第2話
次の日も、葵にとって身の縮む様な思いをする出来事が待ち受けていた。
仕事をしている途中で、書類のミスを見つけたのだ。
気を付けていた筈なのに、もう取引先の会社へは行ってしまっているので、今から直しても間に合いそうにない。。
これは上司に謝るしかないか。。
想像するだけで冷や汗が流れた。
ところが覚悟を決めた途端に、お昼休憩のチャイムの音が。。
こんな気分ではお昼どころでは無いが、上司は早々に食堂へ行ってしまったので、仕方なく葵も、立ち上がった。
葵が立ち上がったのと同時に、仁がやって来て葵に声をかけた。
「葵 今日は外に出ないか?近くに新しい店が出来てさ。そこがめちゃくちゃ上手いって評判みたいなんだ。
あれっ、どっか具合いでも悪い?」
いつもなら飛び上がって喜ぶところだけど、今はとてもじゃないけどそんな気分にはなれなかった。
「ごめん。今日はちょっとそんな気分じゃないから、次にしてもらっても良いかな」
「いいけど、具合い悪いなら無理しないで早退した方がいいぞ」
「ううん。大丈夫。そういうのじゃないから」
それからも仁は面白い話で盛り上げて、葵を元気付けようとしたが、当の葵は話の30%も聞いていなかった。
無理もない。
お昼ご飯から戻ったら即刻上司にミスを報告しなければならず、報告したら間違いなく叱責を食らうことになるのだから。。
葵の上司は、悪い人ではないけど、ミスをするとしばらくネチネチ言って来たり、残業を言いつけたり、風当たりが強くなるのを覚悟しなければならない。
それでも休憩が終わる頃には、気持ちもすっかり落ち着いて、嫌な事はさっさと終わらせようと自分の席に行き書類を手に取った。
えっ?!
一瞬目を疑った。間違えていた箇所が変わっていて、ミスが消えていた。
うそ。あんなに何回も確認したのに、何で変わってるの?!
訳がわからなかった。訳がわからなかったが、とりあえずは助かってほっとした。
まぁ、こういうパターンは。。嬉しいけど。。
どうせなら休憩の前にしてほしかったわ
安心したらお腹がすいて来ちゃったし。。
しかし、葵がまだ余裕でいられたのは、この頃までだった。
これから先自分の身に起こる事を知っていたら、とてもこんな悠長な事は言っていられなかっただろう。
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