第17話 最も新しき英雄

「あと 殿下 例の件に対する返事はいついただけますか?」


「・・・龍神祭までには帝都に着く そこで皇帝陛下に非公式に謁見する機会があるはず 返事はそこで」


「承知しました では堅苦しい話はこれにて終了です 吾輩は明日にも帝都を発ちます ではっ 英雄殿っ 英雄譚をお聞かせくだされっ」


「えっ ちょっと」


「ささっ 朝食はもう済ませしたか」


「いえ まだですが」


「では ご一緒させてくださいっ」


「まず 名前をうかがっても?」


「吾輩の名は ハムレットとといいますっ」


男二人がごちゃごちゃとしながら下の食堂に歩いてゆく

哲人は当然 フィルに声をかけようとしたがフィルの目には明らかな迷いがあり顔にはこう書いてあった


今は一人にしてほしい・・・と


なぜわかったのか説明はできない 自分の手がなぜ思い通りに動くのか説明がつかないように 自分が今すべきはこの場を去ることだろう


・・・


ガチャリと扉が閉まった さっきまで慌ただしかった部屋は部屋は静寂に包まれた

この部屋にいるのはフィルだけなのだ 

フィルは鏡の前に立ちそっと自らの紅い耳飾りをとる

目にうつるのは忌々しい尻尾 

頭を撫でれば手に感じる感触は憎々しい角

でも これを受け入れてくれる人がいる 

一生諦めていた 

一度は望んだでもすぐに諦めた 

できるかもしれない


「皇帝選に立候補して わらわが皇帝になれば?」


我がままだ そんなことをすれば国中大混乱に陥る

きっと アルフにもクズノハにも迷惑がかかる 哲人にも

でも もしかしたら神話を塗り替えることができるのではないかと・・・


「そんな理由で皇帝になどなってもよいのか?」


皇帝は帝国の象徴だ 行政権こそないがその影響力は計り知れない

皇帝とはもっとも神龍に近いところにいる存在

それが青龍などとなれば帝国の臣民が混乱することは目に見えている


「哲人のせいなのじゃ 哲人があんなことを言うから守護騎士パートナーになりたいなどと」


こんな話 即答で断っているにに違いないのだが

自分一人では歩けない茨の道を哲人が隣で一緒に歩いてくるのなら

もしも哲人がそういってくれるのなら これはきっと運命・・・


「自分で思ってて恥ずかしくなったのじゃ」


自分も早く朝食を食べるとしようか


・・・


食堂で二人の男が楽しそうに会話している

・・・訂正しよう

一方が一方に物凄い勢いで楽しそうに話しかけている


「流石は英雄殿ですなぁっ」


「いえいえ そんなことは」


話しかけている側は実に楽しそうだ

かけらている側は若干困っている

そんな話しかけられている少年 黒鉄哲人

料理に中々手がつけられない

無論 胃袋は料理を求め今か今かと音を鳴らしてせがんでくるのだが・・・

サイドにいる人のせいで食べれない

ここは話題を変更しようか


「あの ハムレットさん・・・質問いいですか?」


「ええ 勿論 」


「ちょっと不思議に思ったのですが この国では青龍が嫌われていますよね」


「ええ その通りです 嫉妬の象徴ですから」


「じゃあ なんでおれは英雄扱いをされているんでしょうか? この蒼い眼はまさしく青龍なのでは?」


・・・やばい 軽く話題を変えるつもりがなんだか急に重たい質問をしてしまった

疑問に思っていたのだ 南壁を簡単に通らせてくれた時もそうだ この眼に誰一人として怯えなかった じゃあなんでフィルはあんな風に


「それは そうですなぁ 我輩が察するに

フィルメニア殿下が嫌われて なぜ同じような特徴をもつ自分が嫌われないどころか 英雄視されているのか 疑問で仕方ないそんなところですかな」


ハムレットさんの目が変わった

先程とは違う 鋭い目をしている


「・・・大正解です なんでフィルは・・・」


「フィル・・・ですか フィルメニア皇女殿下ではなく?」


「あっ えっと それは」


「いえいえ 構いませんともフィルメニア殿下は存在しないも同然です 我輩はなにもいいません」


「・・・」


「ああ なぜ殿下が嫌われているかですな

角と尻尾 そしてその体質とでもいいましょか?」


「体質?」


「えぇ 殿下から聞いていませんか?

殿下の周りにはよく不幸が起こる

例えば のように」


「・・・」


「これだけではありません フィルメニア殿下の兄妹の方々にも様々な不幸が起こりました

フィルメニア殿下と親しくしていればいるほど」


「そんなの「関係ないと・・・?」・・・

あるわけないでしょう 普通に考えて・・・」


「うむ その通りです 検証も出来ない

ただの理不尽 八つ当たりにも見える」


「だったら・・・」


「では 逆に という確証はどこから?」


「それは・・・普通に考えて」


「ええ それをさせないのが青龍の呪いなのです 目の前に最も答えらしい答えがある

だったらそれを信じたくなりますよね」


「そんな理不尽な」


「ええ全くの理不尽です 勝手に自分のせいにされるのですから」


青龍の呪いというのはどれだけ重いのだろうか 考えたくもなくなる

フィルメニアという少女は不幸になるために生まれてきたのだろうか?

青龍の呪いがあるから他人の不幸を自分のせいにされる

4日ぶりのご飯はもう喉を通らなかった

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