蒼眼の英雄の異世界譚 ~平凡な少年は眼の力で少女の願いを叶える~
山田太朗丸
第一章 激動の2日間
第1話 異世界でも通用するのか これ
-これはマジでやばいことになった
一文無しで途方にくれている。
やっぱりお金は使えないか。
目の前の10円を弄り、黒鉄哲人は現状を認識する。
お金が使えない、おおよそ日本全国を探しもそんな場所はそうそうないだろう。
辺りを見渡し、目に映りこむのは中世的な街並み、石田畳みの道路、獣耳(うさ耳、猫耳、犬耳)、馬車、地竜?的な生物達。
「異世界ってやつなのかな?」
黒鉄哲人は16歳で異世界転移というものを経験した。
・・・
異世界、それは誰もが憧れるだろう。
剣と魔法の世界、勇者と英雄の世界だ。
突然召喚された主人公は特別な力を授かり、
俺TUUUEEEEするのである。
さらにはハーレムを作ったりととにかく夢に夢が詰まってるのである。
「けど さすがに期待しすぎたかな・・・」
哲人自身、なんでこの世界に転移したのか 皆目見当もつかない。
自分自身が
見た目だって普通だねってよく言われる。
トラックに轢かれたとかそんなわけでもない ただコンビニからでて目を開けたら異世界だった 。
今でそこ落ち着いているがその直後ときたら
もう言葉にするのも躊躇われるヘタレっぷりだった。
「うーむ 考えてもわからない あれでもこれ実は強大な力を授かっていたりとか! よくあるじゃん そういうパターン」
哲人自身 調子に乗っていた部分があるのだろう。
なにせ異世界転移だ、不安と期待で胸の鼓動が高まっている。
ある意味不安をかき消すために己を鼓舞するために裏路地に向かってこんなことをしてしまった。
おもいきっし中指をたて
「かかってこいや! てめぇらごときどれだけいても俺の敵じゃねぇ」
軽く笑い優越感に浸る、まさしく哲人の心境は今天国にあった。
世界がなんか輝いて見えた普段なら絶対にこんなことしないだろう。
通知表には小、中と一貫して真面目ですと書かれていた哲人だ。
しかしこの異世界という状況の影響か、調子にのってしまったのだ。
「ああっ なんだって?」
だからこそ気付かない。
中指を立てた裏路地に非常にガラの悪そうな日に焼けた三人組がいたことに、その声音から察するに。
「これ 異世界でも通用するのか・・・」
己の中指を見つめながら。
絶体絶命の
・・・
とある裏路地にて、四人の男が対峙していた、正確には三人の男と一人の男が対峙している。
片や三人組の男は薄汚い衣装を着ており刃物や棍棒を装備しておりまさしくゴロツキ、片や一人の男はきているのはジャージ持ち物は財布とスマホだけ、三人組の男が一人の男を値踏みしているように
また一人の男も三人組の男を値踏みしていた
哲人は三人組の男をみて考える
あきらかにヤバい三人組だ 棍棒にナイフだ。それに対しこっちはスマホと財布 明らかに不利だ。
どうすればいい?考える。
手元にはスマホがある、こういう時は常識的に考えて110番だろう。ーーが
ここは異世界そんな常識は通用しない
どうする?どうする?
ここで閃いた。
「憲兵さんっ! 来てくださいっ! ガラの悪い三人組襲われそうなんですっ!」
腹の底から精いっぱい声をだした。
ここが異世界でもここが街であるいじょう、絶対になんらかの統治機構があり治安維持機構もそんざいするはず。
勝ちを確信した哲人。
「ふふっ 残念だったな 三人組 さぁもう少ししたら憲兵が来るぞ 今のうちにさっさと逃げるんだなっ」
これまでの人生で一番の渾身のドヤ顔をお見舞いする。
これで三人組は蜘蛛の巣を散らすように逃げるはず、なかには覚えてろっ、とかいうやつもいるかもしれない。
そう逃げるはずだった・・・のだが
「カカっ グハハっ 」
「ヒヒっ ぅヒヒっ」
「ゼハっ ゼハハっ」
三人が同時に不気味に笑い出したのだ。
哲人の計算では勝っているのは自分のはず、そしてこの三人組がしている勝ち誇った態度。
おかしい
自分の計算に一体なんの間違いが……
「ははっ てめぇ どこから来たか知らねえが相当な田舎もんだな、その割にはいいものを身に着けてやがるが・・・」
「ここに憲兵なんか来るかよっ!」
「そうだぜ 俺たちをなめるなよっ 」
「ま まさかっ 」
憲兵を買収したのか。
いやあるいは憲兵でも手が付けられないような組織の構成員とか?
ここは異世界だ、こんな可能性も考慮すべきだったか。
「そうだ 今頃憲兵どもは西門を見回っているはずだぜっ」
「ははっ 日々あいつらの行動は追跡していたからなっ」
「なめるなよ 大体の巡回ルートはしってるんだよっ」
うーん……
なんだろうこいつらゴロツキだよな。
想像していたのと違い困惑、そして気付くこの日焼け。異様なまでの黒さ。
「おかげで 俺たちはすっかり肌やけて黒くなっちまった」
「だが いい獲物を見つけることができた」
「ああ ついてるぜ」
こいつら必死になって歩き回ったのだろう憲兵の後を追いかけて、多分にその日によって巡回コースはちがうから。
何日もかけてこの炎天下のなか、この涙ぐましい努力、思わずその努力に涙しそうになり
顔を抑える。
「ぐっ」
「ははっ 野郎絶望のあまり泣いてやがるぜっ」
「へへっ そりゃそうだろうな もうだれもこねぇ」
「ひひっ 苦労したかいがあったぜ」
この努力には感服してしまった。
自らの財布を取りだす、この世界で売れるかはわからない。
だがありったけの小銭と千円札を取り出し、ゆっくりと男達の元へ歩いていく
「やったぜ ついには野郎 自分から所持品をとりだしやがった」
「田舎者のくせわかってるじゃねぇか」
「今日は腹一杯飯が食えるなっ」
その
涙が頬を伝い石田畳に吸い込まれていく。
それはとまらず それどころか。
「ははっ こっちにはナイフがあるしなっ」
「棍棒もあるしなっ」
ナイフと棍棒をみて驚いた
(たぶん それじゃあ 人襲えねえよっ)
ボロボロだ、ナイフの刃も錆びついているし、棍棒も若干かけている
口には出さないがそれがさらに涙を誘った。
「みろっ さらになきだしたぜっ 情けねぇな」
「ははっ おこちゃまには早かったようだな」
「さぁ それをさっさと渡せっ」
三人組の一人が手をだしてきた、今日は腹一杯食えよと万感の思いを込めて、さすがに素直すぎたのだろう、違和感を感じ始めたようだ 適当な言葉で引き揚げようとする。
「・・・まぁ 今日はこのくらいで勘弁してやらぁ」
「そうだな このくらいにしてやろうか」
「ははっ 何を食おうかなっ」
そう吐き捨てその場を去ろうとした瞬間。
「待つのじゃっ 悪党っ」
その声は哲人の感動の涙声も三人組の下種な笑いもなにかもをねじ伏せ裏路地に響いた。
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