第7話 フィルメニア フォン リードルフという少女

フィルメニア フォン リードルフという

少女の話をしよう

彼女はリードルフ帝国の第三皇女という立場で生まれてきた

初めは彼女に角や尻尾などなかった 

いや目立たなかった

それゆえに幼少期こそ

ほかの兄妹と変わらない育ち方をした

リードルフの皇族は生まれつきの金髪だ

しかし 彼女が八歳の時 

朝起きてみれば頭とお尻に違和感があった

いつもなら金髪の髪の色もなんだが蒼い


「のう これはなんなのじゃ?」


角と尻尾を指さし無邪気に問いかけた時の

そのフィルの姿をみた女給仕の顔をフィルは今でもはっきりと覚えている

その女給仕は昔から

世話になっていた人だったが


「っっっっっ! 殿下 それはっ! せ 青龍の! お許しをっ お許しをっ」


恐怖に顔を歪ませ血相を変えた 


「へっ?」

 

フィルの素っ頓狂な返事をそのままに 

女給仕は走り去った

のちに鏡をみたフィルは自らの姿をみて愕然とした

その日のうちにフィルは一生分の涙を流した

なんだこれはと・・・ 

これじゃまるでおとぎ話にでてくる青龍ではないか

厄災の象徴そのものだ 醜い嫉妬の塊だ

その日からフィルは鏡をみるという習慣はなくなった・・・

 

フィルはその日から

まるでいないものとして扱わた

長年使えた給仕も世話はしてくれるが話はしてくれない

まるでロボットのように・・・

フィルは元々 

人というものが大好きな少女だった 

誰にでも人懐っこく明るい 

だがフィルはそのとき初めて人というものを自分自身を嫌いになった瞬間だった

自らの氷魔法でなんとかできないかといろいろとやってみたが

結局どうしようもなかった 

氷魔法で自分の体が傷つくときもあった

誰かが手当てはしてくれた 

でもだれも心配はしてくれなかった


そのうち南の辺境領に住むようにとの命令が皇帝より下った

それと同時に紅い耳飾りをもらった

これをつければ尻尾も角もなくなった 

暗い人生に一筋の光が差し込んだ瞬間だった

フィルは素直に従った

執事は元帝国九軍神ナインマルスの一人で有名なアルフレッド クロノスとい老執事だった はじめこそ遠かった距離は徐々に縮まっていった

彼女が14歳のときだった屋敷の前で倒れているクズノハという

獣人種の少女を見つけた

そのまま拾って屋敷のメイドして育てた

クズノハは始めこそフィルのことを怖がっていたがやがて家族のように親しくなった 街のゴロツキ三人組は倒されても何回でも挑んできた

誰かが自分のことを気付いてくれる その事実がたまらなくうれしかった


ここにフィルは可能性を感じた

時間をかければ青龍の呪いがあっても仲良くできると


そしてあの日がやってきたのだ

いつも通り西門を歩いているとゴロツキ三人組がいないので反対の東門にいった

歩いているとこれまで感じたことのない

匂いがした

フィルは特段鼻がいいわけではないがなぜかわかるその匂い


一人の少年を見つけた 

とりあえず助けることにした


いつも通りあしらうつもりが耳飾りを取られてしまった

フィルは怖くなってその場に蹲った 

ああ またあの醜い尻尾と角が生えている

そのまま震えていると


暖かい何かをかぶせられた


混乱したまま地面を見ていると少年の優しい目が目の前にあった


「さっきの耳飾り 探してみるね ちょっと待っててね」


「・・・ぅん」


自分でも驚くくらい女々しい声が出た

実は耳飾りの位置はわかっていた 

自分の足の後ろにあると

これではわからない

この少年はどのくらいここにいるのか

試したくてフィルは

あえてしらないふりをした


予想外だった・・・ まさかこんなに長い時間さがすなんて

もう日が沈み始める


「ぁの・・・」


正直に話そうとしたときだった


「あっ あっっっっっっった!」


少年がようやく耳飾りの位置に気付いた

耳飾りを差し出してくる姿は英雄にみえた


・・・


その少年は黒鉄哲人と名乗った

そのまま哲人を屋敷に招待した

哲人はなにも知らなかった 

まるでこの世界の人間ではないみたいに

いろいろと教えてもこの少年の自分を見る目は変わらなかった


明日は哲人に屋敷で働かないかと誘ってみることにした


きいたところ行く当てもないらしい

あまり良いことではないのに嬉しく感じてしまう自分が少し嫌になった

そう考えていたが 

翌朝アルフからの知らせを聞いて愕然とした


「哲人殿は お嬢様を殺そうとしました」


「ぇっ?」


「ゆえに私が処分しました」


その言葉の理解を脳が拒否していた

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