんだわ、とキラは頷く。
「手伝いましょうか?」
「おや、起きたのかい? それは助かるね。台所にバケツが有るから、それで運んでくれるかい?」
「分かったわ」
キラは台所から木のバケツを掴むと、水路へ向かった。石で囲われた水路の中を勢い良く水が流れている。キラはバケツ一杯水を汲むと、台所の大瓶に開けた。瓶一杯になったら、朝食の準備だ。
「私がパンを焼くから、スープを作ってくれるかい?」
「ええ、良いわ」
キラは苦笑いした。村に居た時と同じだ。
「何をニヤニヤしてるんだい?」
「村に居た時も、祖母がパンを焼いて、私がスープを作っていたから」
「そうなのかい? じゃあ、任せても大丈夫だね」
キラは玉ねぎとオクラをきざんだ。羊肉を一口大に切り分け、鍋で炒めて水を入れる。十分茹でたら、月桂樹の葉を入れ、塩胡椒で味付けした。
「よし、パンが焼けたよ。朝食にしようか」
ペトラは釜から円形の薄焼きパンを取り出すと、六つに切り分けた。キラはスープを器によそう。
「頂きます」
砂漠で食べた時の新鮮さに比べればちょっと物足りないが、それでもパンもスープも美味しかった。
「やっぱり、一人で食べるより、一人でも人数が多い方が美味しく感じるねえ」
ペトラが笑う。そういえば、ペトラは独り暮らしなのだろうか?
「ご主人は居ないんですか?」
「昔は居たけどね。若い女と一緒になって、出ていっちまったのさ」
「はあ……。それは。お子さんは?」
「娘が二人居るよ。二人とも嫁に行ってね。今じゃ私独りさ。まあ、あんたがこうして来てくれたから、賑やかになって良いね」
そう言われると、キラも悪い気はしなかった。よし、毎朝水汲みとスープ作りはしてあげようかしら。そう思いながらスープを口に運ぶ。
朝食を済ませると、キラはレストラン、マカララヘ向かった。
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