名前はまだない

木暮

第1話

「はち、何してんの?」

ななみは屋上に上がる階段の踊り場にいたはちのにそう聞いた。

「!?…なんだみーくんか…」

「なんだってなんだよ。てかみーくん言うの辞めろって言ってるだろうよ!!」

「みーくんはみーくんで決定なの!決定事項なので変更は出来ませーん!!」

この、人のことをみーくんと呼ぶ幼馴染のはちのと俺、ななみ(男)の付き合いは小学校1年生から10年になる。

付き合いになると言っても彼氏彼女として付き合ってるとか好きとかではなく単純に腐れ縁なのだ。

「はちはなんかあると、ここに来るってわかってるぞー。」

「わかってるなら聞くなってーの!!!そーゆー所全然わかってないよね!!みーくんは!!!」

「だからみーくん言うなっつーの…。んで、今日はなんでここに居るんだ?また教室でニヤニヤして絵描いてたのを他の女子にでも言われたんか??」

「だ、誰がニヤニヤして絵描いて…」

「お前だ。お前。」

はちのは高校に入って直ぐに教室で浮く存在になってた。

まぁ…理由ははちのが趣味で絵を描いてる時にニヤニヤしてるとか、なにか行動する度に裏目に出てる事が原因ではあるんだが…

「ぐっ…まぁいいや。今日は違うよ…」

「じゃあなんだ?コケてスカートの中見えてしまったとかか?」

「違う。」

「じゃあなんだよ。」

「…わかんない。」

「は??」

「わかんない…みーくんには関係ないからほっといてよ…」

この女は昔から何故か聞いて欲しいことがあるのに詮索するなという態度を取る。まぁつまりは天邪鬼の1種みたいな事をする。なのでその場合は…

「わかった。じゃ、明日なー。」

「え…。あ…。」

と、放置して帰る。どうせ後から走って追いかけてくるだろうからここで詮索して機嫌悪くなるよりはよっぽど扱いやすい。


こうして俺は階段の踊り場から出てきた。

はちのは後で話聞けば大丈夫だろ。

「あ…そういや、明日の宿題教科書ないとダメじゃん。しょーがない…教室まで戻るか…」

ここまではいつもの風景『だった。』


「(ん?まだ誰かいるのか?)」


ここからがいつもと違った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る