(イン)フレイブ・ストーリー

ビト

遙かなる約束、勇者の旅立ち

「大きくなったら、うんと強くなって、俺たちが魔王を倒すんだ」


 四人の子どもが、円陣を組んだ。傍から見ると、微笑ましいぐらいに無邪気な光景。ただただ夢を語ることだけが自由だった少年少女は、しかし、本気でその誓いを刻み合った。


「俺は、勇者になる!」

「おう、俺は剣士かな」

「あたしは武闘家!」

「私は、賢者に……」

「ああ! うんと強くなって! 皆で魔王を倒して! 世界を救うんだ!!」


 思い出は、後に勇者と呼ばれる少年ツヨシの原動力となった。

 剣士ケンジ、武闘家ブトカ、賢者ケンシャ、彼ら約束の仲間たちとともに魔王を討つために。




――――

――




 東の王国。


「ついに、このときが来たな。勇者殿、準備は万端か?」

「茶化さないで下さい。俺は、いつだって本気です」


 精悍な騎士団長だった。筋骨隆々で、体格にも恵まれている。そして、その秀でた武芸は王国中に知れ渡っている。


『王国最強の騎士』

体力:87

攻撃:53

防御:49

魔力:35

俊敏:43


「ふ、流石は神託を受けた勇者。本当ならば、我が騎士団から何人か腕利きを出したいのだが……足手纏いになっては敵わん」

「いえ、そんなことは。ただ――――俺には約束があるんです」


 そう言って、青年は背中の剣を抜いた。鮮やかな、青銅の剣。この王国一番の職人が叩き上げた、大業物である。まだ成長途上の肉体ではあるが、その覇気は騎士団長にも劣らない。


『信託の勇者ツヨシ』

体力:999

攻撃:99

防御:99

魔力:99

俊敏:99


 王国中の人間が、勇者の旅立ちを祝福した。

 ここに、今、魔王討伐伝説が始まる。


「俺は、うんと強くなった。さあ、今迎えに行くぞ仲間たち!!」




――――

――




 東の王国、町はずれの酒場。


「マスター、いつもの」

「はいよ。あんちゃん、今回の冒険も痛快だったみたいじゃねえか」


 毒々しい色合いのカクテルを手に、豪快な剣士は笑った。


「おうよ! 西のドラゴンをぶった斬ってやったよ!」

「な、火口の番人を!? さすがはあんちゃんだ……もう、世界一の剣豪の称号も嘘じゃねえな」

「よせやい! それに、世界にはもっともっとすげえ奴がいるんだ。少なくとも、あいつを超えるまでは、俺は強くなんねえといけねえ」

「まだまだ強くなるってか…………! そういや、今日っつてたな」


 店主は豊かな顎髭を撫でた。


「あん、なんだ?」

「あれだよ、神託の勇者。今日が旅立ちだってよ」

「なっ!? きょ、今日だったのか!!」

「お、おう、それがどうしたんだ……?」

「こうしちゃいらんねえ! 俺は行くぜ!!」


 特製カクテルを一口で飲み干すと、豪快な剣士は酒場から飛び出した。


『痛快豪剣士』

体力:9652

攻撃:879

防御:577

魔力:102

俊敏:809


「ははっ!! 待ちやがれってんだ、勇者!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る