君のいた席
天音 紗世
1. 受験
「敬清中には受かってよ。お願いけん、城西中だけは行かんでよ!」
兄が受験勉強中の私に、プレッシャーをかけて来る。ちなみに兄は、県内トップ5に入る高校の2年生。この春で、3年生になる。
すでに修明中に落ちた私は、敬清中に合格するしかない。さもないと、城西中に行くはめになる。
城西中学校。
私が絶対に行きたくない学校。
暴走族はいるし、暴力沙汰を起こす生徒もいる。その手の騒ぎは珍しくない。堕落した不良校。問題児の巣窟で悪名高き中学校なのだ。
11月に行事の一環として城西中の見学に行ったけど、先に敬清中の説明会に行っていた私はあまりの違いに愕然とした。
敬清中は校則が厳しくて、礼儀作法に厳しいことで有名なだけあって秩序がある。髪を染めている生徒はいないし、制服を着崩している生徒もいない。城西中は、校則なんてあってないも同然。茶髪の生徒なんていっぱいいるし、腰パンの生徒もいる。
決して不良をバカにしているワケではないし、どうこう言うつもりもない。
ただ、受験に失敗して城西中に行くことになれば、優秀な血を受け継いだ一家の恥になるだろうし、自分が悪影響を受けて道を踏み外すことになってしまうかもしれないと不安なだけ。
どうやら私は、母方の優秀な地は受け継いでないみたいだけど。きっと、兄ちゃんに全部とられてしまったんだ...
兄の指導の下、受験勉強と面接の練習は続いた。
そして、小学校の卒業式の1週間前ー
「紗世、結果届いてるよ~」
学校から帰ると、お母さんから封筒を渡された。緑で「敬清中学校」と書かれている。
『うわぁ~、どうしよう、恐い…』
緊張の一瞬。
見るのが恐い...
私は封を切って、恐る恐る中を取り出しす。
『うそ、合格!?
補欠とかじゃないよね?
夢じゃないよね?』
私は母に合格通知を見せて尋ねた。
ほっとしたと同時に、夢ではないだろうかと信じられない気持ちでいっぱいだ。
これで肩の荷が下りた。
中学生活への期待が膨らむ。
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