第7話
「やっぱり見て良かったなぁ。」
「ラスト感動だったよね。前の席の人、最初の方喋りすぎで煩かったけど、途中から居ないかの様に静かだったよね」
久しぶりのデートで仁と葵は映画観賞の後、カフェに立ち寄り、今見た映画の興奮が覚めやらず、お互いに感想を言い合っていた。
ひと通り映画の話が終わると、思い出した様に仁が切り出した。
「そう言えばあれからマンデラエフェクトはどうなった?また新しい現象はあった?」
「大きいのは無いけど、あれっ、これって勘違いだったかなって言う、曖昧なのは時々あるかな。
でもね。もう気にしないで、楽しむ事にした。」
「いつもの葵に戻ったな。所詮俺達が見てる世界なんて、ほんの一部かもしれない。
今、こうしてここに居ることだって、当たり前みたいで、実は不思議な事なんだよな。
ま、この先何があっても俺達は変わらないさ」
その時、仁の持っているスマホが鳴り出したので、仁は慌ててスマホの画面を見ると、葵に、
「悪い。会社からの電話だから、ちょっと出てくる」
そう言い残して店から一旦外に出て行った。
葵は飲みかけのアイスコーヒーを一口飲むと、何となく店内を見渡した。
この店は内装がお洒落なのと、ランチメニューのカップルセットが人気で、昼時はカップルが多い。
カップルセットはカップル限定のメニューで、
ハート型のオムライスにサラダやスープに、ちょっとしたデザートと飲み物もついて980円。
しかも伝票の裏には二人の相性診断付き。
遊び心もあってあっと言う間にクチコミで広まった。
日曜夕方4時のこの時間は、少し風景が変わり、カップルはもちろん、友人同士や、一人の客も結構多かった。
やはり、仕事が休みの人がほとんどなのだろう。
みんな、それぞれに休日を楽しんでいるのだなと思って何となく眺めていた時、ふと、一人の女性が葵の目に写った。
あの女性は。。。
その姿に気付いた途端、葵の心臓は驚きで急速に鼓動を打ち始めた。
そんな筈はない。。
だって。。あの女性は亡くなった筈。。。
もしかしたら良く似た人なのかも。。
でも。。
でもこんな近くにあそこまで似ている人がいるなんて事があるのだろうか。。
その女性は、ニュースでストーカーに殺されたと報道されていた女性だった。
「ごめんごめん。課長からの電話だから、直ぐに出ないと後で面倒だからさ」
「。。。」
「葵?何かあった?」
葵があまりにも青ざめているので、これはまた何かあったなと思い、なるべく穏やかな声で仁が問いかけたが、
「ううん。大丈夫。ごめん。今日はもう帰る事にする。ごめんね」
「わかった。送ってくよ」
「じゃぁ、駅までお願い」
二人はそれからカフェを出て並んで歩きだしたが、葵は何を話しかけても上の空で、仁は心配になりはしたが、また何かあれば自分から相談してくれるだろうと、なるべく詮索しないようにして、駅に着いたら改札で見送った。
「何かあったら、時間気にしなくていいから、いつでも電話して」
「うん、ありがとう」
そう仁に言葉を返して歩き出してからしばらくして、後ろから声をかけられた。
「葵」
葵は声の方に振り向いた。
その瞬間、悲鳴を上げそうになったが、なんとか自分を抑えた。
そこに立っていたのは、彼女を殺害したストーカー男だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます